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月別アーカイブ: 2025年12月

兵庫県K様ご依頼|New Balance 576 ヒールカップ加水分解による交換修理事例

今回ご紹介する修理事例は、兵庫県にお住まいのK様よりお預かりした New Balance(ニューバランス)576 の修理です。


ニューバランス576は、クラシックなデザインと高い履き心地で、長年愛され続けている定番モデルのひとつです。特にイングランド製モデルはファンも多く、「多少傷んでも直しながら履き続けたい」と考える方が非常に多いスニーカーでもあります。

そんな576ですが、今回K様からご相談いただいたのは、かかとの外側に取り付けられている樹脂製ヒールカップの破損でした。


修理前の状態|ヒールカップの加水分解による割れ

お預かりしたニューバランス576を確認すると、ヒール外側に取り付けられている樹脂製のヒールカップが、経年劣化によって加水分解を起こし、ひび割れから完全に割れてしまっている状態でした。

このヒールカップは、単なる装飾ではなく、

  • かかとの形状を安定させる

  • 着地時のブレを抑える

  • 踵周りのホールド感を高める

といった重要な役割を担っています。
そのため、ヒールカップが割れたまま履き続けると、

  • かかとが不安定になる

  • 歩行時に違和感が出る

  • 靴本体の革や布地に余計な負担がかかる

といった問題が発生します。


ニューバランス576に多い「樹脂パーツの加水分解」

ニューバランス576に限らず、90年代〜2000年代に製造されたスニーカーには、ポリウレタンや塩ビ系素材の樹脂パーツが多く使われています。
これらの素材は、時間の経過とともに空気中の水分と反応し、加水分解を起こします。

加水分解が進行すると、

  • 表面がベタつく

  • ひび割れが発生する

  • 最終的には粉々に崩れる

といった症状が現れます。
今回のヒールカップも、まさにこの典型的な経年劣化によるものと言えます。


純正部品が手に入らないという現実

ニューバランス576のヒールカップは、純正部品としての供給がほぼありません。
メーカー修理でも対応不可となるケースが多く、「直せないから処分するしかない」と諦めてしまう方も少なくありません。

しかし、いずみ靴店では、

  • オリジナル形状をできる限り再現

  • 素材を変えて耐久性を向上

  • 今後も長く履ける構造にする

という考え方で、代替素材による修理をご提案しています。


修理方針|本革によるヒールカップの製作

今回の修理では、同じような樹脂製ヒールカップが入手できないため、本革を使用してヒールカップを一から製作する方法を採用しました。

本革を使うメリットは、

  • 加水分解しない

  • 経年変化を楽しめる

  • 靴本体との馴染みが良い

  • 強度と柔軟性のバランスが良い

といった点にあります。

スニーカーに革を使うことに不安を感じる方もいらっしゃいますが、実はニューバランスのアッパー自体にも天然皮革が多く使われており、相性は決して悪くありません。


作業工程① 破損したヒールカップの取り外し

まずは、加水分解して割れてしまった樹脂製ヒールカップを、慎重に取り外します。
この工程では、靴本体のアッパーや内側のヒールカウンターを傷めないよう、細心の注意が必要です。

劣化した樹脂は非常にもろく、無理に外そうとすると周囲まで裂けてしまうため、少しずつ状態を見ながら分解していきます。


作業工程② 革の選定と型取り

次に、本革素材の選定を行います。
今回は、ある程度のコシがありながらも、足当たりが硬くなりすぎない革を使用しました。

元のヒールカップの形状を参考にしながら、

  • 高さ

  • カーブ

  • かかとの包み込み具合

を細かく調整し、型紙を作成します。
この工程が仕上がりの良し悪しを大きく左右するため、時間をかけて慎重に行います。


作業工程③ 本革ヒールカップの成形

型紙をもとに革を裁断し、立体的に成形していきます。
平面の革を、かかとの丸みに合わせて立ち上げていく作業は、経験と感覚が必要です。

ここで無理な力をかけると、後々シワや浮きの原因になるため、少しずつクセをつけながら形を作ります。


作業工程④ 八方ミシンによる縫い付け

成形した本革ヒールカップは、八方ミシンという特殊な工業用ミシンを使って、靴本体に縫い付けていきます。

八方ミシンは、

  • 円筒状のもの

  • 立体構造のパーツ

  • 通常のミシンでは縫えない箇所

を縫うための、非常に専門性の高いミシンです。
スニーカーのヒール周りを縫製するには欠かせない設備で、どの靴修理店にもあるものではありません。

縫い目のピッチや糸のテンションを調整しながら、見た目と強度の両立を図ります。


仕上がりと完成後の状態

縫い付けが完了すると、本革製のヒールカップがしっかりとかかとを包み込み、安定感のある仕上がりになりました。
見た目も違和感が少なく、元々の576の雰囲気を大きく損なうことはありません。

樹脂製とは違い、今後は割れや加水分解の心配がないため、長期的に安心して履いていただけます。


修理を検討されている方へ

ニューバランス576のヒールカップ割れは、決して珍しい症状ではありません。
「もう直らない」と諦めてしまう前に、素材や構造を工夫することで、修理が可能なケースも多くあります。

いずみ靴店では、今回のように、

  • 純正部品が無い

  • メーカー修理不可

  • 他店で断られた

といった靴でも、状態を見極めた上で最適な修理方法をご提案しています。


修理内容まとめ

  • 修理品:New Balance(ニューバランス)576

  • 症状:樹脂製ヒールカップの加水分解・破損

  • 修理方法:本革によるヒールカップ製作・交換

  • 縫製:八方ミシン使用

大切な一足を、これからも長く履き続けたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

東京都 S様 NIKE AJ1 ゴルフシューズ 底剥がれ修理事例 構造的な注意点

今回ご紹介するのは、東京都にお住まいのS様よりご依頼いただいた
**NIKE エア・ジョーダン1 ゴルフシューズ(AJ1 GOLF)**の底剥がれ修理です。

AJ1といえば、バスケットボールシューズとして誕生し、現在ではスニーカーシーンを代表する名作モデルですが、こちらはそのAJ1をベースにゴルフ仕様へとアレンジしたモデルになります。


