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岐阜県S様よりお預かりしたブランドストーン・サイドゴアブーツ ――加水分解したソールを一新し、再び“履ける相棒”へ――

今回ご紹介するのは、岐阜県にお住まいのS様よりお預かりした
Blundstone(ブランドストーン)サイドゴアブーツのオールソール交換修理事例です。

ブランドストーンといえば、オーストラリア発祥のワークブーツブランドとして世界的に知られ、
・脱ぎ履きのしやすさ
・タフな使用環境への耐久性
・シンプルで飽きのこないデザイン

これらを兼ね備えたブーツとして、長年多くのファンに愛され続けています。
S様の一足も、日常使いからアウトドアシーンまで幅広く活躍してきたことが、ブーツ全体の表情からしっかり伝わってきました。

しかし今回、大きな問題となっていたのが――
ソールの加水分解による深刻な劣化です。


見た目はまだ履けそう…しかし内部では崩壊が進行

お預かりした時点で、アッパー(甲革)やゴア部分の状態は比較的良好でした。
ところが、ブーツを手に取って軽く曲げた瞬間、違和感がはっきりと伝わってきます。

ソールの一部には亀裂が入り、
さらに内部ではポリウレタン素材が崩れ、粉を吹くような状態に。

これはブランドストーンに限らず、
・ポリウレタンミッドソール
・長期保管
・使用頻度の低下

といった条件が重なることで起こる、典型的な加水分解症状です。

「ある日突然、歩いていたらソールが割れた」
「久しぶりに履こうとしたら、ボロボロ崩れた」

S様もまさに、そんな不安とショックを感じられていたのではないかと思います。


なぜ部分修理ではなく、オールソール交換なのか

この状態でよくあるご質問が、
「割れた部分だけ直せませんか?」というものです。

結論から言うと、加水分解が始まったソールは部分修理が不可能です。

✔ 表面だけ補修しても内部は劣化したまま
✔ 接着しても、周囲が次々と崩れる
✔ 結果的にすぐ再修理が必要になる

そのため今回は、ソールを完全に分解し、ゼロから作り直すオールソール交換修理を選択しました。

これはコストも手間もかかる修理ですが、
「これからも安心して履ける一足にする」ためには、最も確実な方法です。


ソール分解作業 ―― ブーツを傷めないための慎重な工程

まずは既存のソールを慎重に取り外します。

ブランドストーンは一見シンプルな構造に見えますが、
実際にはソール側面にPU素材が回り込むように成形されており、
無理に剥がすとアッパーを傷めるリスクがあります。

そこで、

・熱をかけながら接着層を緩め
・革へのダメージを最小限に抑えつつ
・ミッドソール、アウトソールを完全に除去

この工程は、経験と感覚がものを言う作業です。

無事に分解が完了すると、内部の劣化状態がはっきり確認できました。
やはりポリウレタンは原形をとどめておらず、
このままでは歩行に耐えられない状態でした。


EVAスポンジミッドソールで「加水分解しない構造」へ

今回の修理で最も重要なポイントが、
新しく作り直すミッドソール素材の選定です。

私たちが選んだのは、
👉 EVAスポンジ(エチレン酢酸ビニル)

EVAスポンジの特徴は、

・軽量でクッション性が高い
・耐久性に優れる
・加水分解しにくい
・長期間の使用・保管に強い

まさに、今後長く履くために最適な素材です。


縫い付けによる強固なミッドソール構造

EVAスポンジを適切な厚みに調整した後、
今回は接着のみではなく、しっかりと縫い付ける構造を採用しました。

✔ 歩行時のねじれに強い
✔ 接着剥がれのリスクを軽減
✔ 長期使用でも安心感が段違い

ブランドストーン本来の履き心地を損なわないよう、
足当たりや反り具合にも細心の注意を払いながら仕上げています。


Vibram1136アウトソールで実用性を最大化

アウトソールには、
Vibram(ヴィブラム)1136を使用しました。

このソールは、

・グリップ力が高い
・摩耗に強い
・タウンユースからアウトドアまで対応
・見た目がゴツすぎず、サイドゴアと相性が良い

という特長を持ち、ブランドストーンの雰囲気を壊さない優秀なモデルです。

EVAミッドソールとの相性も良く、
クッション性と安定感のバランスが非常に優れた一足に仕上がりました。


仕上がり ――「また履ける」から「また出かけたい」へ

すべての工程を終え、完成したブーツを手に取ると、
見た目にも、履き心地にも、明らかな変化を感じます。

・安定感のある接地
・不安のない踏み出し
・それでいて重くなりすぎない軽快さ

まさに、
「新しい命が吹き込まれた」
そんな表現がぴったりの仕上がりです。

S様の大切な一足が、
また新しい冒険に出かけられる状態へと生まれ変わりました👞✨


靴は直せば、また活躍できる

今回の修理を通して改めて感じるのは、
靴は消耗品でありながら、再生できる道具でもあるということです。

思い出が詰まった靴
足に馴染んだ靴
もう同じものが手に入らない靴

そんな一足だからこそ、
「捨てる」ではなく「直す」という選択肢を、ぜひ知ってほしいと思っています。


私たちの使命は、靴に“次の時間”を与えること

どんなに傷んだ靴でも、
状態を見極め、適切な方法を選べば、
もう一度、安心して履ける一足へと生まれ変わります。

ブランドストーンに限らず、
・加水分解
・ソール剥がれ
・クッション劣化
・履き心地の悪化

どんな靴のトラブルでも、まずはお気軽にご相談ください🛠️
お客様の笑顔と、「また履けるようになった」という一言が、
私たちにとって何よりのやりがいです😊

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