デザイン性の高さから、ゴルフ場でもタウンユースでも人気の高い一足ですね。

■ ご依頼内容と靴の状態

お持ち込み時の状態は、アウトソールが前足部を中心に剥がれ始めており、歩行時やスイング時に違和感が出ているとのことでした。
一見すると「接着が甘くなっただけ」に見える症状ですが、ゴルフシューズという用途を考えると、このまま使用を続けるのは非常に危険です。

ゴルフのスイングでは、踏み込んだ際に前後方向だけでなく、横方向にも強い力がかかります。
特にダウンスイングからインパクトにかけては、靴底に大きなねじれと横ズレの力が集中します。そのため、底剥がれを起こした状態では、プレー中に一気に剥離が進行する可能性があります。

■ 分解して判明した構造上の問題点

状態を正確に把握するため、まずはソール部分を慎重に分解しました。
その結果、意外にも、いや「やはり」と言うべきか、**側面に見えるステッチはフェイク(飾り縫い)**であり、実際には靴本体とソールは縫い付けられていませんでした。

構造としては、
・靴本体
・ミッドソール
・アウトソール

これらがボンド接着のみで組み立てられており、縫製による補強は一切ありません。

街履きや軽い使用であれば問題になりにくい構造ですが、ゴルフシューズとして考えると、横方向の負荷に対する耐久性が不足しているのは否めません。
今回の底剥がれは、経年劣化による接着力低下に加え、ゴルフ特有の動作が重なった結果と言えるでしょう。

■ 修理方針の検討

単純に「もう一度ボンドで貼り直す」だけでは、再発の可能性が非常に高くなります。
S様からも「しっかり直して、安心して使いたい」というご要望をいただいていたため、今回は構造そのものを強化する修理を行うことにしました。

修理方針は以下の通りです。

  1. 古い接着剤を完全に除去し、接着面を整える

  2. 強度の高い専用ボンドで再接着

  3. 側面をオパンケ縫いミシンで縫い付け、物理的にソールを固定する

■ ボンド接着と下処理

まず、剥がれかけたソールと靴本体から、劣化したボンドを丁寧に除去します。
この下処理を怠ると、新しい接着剤の性能を十分に発揮できません。

その後、接着面を荒らし、素材に適したプライマー処理を施したうえで、高強度のボンドを使用して圧着します。
この段階で、見た目上は新品同様に戻りますが、今回はここで終わりません。

■ オパンケ縫いによる構造補強

接着後、側面をオパンケ縫いミシンで一周しっかりと縫い付けていきます。
オパンケ縫いは、靴本体とソールを直接貫通させて縫い合わせるため、接着だけに頼らない非常に強力な固定方法です。

特に今回のようなゴルフシューズでは、
・横方向のズレ
・ねじれ
・繰り返しの衝撃

これらに対して、縫製による補強が大きな効果を発揮します。

見た目のステッチが「飾り」から「本物の機能的な縫い」へと変わることで、靴としての信頼性は格段に向上します。

■ 修理後の状態と仕上がり

修理完了後は、ソールが靴本体と一体化し、手で捻っても剥がれる気配はありません。
これで、糸が切れない限りソールが剥がれることはほぼ無い状態になりました。

S様にも仕上がりを確認していただき、
「これなら安心してスイングできますね」
と、大変ご満足いただけました。

■ まとめ

デザイン性の高いスニーカーベースのゴルフシューズは、構造的に「接着のみ」のものも少なくありません。
しかし、実際の使用環境を考えると、今回のように縫製による補強修理を行うことで、安心して長く使える一足に生まれ変わります。

大切なゴルフシューズでお悩みの方は、症状が軽いうちにぜひご相談ください。

安心してプレーに集中できる一足へ。
いずみ靴店が、しっかりとお手伝いさせていただきます。

新潟県T様よりご依頼|Timberland フィールドブーツ 履き口スポンジ表皮張り替え修理 加水分解しています

今回ご紹介する修理事例は、新潟県にお住まいのT様よりご依頼いただいた
Timberland(ティンバーランド) フィールドブーツの履き口スポンジ表皮張り替え修理です。

ティンバーランドのフィールドブーツは、アウトドアテイストのデザインと堅牢な作りで人気の高いモデルですが、経年使用によって避けられないトラブルの一つが、履き口部分に使われている合成皮革の加水分解です。

■ ご来店時の状態|履き口表皮の加水分解

お預かりしたブーツを確認すると、履き口内部のスポンジを覆っている表皮素材が、
加水分解によってボロボロと剥がれ落ちている状態でした。

・表皮が粉状になり、指で触るだけで崩れる
・スポンジ自体がむき出しになっている箇所がある
・履くたびに靴下に黒い粉が付着する

といった、合成皮革特有の典型的な劣化症状が見られます。

この症状は「汚れ」や「摩耗」ではなく、素材そのものの寿命によるものです。そのため、クリーニングや簡易補修では改善できず、表皮を根本から作り直す必要があります。

■ なぜ合成皮革は加水分解するのか

合成皮革は、軽量でコストを抑えられる反面、
・湿気
・汗
・経年
といった条件が重なることで、内部のポリウレタン樹脂が分解し、ボロボロになる性質を持っています。

特に履き口部分は
・足首からの汗
・雨や雪の侵入
・脱ぎ履き時の摩擦
といったダメージが集中しやすく、ブーツの中でも劣化が最も早く進行する箇所です。

■ 修理方針|本革による表皮の作り直し

今回の修理では、劣化した合成皮革をすべて撤去し、
本革で履き口スポンジの表皮を新たに作り直す方法を選択しました。

部分的な補修では、残った合成皮革もいずれ同じように劣化するため、
長期的な使用を考えると「全交換」が最善と判断しています。

■ 修理工程① 履き口スポンジの分解・取り外し

まずは靴本体から履き口スポンジを丁寧に分解していきます。

ティンバーランドのフィールドブーツは、履き口部分が
・アッパー
・裏材
・スポンジ
と複雑に縫製されているため、無理に引き剥がすことはできません。

周囲の縫製を一つひとつほどき、
靴本体を傷めないよう慎重に履き口スポンジを取り外します。

この工程は見た目以上に手間がかかり、仕上がりを左右する重要な作業です。

■ 修理工程② 劣化した表皮の除去と下処理

取り外した履き口スポンジから、加水分解した合成皮革を完全に除去します。

劣化した素材は接着力も失っているため、
表面をきれいに整え、スポンジの状態を確認しながら下処理を行います。

スポンジ自体はまだ弾力が残っており、今回は交換せず再利用が可能と判断しました。

■ 修理工程③ 本革による表皮張り替え

新しい表皮には、耐久性と足当たりの良さを考慮し、
適度な厚みのある本革を使用します。

・足首に直接触れても違和感がない
・縫製に耐えられる強度がある
・長期間使用しても劣化しにくい

といった条件を満たす革を選定し、履き口スポンジの形状に合わせて裁断します。

本革を丁寧に貼り込み、シワや浮きが出ないよう成形していきます。

■ 履き口中央の縫い目について

元の仕様では、履き口スポンジの中央部分に縦方向の縫い目が入っていました。

この縫製は専用の設備と高い精度が必要で、
まっすぐ縫い付けることができる特殊なミシンが必要となります。

当店では同様の完全再現は難しいため、
見た目のイメージを重視した仕上げとし、機能面・耐久面を優先した仕様としています。

使用上の問題はなく、履き心地や強度に影響はありません。

■ 修理工程④ 靴本体への縫い付け(八方ミシン)

仕上げとして、本革で張り替えた履き口スポンジを靴本体に縫い付けます。

この工程では、八方ミシンを使用し、
複雑な立体形状に沿って均一なテンションで縫製を行います。

履き口は足首の動きに追従する必要があるため、
縫い目が硬すぎても、緩すぎてもいけません。

長年の修理経験をもとに、耐久性と快適性のバランスを考えながら仕上げています。

■ 修理完了後の状態と履き心地

修理完了後は、
・ボロボロと崩れることはなく
・足当たりが柔らかく
・しっかりとしたホールド感のある履き口
に生まれ変わりました。

本革を使用したことで、合成皮革とは比べものにならない耐久性が期待できます。

また、革に厚みがある分、
足首周りのフィット感が向上し、安定した履き心地になっています。

■ 合成皮革の加水分解でお悩みの方へ

履き口やタン、内側パッドなどに合成皮革が使われている靴は、
どんなに大切に保管していても、いずれ同じ症状が起こります。

「もう履けない」と諦める前に、
本革による張り替え修理という選択肢があることを知っていただければ幸いです。


いずみ靴店では、素材の特性を理解したうえで、
長く履き続けられる修理方法をご提案しています。

履き口スポンジの加水分解でお困りの方は、
お気軽にご相談ください。

山梨県 I様 FootJoy(フットジョイ)ターロウ スパイクレス化オールソール交換修理事例

今回ご紹介する修理事例は、山梨県にお住まいのI様よりご依頼いただいた
FootJoy(フットジョイ)「ターロウ」モデルのオールソール交換修理です。

フットジョイはゴルフシューズの分野では世界的に評価の高いブランドで、
ツアープロからアマチュアまで幅広い層に支持されています。
今回の「ターロウ」は、クラシックなデザインをベースにしながらも、
ラウンドだけでなく練習場やタウンユースでも使いやすいモデルとして人気があります。

しかし、どれだけ上質なゴルフシューズであっても、
ソール部分は消耗品であり、使用年数や保管環境によっては劣化を避けられません。


ご依頼内容と修理前の状態

I様よりご相談いただいた内容は、
「ソールが劣化してきており、亀裂や剥がれが目立つため、
スパイクレス仕様にしてオールソール交換したい」というものでした。

実際にお預かりした靴を確認すると、

  • アウトソール全体に細かな亀裂が発生

  • 接着面の劣化による浮き・剥がれ

  • ゴルフシューズ特有の硬化したソール素材による柔軟性の低下

といった症状が見受けられました。

この状態では、
・歩行時の安定性が損なわれる
・スイング時に踏ん張りが効かない
・剥がれが進行すれば安全面にも不安が残る

といった問題が起こる可能性があります。

部分補修では対応が難しく、
オールソール交換修理が最適な選択と判断しました。


スパイクレス化という選択

今回の修理の大きなポイントは、
**「スパイクレス化」**です。

従来のスパイク付きゴルフシューズはグリップ力に優れていますが、

  • スパイクの摩耗・脱落

  • メンテナンスの手間

  • 普段履きや練習場での使いにくさ

といったデメリットもあります。

そこでI様は、
「ラウンドでも使えて、普段の歩行も快適なスパイクレス仕様」
をご希望されました。


使用するソールと修理方針

今回採用したのは、
Vibram(ビブラム)419C スパイクレスソールです。

このソールは、

  • 適度なグリップ力

  • フラットで安定した接地感

  • ゴルフシューズとの相性の良さ

を兼ね備えており、
スパイクレス化を希望されるお客様には非常に人気のあるソールです。

また、ミッドソールには
白系のEVAスポンジを使用し、

  • 軽量性

  • クッション性

  • 長時間歩行時の疲労軽減

を重視した構成としました。


修理工程① 既存ソールの分解・取り外し

まずは、劣化した元のソールを
慎重に分解・取り外す作業から始めます。

ゴルフシューズはモデルによって構造が異なり、
無理に剥がすとアッパー(甲革)を傷めてしまう恐れがあります。

今回は、

  • 劣化した接着剤

  • 古いソール素材

を一つひとつ確認しながら、
靴本体に負担をかけないよう丁寧に取り外しました。

ソールを外した後は、
接着面をきれいに整え、次の工程に備えます。


修理工程② EVAスポンジによるミッドソール作成

次に行うのが、
白系EVAスポンジを使用したミッドソールの作成です。

EVAスポンジは、

  • 軽量で反発性がある

  • ゴルフシューズに必要な安定感を確保できる

  • 経年劣化しにくい

といった特長があります。

靴のバランスを見ながら厚みを調整し、
歩行時・スイング時ともに違和感が出ないよう設計します。


修理工程③ マッケイ縫いによる固定

ミッドソールは、
マッケイ縫いによって靴本体に固定しました。

マッケイ縫いは、

  • ソールと靴本体を直接縫い合わせる製法

  • 接着だけに頼らないため剥がれにくい

  • 修理後も安定した履き心地が得られる

というメリットがあります。

ゴルフシューズのように、
踏み込みや体重移動が激しい靴には非常に相性の良い製法です。


修理工程④ ヒール部分の作成

続いて、
同じ白系のEVAスポンジを使ってヒール部分を成形します。

ヒールは、

  • 歩行時の衝撃を受けやすい

  • バランスに大きく影響する

重要な部分です。

左右の高さ・角度を細かく調整し、
自然な歩行ができるよう丁寧に仕上げました。


修理工程⑤ Vibram419Cを貼り付けて完成

最後に、
Vibram419C スパイクレスソールを貼り付けて仕上げます。

接着後は圧着・乾燥を十分に行い、
ズレや浮きが出ないことを確認。

仕上がった靴は、

  • 見た目はスッキリとしたスパイクレス仕様

  • 歩行時の安定感が向上

  • 軽快で疲れにくい履き心地

へと生まれ変わりました。


修理後の仕上がりとまとめ

今回の修理により、
I様のFootJoy ターロウは、

  • 劣化したソールの不安を解消

  • スパイクレス化による汎用性アップ

  • 今後も長く履き続けられる一足

となりました。

ゴルフシューズは「消耗したら買い替え」と思われがちですが、
オールソール交換修理によって、
お気に入りの一足を再生することが可能
です。

いずみ靴店では、
ゴルフシューズ・スニーカー・ブーツなど、
さまざまな靴の構造に対応した修理を行っております。

ソールの劣化や剥がれでお困りの方は、
ぜひ一度ご相談ください。


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埼玉県 I様 NIKE(ナイキ)JORDAN TATUM 1 特殊構造バスケットシューズのソール張替え修理事例

今回ご紹介する修理事例は、埼玉県にお住まいのI様よりご依頼いただいた、NIKE(ナイキ)JORDAN TATUM 1(ジョーダン テイタム1)のソール張替え修理です。

JORDAN TATUM 1は、NBAプレイヤーであるジェイソン・テイタムのシグネチャーモデルとして開発されたバスケットボールシューズで、軽量性と反発力、そして独特なデザインが特徴の一足です。競技用として設計されているため、一般的なスニーカーとは構造が大きく異なり、修理においても注意が必要なモデルになります。

■ ご依頼内容と靴の状態

I様からのご相談内容は
「ソールの底面がかなり削れてきたため、オールソール交換修理をしてほしい」
というものでした。

実際に靴をお預かりして確認すると、アウトソールの摩耗はかなり進行しており、特につま先から前足部にかけて大きく削れています。競技用シューズらしく、踏み込みやターン動作が多い履き方をされていたことがよく分かる状態でした。

ただし、問題は単純な「すり減り」だけではありませんでした。

■ JORDAN TATUM 1の特殊なソール構造

JORDAN TATUM 1を分解せずに内部構造を確認すると、
靴本体(アッパー)とアウトソールの間に非常に大きな空間が設けられており、その内部に**エアーバッグ(クッション構造)**が仕込まれている、かなり特殊な設計になっていることが分かりました。

この構造は、

  • 軽量化

  • 高いクッション性

  • 瞬発的な反発力

を実現するためのもので、競技用としては非常に理にかなっています。しかし、靴修理の観点から見ると、この構造は大きなリスクを伴います。

■ オールソール交換が難しい理由

当初ご希望されていたオールソール交換修理ですが、JORDAN TATUM 1の場合、以下の問題点がありました。

まず、アウトソールを完全に取り外してしまうと、

  • 側面の仕上げ(跡形処理)を綺麗に行える可能性が低い

  • エアーバッグや内部構造を損傷するリスクが高い

という点が挙げられます。

また、このモデルは、一般的なカップソールやフラットなソールとは異なり、立体的かつ複雑な形状をしています。そのため、ソールを取り外した後に、
「新しいソールを確実に装着できるかどうか」
「接着強度を十分に確保できるか」
という判断自体が、事前に確定できない構造でした。

無理にオールソール交換を行った場合、見た目が大きく崩れてしまったり、実用に耐えない仕上がりになる可能性もあります。そこで今回は、リスクの高い修理は避け、確実性を優先した修理方法へ切り替える判断をしました。

■ 修理方針の変更について

I様とご相談の上、今回はオールソール交換ではなく、
底面を平らに削り込み、新たにアウトソールを貼り付ける「ソール張替え修理」
という方法を採用しました。

この方法であれば、

  • 元のデザインを大きく崩さない

  • 内部構造(エアーバッグ)に手を加えずに済む

  • 接着強度を安定して確保できる

といったメリットがあります。

競技用シューズの場合、「理論上できる修理」よりも「実際に問題なく履える修理」を選ぶことが非常に重要です。

■ 使用するソール材:Vibram 298C

今回使用したのは、Vibram(ビブラム)298Cです。
このソールは、

  • 高い耐摩耗性

  • 屋内外で安定したグリップ力

  • 比較的薄く、加工しやすい

という特徴があり、今回のように「底面を削り込んで貼る」修理に非常に適しています。

バスケットシューズ特有の接地感を大きく損なわず、実用性を確保できる点も選定理由の一つです。

■ 修理工程:底面の削り込み

まずは、摩耗して凹凸が激しくなっている底面を、専用の機械でフラットになるまで削り込みます。

この工程では、

  • 削りすぎないこと

  • 内部構造に影響を与えないこと

が重要です。特にJORDAN TATUM 1は、内部に空間があるため、感覚だけで削ると危険です。削り具合を常に確認しながら、慎重に作業を進めます。

底面がきれいに整ったら、接着力を高めるための下処理を行います。

■ Vibram298Cの貼り付け作業

下処理が完了した底面に、専用のボンドを使用してVibram298Cを貼り付けます。
圧着後は十分な時間をかけて固定し、剥がれやズレが起きないようにします。

ソールの縁は、元のデザインに極力馴染むよう、丁寧に成形・仕上げを行います。完全なオリジナル再現ではありませんが、違和感なく自然な見た目に仕上げることを意識しています。

■ 修理完了・仕上がりについて

修理完了後は、

  • 底面の摩耗は完全に解消

  • グリップ力も回復

  • 元のデザインを活かしたまま実用可能

な状態になりました。

オールソール交換を無理に行わなかったことで、JORDAN TATUM 1本来の構造と履き心地を大きく損なうことなく、今後も使用できる仕上がりになっています。

■ まとめ:競技用シューズの修理について

近年のナイキやジョーダンブランドのバスケットシューズは、非常に高度で複雑な構造をしています。そのため、
「すり減った=必ずオールソール交換できる」
というわけではありません。

靴の構造を正しく見極め、
できる修理・やるべき修理・やらない方がいい修理
を判断することが、長く安全に履くためには重要です。

JORDAN TATUM 1のようなモデルでお悩みの方は、まずは状態確認からお気軽にご相談ください。


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佐賀県 K様 REDWING(レッドウィング)Beckmann ベックマン 加水分解したハーフソールラバー交換修理事例

今回ご紹介する修理事例は、佐賀県にお住まいのK様よりご依頼いただいた、REDWING(レッドウィング)Beckmann(ベックマン)のハーフソールラバー交換修理です。

レッドウィング・ベックマンは、ワークブーツでありながらもドレスシューズの要素を併せ持った人気モデルで、オン・オフ問わず幅広いシーンで愛用されている靴です。革の質感やシルエットの美しさから、長年履き続けている方も多い一足ですが、今回のK様の靴には、経年による避けられないトラブルが発生していました。

■ ご依頼内容と靴の状態

お預かりしたベックマンを確認すると、つま先側に貼られているハーフソールラバーが明らかに劣化しており、表面がボロボロと崩れ始めている状態でした。触るとネチョネチョした感触があり、ゴムとしての弾力はほとんど失われています。

これは、往年のレッドウィング製品に多く見られるハーフソールラバーの加水分解によるものです。
素材に塩ビ系(ポリウレタン系を含む)のラバーが使用されている場合、履く・履かないに関わらず、湿気や経年によって内部から分解が進み、最終的にはこのように崩壊してしまいます。

「まだ剥がれていないから大丈夫」と思われがちですが、加水分解は内部から進行するため、見た目以上に危険な状態です。このまま履き続けると、歩行中に突然ラバーが剥がれたり、縫い糸ごと切れてしまう可能性もあります。

■ 修理方針について

今回の修理では、
「今後は同じトラブルが起きないこと」
を最優先に考え、加水分解しない素材のハーフソールラバーへ交換することにしました。

使用するのは、Vibram(ビブラム)2333
合成ゴム素材で、加水分解の心配がなく、耐摩耗性にも優れたハーフソールラバーです。オリジナルの雰囲気を大きく損なわず、それでいて実用性をしっかり高めることができます。

■ 下処理工程

まずは、劣化したハーフソールラバーを完全に取り除く作業から始めます。
加水分解したラバーは非常に厄介で、きれいに剥がれず、糊と一体化して靴底に残ってしまいます。

熱を加えながら、慎重に削ぎ落とし、靴底側に残った劣化ラバーや古い接着剤を丁寧に除去していきます。この下処理を怠ると、新しいラバーを貼っても接着不良を起こす原因になるため、時間をかけて念入りに行います。

続いて、元々ハーフソールを縫い付けていた出し縫いの糸をすべて取り除きます。糸も経年で弱っているため、再利用はせず、新しい糸で縫い直します。

■ 接着・出し縫い作業

下処理が完了したら、Vibram2333を靴底に合わせて成形し、専用のボンドで圧着します。
接着だけでも十分な強度が出ますが、ベックマンの構造と使用環境を考慮し、オリジナル同様に出し縫いを行うことで、より安心して履ける仕様に仕上げます。

出し縫いでは、元々あった縫い穴を拾うように、一目一目丁寧に縫い進めていきます。


新たに穴を開けるのではなく、既存の穴を使うことで、靴底へのダメージを最小限に抑え、見た目も自然な仕上がりになります。

左右ともにバランスを確認しながら縫い付け、最後に糸の締まり具合や接着状態を細かくチェックします。

■ 修理完了・仕上がり

両足ともハーフソールラバーの交換と出し縫いが完了し、無事に修理完了です。
見た目はオリジナルの雰囲気を保ちつつ、素材は大きくグレードアップしています。

これで、

  • 加水分解による再劣化の心配はなし

  • グリップ力・耐久性も向上

  • 安心して長く履き続けられる状態

になりました。

K様にも、「これで気兼ねなく履けます」と安心していただけたと思います。

■ まとめ

レッドウィング・ベックマンは、適切な修理を行えば何年、何十年と履き続けられる靴です。
特にハーフソールラバーの加水分解は、放置すると大きなトラブルにつながるため、早めの交換がおすすめです。

同じ症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。


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岩手県 H様 ニューバランス1300 シュータン(ベロ)加水分解によるスポンジ交換・表皮張り替え修理

今回ご紹介するのは、岩手県にお住まいのH様よりご依頼いただいた、ニューバランス1300の修理事例です。


ニューバランス1300は、1985年に登場したフラッグシップモデルとして知られ、履き心地の良さと高級感のある佇まいから、現在でも非常に人気の高いモデルです。特にUSA製1300は、コレクション性も高く、「できるだけ長く履き続けたい」と考えるオーナー様が多い一足でもあります。

しかし、どんな名作スニーカーであっても、経年劣化からは逃れられません。今回のH様の1300も、まさに時間の経過によって起こる典型的なトラブルを抱えた状態でした。


■ ご相談内容とシュータンの状態

H様からのご相談は、シュータン(ベロ)部分の劣化についてでした。
具体的には、シュータン内部のスポンジと、外側を覆っている表皮素材が加水分解を起こしているという内容です。

実際に拝見すると、表皮部分はボロボロと崩れ、指で触るだけで粉状になって剥がれ落ちてしまう状態でした。
また、内部のスポンジも劣化が進み、弾力を完全に失ってスカスカになっています。そのため、シュータンが自立せず、履くたびにクシャっと潰れてしまい、見た目だけでなく履き心地にも大きな影響が出ていました。

この症状は、1980〜90年代のニューバランスによく見られるもので、ポリウレタン系スポンジと合成皮革の加水分解が原因です。
保管環境や使用頻度に関わらず、素材の寿命として発生してしまうため、「大切に履いていたのに突然こうなった」というご相談も少なくありません。


■ 部分補修では対応できない理由

シュータンの劣化に対して、「表面だけ貼り直せば直るのでは?」と思われる方もいらっしゃいます。
しかし、今回のように内部スポンジまで劣化している場合、表皮のみの補修では根本的な解決になりません。

スポンジが劣化したままでは、
・シュータンが安定しない
・足の甲への当たりが悪くなる
・再びすぐに形が崩れる

といった問題が残ってしまいます。
そのため今回は、シュータンを一旦靴本体から取り外し、内部構造から作り直す修理をご提案しました。


■ シュータン取り外し作業

まずは、シュータンを靴本体から丁寧に取り外します。
ニューバランス1300のシュータンは、アッパーとしっかり縫い込まれているため、無理に外すと周囲の革や縫製を傷めてしまいます。

縫い目を一針ずつ確認しながら糸を解き、アッパー側にダメージが出ないよう慎重に分離していきます。この工程は地味ですが、仕上がりを左右する非常に重要な作業です。


■ スポンジの入れ替え

シュータンを分解すると、内部のスポンジは原形を留めないほど劣化していました。
弾力はなく、押すと崩れる状態で、クッション材としての役割はほぼ果たしていません。

ここで、新しいスポンジへ完全に入れ替えを行います。
厚み・硬さ・反発力のバランスを考え、元の履き心地を損なわないよう素材を選定します。単に硬いスポンジを入れれば良いというわけではなく、履いたときの足当たりを想定しながら調整する必要があります。

このスポンジ交換によって、シュータンはしっかりとした芯を取り戻します。


■ 表皮を本革で張り替え

次に、劣化していた表皮部分を本革で張り替えます。
元々の合成皮革は加水分解を起こしていましたが、本革にすることで今後同じトラブルが起きる可能性を大幅に減らすことができます。

革の厚みや質感を調整しながら、シュータンの形状に合わせて裁断し、丁寧に縫製していきます。
この縫製には、立体物の縫い付けに欠かせない八方ミシンを使用します。

八方ミシンは、通常の平ミシンでは縫えない筒状・立体形状を、そのままの形で縫製できる特殊なミシンです。
シュータンのように曲面が多いパーツでは、このミシンがあるかどうかで仕上がりに大きな差が出ます。


■ ロゴマークの再縫い付け

表皮を張り替えた後は、元々付いていたニューバランスのロゴマークを元の位置に縫い付けます。
ロゴの位置がズレると全体の印象が大きく変わってしまうため、慎重に位置を確認しながら縫製します。

細かな作業ではありますが、「見た目の完成度」を高めるためには欠かせない工程です。


■ シュータンを靴本体へ再縫製

すべての工程が終わったら、シュータンを靴本体へ縫い付け直します。
取り外す前と同じ位置・角度になるよう調整し、左右のバランスも確認しながら仕上げていきます。

縫い付け後は、シュータンがしっかりと自立し、履く際にも潰れずスムーズに足入れできる状態になりました。


■ 修理後の仕上がりと履き心地

修理後は、見た目が大きく改善されただけでなく、機能面でも大きな変化がありました。
シュータンがしっかり立ち上がることで、足の甲へのフィット感が向上し、履き心地も格段に良くなっています。

本革表皮にしたことで、今後は経年変化を楽しみながら、長く安心して履いていただける仕様となりました。

H様にも仕上がりをご確認いただき、「これでまた快適に履けます」と喜んでいただけました。
お気に入りの一足を、修理しながら使い続ける——そのお手伝いができたことを嬉しく思います。

東京都 I様 ニューバランス576 加水分解でバキバキになったヒールカップ交換 + アウトソール張替え修理(Vibram298C)

加水分解でバキバキになったヒールカップ交換 + アウトソール張替え修理(Vibram298C)

今回ご紹介するのは、東京都にお住まいのI様よりご依頼いただいた、ニューバランス576の修理事例です。


ニューバランス576といえば、英国製モデルとしても知られ、クラシックなデザインと優れた履き心地で長年多くのファンに愛されている名作スニーカーです。しかし一方で、経年劣化による素材トラブルが避けられないモデルでもあり、今回のご依頼もまさに「時間の経過が原因」となった修理内容でした。

■ ご依頼内容と靴の状態

I様からのご相談内容は大きく分けて二点です。


ひとつ目は、かかと外側に付いている樹脂製ヒールカップの破損


もうひとつは、アウトソールの摩耗による滑りやすさの改善です。

まずヒールカップですが、こちらはニューバランス576によく見られる症状で、樹脂素材が経年により加水分解を起こし、硬化・脆化した結果、バキバキに割れてしまっていました。
ヒールカップとは、かかとの外側を覆う樹脂製の補強パーツのことで、靴内部に入っている「ヒールカウンター(かかと芯)」とは別物です。このヒールカップが破損すると、見た目が悪くなるだけでなく、かかとのホールド感にも影響が出てしまいます。

実際に拝見すると、表面には細かい亀裂が入り、指で触ると簡単に崩れてしまうほど劣化が進行していました。ここまで加水分解が進んでしまうと、接着や部分補修では対応できず、交換修理が必須となります。

■ 純正部品が手に入らないという現実

ニューバランス576の樹脂製ヒールカップは、残念ながら純正部品としての供給がありません。
同形状・同素材の代替パーツも存在しないため、「同じものに交換する」という選択肢は現実的ではありません。

そこで当店では、本革を使用した代替ヒールカップを一から製作し、靴に合わせて取り付ける方法をご提案しました。
見た目・耐久性・修理後の実用性を総合的に考えると、この方法が最も長く安心して履いていただけると判断しています。

■ ヒールカップ製作と縫い付け工程

まず、劣化した樹脂製ヒールカップを慎重に取り外します。
加水分解した樹脂は非常に脆く、無理に外すと周囲のアッパーや内部構造を傷めてしまうため、状態を見極めながら少しずつ除去していきます。

取り外し後は、元のヒールカップの形状を参考にしながら、本革で新しいヒールカップを製作します。
革は厚み・コシのあるものを選び、かかとの曲線に自然に沿うよう成形します。この工程を丁寧に行わないと、履き心地や見た目に違和感が出てしまうため、非常に重要なポイントです。

取り付けには八方ミシンを使用します。
八方ミシンは、立体的な形状のまま縫製できる特殊なミシンで、ヒール周りや筒状部分の縫い付けには欠かせない機械です。
手縫いでは強度や仕上がりに限界があり、通常の平ミシンでも対応できないため、この八方ミシンで一針一針しっかりと縫い付けていきます。

縫製後は、革の端処理や表面の調整を行い、違和感のない自然な仕上がりになるよう整えます。
樹脂製だった元のヒールカップとは素材感こそ異なりますが、本革ならではの落ち着いた風合いが加わり、むしろ上質感のある印象に仕上がりました。

■ アウトソール張替えのご依頼について

次にアウトソールの修理です。
I様からは「パターンが薄くなってきて、以前より滑る感じがする」とのご相談をいただいていました。

確かにソールを確認すると、特につま先から前足部にかけて摩耗が進み、トレッドパターン(溝)がかなり浅くなっていました。この状態では、濡れた路面やタイル床などで滑りやすくなり、転倒のリスクも高まります。

今回は、耐久性とグリップ力のバランスに優れたVibram298Cを使用してアウトソールを張り替えることになりました。
Vibram298Cは、比較的フラットで安定感があり、街履き用途に非常に相性の良いソールです。ニューバランス576のクラシックな雰囲気ともよく合います。

■ ソール張替え作業

既存のアウトソールを剥がし、下地を整えた後、新しいVibram298Cを貼り付けます。
接着前には、接着面の削り・脱脂・プライマー処理など、基本的ですが非常に重要な下処理を丁寧に行います。この工程を疎かにすると、後々剥がれの原因になるため、特に注意が必要です。

圧着後は、ソール周囲を整え、接地面が均一になるよう仕上げます。
張替え後は、グリップ力が回復し、歩行時の安心感も大きく向上しました。

■ 修理を終えて

ヒールカップ交換とアウトソール張替え、二つの修理を同時に行うことで、ニューバランス576は再び安心して履ける一足へと生まれ変わりました。
特に本革製ヒールカップは、今後同じように加水分解を起こす心配がなく、長期的に見ても非常にメリットの大きい修理です。

I様にも「これでまた気兼ねなく履けます」と喜んでいただけました。
お気に入りの靴を修理しながら長く履き続ける——そのお手伝いができたことを、私たちも嬉しく思います。

岐阜県 K様 Blundstone(ブランドストーン)サイドゴアブーツ 加水分解によるオールソール交換修理事例

今回ご紹介する修理事例は、岐阜県よりご依頼をいただいたK様のBlundstone(ブランドストーン)サイドゴアブーツ、加水分解によるオールソール交換修理です。


ブランドストーンといえば、タフで履きやすく、アウトドアから日常使いまで幅広く活躍するサイドゴアブーツとして非常に人気の高いブランドです。一見すると頑丈で長く履けそうな印象がありますが、実はモデルによってはソールにポリウレタン素材が使用されており、経年劣化による「加水分解」からは逃れられないという側面も持っています。

K様からのご相談は、「久しぶりに履こうとしたら、ソールがボロボロ崩れてきた」というものでした。加水分解特有の症状で、履いていなくても年月の経過によって内部から劣化が進行し、ある日突然使えなくなってしまうケースです。実際に靴を確認すると、アウトソールからミッドソールにかけてポリウレタンが劣化し、指で触るだけでも粉状・塊状に崩れていく状態でした。

ポリウレタン素材は、クッション性や軽さに優れている反面、水分や湿気と化学反応を起こしやすく、一定年数が経過すると分子構造が壊れてしまいます。これが「加水分解」と呼ばれる現象です。特に日本のように湿度が高い環境では進行が早く、履く頻度に関係なく劣化してしまうのが厄介な点です。外見がきれいなままでも、内部ではすでに寿命を迎えているということも珍しくありません。

今回のブランドストーンのサイドゴアブーツも、アッパーの革やゴアゴム部分はまだ良好な状態を保っていました。しかし、ソールだけは完全に寿命を迎えており、部分補修では対応できないため、オールソール交換修理が必須と判断しました。

まずは劣化したソールの分解作業から始めます。加水分解したポリウレタンソールは、弾力を失い、ボロボロと崩れるため、通常のソール剥がしとは違った慎重さが求められます。無理に力をかけると、アッパー側までダメージを与えてしまう可能性があるため、状態を見極めながら少しずつ取り除いていきます。劣化した素材を完全に除去し、靴本体側に残った接着剤やポリウレタンの残骸も丁寧に処理します。

ソールをすべて取り除いた後は、新しいソール構造の土台作りに入ります。今回は、EVAスポンジ素材のミッドソールを新たに作成し、靴本体に取り付ける方法を採用しました。EVAスポンジは、軽量でクッション性があり、なおかつポリウレタンのように加水分解を起こしにくい素材です。今後長く履いていくことを考えると、非常に理にかなった選択と言えます。

このEVAミッドソールは、単に接着するだけでなく、マッケイ縫いによって靴本体にしっかりと縫い付けます。マッケイ縫いは、アッパーからミッドソールまでを一体化させる製法で、接着剤の劣化に左右されにくく、耐久性の高い構造を作ることができます。アウトドア用途や、日常的にガシガシ履く靴には非常に相性の良い製法です。

ミッドソールが安定したところで、次にアウトソールの取り付けを行います。今回K様からご指定いただいたのは、Vibram(ビブラム)528Kソールです。528Kは、スポンジ系素材をベースにしたアウトドアタイプのソールで、軽さとクッション性を兼ね備えながら、適度なグリップ力も持っています。ゴツすぎないデザインのため、ブランドストーンのシンプルなサイドゴアブーツの雰囲気を損なわず、非常に相性の良いソールです。

スポンジ系アウトソールというと「減りが早いのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、Vibramの素材は耐久性とのバランスが良く、日常使いから軽いアウトドアまで十分に対応できます。また、何よりも履いた瞬間に分かる軽さとクッション性は、従来のポリウレタンソールとはまた違った快適さを感じていただけるはずです。

アウトソールを接着・圧着した後は、側面のラインを整え、全体のバランスを見ながら仕上げを行います。サイドゴアブーツはシルエットが重要な靴のため、ソールが厚くなりすぎたり、野暮ったく見えたりしないよう、細部まで調整します。完成後は、しっかりとした安定感と軽快な履き心地を両立した一足に生まれ変わりました。

今回の修理によって、加水分解で履けなくなっていたブランドストーンのサイドゴアブーツは、今後も安心して履き続けられる構造へと再構築されています。ポリウレタンの弱点を避け、EVAスポンジ+マッケイ縫い+Vibramアウトソールという組み合わせは、耐久性と実用性の面で非常に優れた仕様です。

「もう寿命だと思っていた靴が、また履けるようになる」というのが、オールソール交換修理の大きな魅力です。特に、アッパーがしっかりしている靴ほど、ソールを替えることでその価値を最大限に活かすことができます。K様のブーツも、これからまた日常の相棒として活躍してくれることでしょう。

仕上がったブーツをお返しする際には、「またガシガシ履いてください」とお伝えしました。修理はゴールではなく、新たなスタートです。履いて、減って、また必要になったら直す。そんな循環の中で、靴は本当の意味で「道具」になっていきます。

いずみ靴店では、ブランドや流行にとらわれず、一足一足の状態を見極めた修理をご提案しています。ブランドストーンの加水分解でお困りの方、同じような症状で悩まれている方は、ぜひ一度ご相談ください。

山梨県 A様 NIKE バスケットボールシューズ 靴紐通し修理事例

今回ご紹介する修理事例は、山梨県よりご依頼をいただいたA様のNIKE(ナイキ)バスケットボールシューズ、靴紐通し部分の修理です。
一見すると小さな不具合に思われがちな「靴紐通し」のトラブルですが、実は競技用シューズにおいては非常に重要なパーツであり、破損したままでは安全に履くことができません。

バスケットボールシューズは、ジャンプ、着地、急停止、急激な方向転換といった激しい動作を繰り返すため、靴全体にかかる負荷が非常に大きい構造になっています。その中でも、足と靴をしっかり一体化させる役割を担っているのが靴紐通し部分です。ここが破損すると、紐を締めても力が分散せず、フィット感が損なわれるだけでなく、プレー中に足がズレてしまう危険性も高まります。

A様からのご相談内容は、「靴紐を通す輪っかの一部が壊れてしまい、紐として機能しなくなっている」というものでした。実際に靴を確認してみると、ナイキのバスケットボールシューズ特有の構造が見て取れます。このモデルでは、金属ハトメや樹脂パーツではなく、1本の硬めの紐状パーツを靴の側面に沿わせ、途中途中を縫い付けることでループ(輪っか)を形成する構造になっていました。

この構造は軽量化やフィット性の向上という点では非常に優れていますが、縫い付け部分に負荷が集中しやすいという側面もあります。特に、靴紐を強く締め込むバスケットボールシューズでは、紐を引くたびに縫製部分に強いテンションがかかります。長期間の使用によって、その縫い付けられている布部分が裂けてしまい、輪っかが元の「ただの紐」に戻ってしまうという状態になっていました。

輪っかが輪として機能しなくなると、そこに靴紐を通すことができず、実質的にシューレースホールが一つ使えない状態になります。そのまま無理に履こうとすると、紐の締まり方に左右差が出てしまい、足首や甲のホールド感が大きく損なわれます。競技用としては非常に危険な状態と言えるでしょう。

今回の修理では、単に破れた部分を接着剤で留めるといった簡易的な方法では対応できません。激しい動きに耐えられる強度を確保するためには、新たに布を補強材として当て、その布ごと靴本体に縫い付ける必要があります。そこで行ったのが、部分的な補強縫製による靴紐通しの再構築です。

まず、破損している箇所を確認し、使える元の紐状パーツは活かす方針としました。完全に作り直すのではなく、元の構造を尊重しながら「壊れた部分だけを確実に補強する」修理です。破れてしまった縫製部分には、新たに耐久性のある布を当て、その上から紐を固定する形で縫い付けを行います。この布は、引っ張りや摩擦に強く、かつ厚みが出すぎない素材を選定しています。

ここで重要になるのが、使用するミシンです。靴の側面、しかも立体的な構造の途中にある靴紐通し部分は、一般的な平ミシンや腕ミシンでは角度や位置の制約が大きく、正確な縫製ができません。そこで使用するのが八方ミシンです。八方ミシンは、靴修理や鞄修理など立体物の縫製に特化したミシンで、文字通りあらゆる方向から針を入れることができます。

靴の形を崩さず、必要な位置にだけピンポイントで縫いを入れることができるため、今回のような部分補強修理には欠かせない機械です。布・紐・靴本体を一体化させるように、しっかりとした縫製を施し、輪っかとしての形状を再構築していきます。

縫い付け後は、実際に靴紐を通し、引っ張りながら強度を確認します。見た目だけでなく、「競技中に強く締め上げても問題がないか」という実用面でのチェックが非常に重要です。補強布があることで、力が一点に集中せず、周囲に分散される構造になり、元の状態よりもむしろ安心感のある仕上がりとなりました。

修理後の靴は、破損していた靴紐通しがしっかりと輪っかとして機能するようになり、他のシューレースホールと同じように使える状態に戻っています。アッパー全体のコンディションも良好で、ソールの状態もまだ問題がないため、今回の修理によって再び実戦で使用できる一足となりました。

靴紐通しの破損は、「もう履けない」と判断されがちなトラブルですが、構造を正しく理解し、適切な補強を行えば修理が可能なケースも多くあります。特に競技用シューズは高価なものが多く、足に馴染んだ一足を手放したくないという方も少なくありません。

いずみ靴店では、ソール交換や大きな修理だけでなく、今回のような細かなパーツ修理にも対応しています。「こんな部分でも直るのだろうか」と迷われている場合でも、一度ご相談いただければ、状態を見極めたうえで最適な修理方法をご提案いたします。

今回のA様のNIKEバスケットボールシューズも、靴紐通し修理によって再び安心して履いていただける状態になりました。これでまた、コートの上で存分に活躍してくれることでしょう。

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