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月別アーカイブ: 2025年11月

倉敷市 N様 REDWING Beckmann(レッドウィング ベックマン)ハーフソールラバー交換修理レポート

―加水分解したハーフソールラバーをVibram2333へ交換・出し縫い加工―

倉敷市よりお預かりした、N様の REDWING Beckmann(レッドウィング・ベックマン) の修理事例をご紹介します。
今回のご依頼内容は、ハーフソールラバー部分の加水分解による崩壊修理と、再接着・出し縫いによる補強加工 です。

レッドウィングの中でも特に人気の高いベックマンですが、旧モデルに多く採用されているハーフソールラバーに塩ビ系素材(PVC) が使用されていることから、経年劣化で 加水分解による崩壊 が発生しやすく、全国の多くのユーザーが悩まれている症状です。N様の靴も同様に、歩行のたびに表面がボロボロと崩れてしまい、修理をご希望いただきました。

当店では劣化素材を丁寧に除去し、代わりに 加水分解しない合成ゴム材のVibram2333 を使用して貼り替え、さらに 出し縫い により強度を高め、長く安心してご使用いただける仕様に仕上げました。


▼ 修理ご依頼時の状態 〜ハーフソールラバーの加水分解とは?〜

お預かりしたベックマンを拝見すると、一見表面はまだ残っているように見えますが、指先で軽く触れるだけで粉状に崩れ落ちるほど、内部構造から完全に劣化が進んだ状態でした。

● 加水分解の特徴

  • 歩行により摩耗よりも先に 素材自体が崩壊 していく

  • 表面がベタついたり、粉が出たりする

  • 縫い付け糸の固定力が弱まり、上物の革を痛めるリスク

  • 靴底が突然剥離する恐れもある

特にベックマンの場合、アッパーの質が非常に良いだけに、ソール側の劣化による破損は避けたいところです。
「まだ履けると思っていたのに急に崩れた」という御相談が非常に多いモデルと言えます。

N様も「歩く度に床に黒い粉が落ちて困っている」とのことで、早めの修理依頼で最適なタイミングでした。


▼ 修理内容と作業工程

① 劣化したハーフソールラバーをきれいに除去

まずは ソール表面ならびに縫い付け糸の間に入り込んだ粉状の塩ビ素材を徹底的に掻き出し、完全に除去 します。
加水分解は内部に残っていると接着の妨げになるため、ここを丁寧に行うことが非常に重要です。

② 出し縫いの糸を抜き、再縫製の準備

粉状に崩れた素材が縫い糸に絡みついていたため、既存の縫い付け糸をすべて抜き、縫い直しに備えて溝を整えます。

③ Vibram2333を貼り付け

今回採用した Vibram2333 は合成ゴム素材で、

  • 加水分解しない

  • 耐摩耗性・耐久性に優れる

  • グリップ力が高く滑りにくい

  • ベックマンの雰囲気と相性が良いデザイン

と、現代の修理パーツの中でも最適な選択と言えます。
精密な成形と圧着工程により、靴本体との密着性を最大限まで高めます。

④ 出し縫い糸で縫い直し(補強)

最後に、出し縫い(アウトステッチ) でしっかり縫い付けて仕上げます。
接着のみの修理と異なり、摩擦やねじれが加わる部分でも強度が落ちず、履き込むほどソールとアッパーが一体化していきます。


▼ 修理後の仕上がり 〜見た目も耐久性も大きく向上〜

修理後のベックマンは、ソール面が完全に刷新され、クラシックな雰囲気はそのままにより堅牢な仕様 へ生まれ変わりました。

● 修理後のメリット

  • 加水分解しない素材で トラブルを防止

  • 出し縫いにより 信頼性の高い強度

  • グリップ力向上で 歩行が安定

  • 履き慣れたアッパーはそのまま使用できるため 愛着ある靴を長く楽しめる

N様にも実物をご確認いただき、
「また全然別の靴のように生き返った」「これで安心して履けます」
と大変喜んでいただけました。


▼ レッドウィング ベックマンのソールでお困りの方へ

旧モデルのベックマンに使われているハーフソールラバーは加水分解が避けられない素材のため、
履いていなくても劣化が進行 してしまう点が大きな特徴です。

  • 最近、粉が出始めた

  • ベタベタする

  • 歩くと黒い跡が残る

  • ソールが浮いてきた

上記のような症状が見られる方は、早めの修理をおすすめします。
状態が軽いほど、靴本体を傷めず最適な修理が可能です。


▼ まとめ

項目 内容
修理内容 ハーフソールラバー交換・出し縫い補強
症状 塩ビ系素材の加水分解による崩壊
交換部材 Vibram2333(合成ゴム / 黒)
メリット 耐久性向上・今後加水分解の心配なし・グリップ強化
対象 旧ベックマンユーザーに特におすすめ

倉敷市 いずみ靴店 へお気軽にご相談ください

レッドウィングをはじめ、ワークブーツやスニーカー修理も幅広く対応しております。
「捨てようか迷っていた靴がまた履けるようになった」と多くのお客様に喜ばれています。


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東京都 K様 Timberland(ティンバーランド)フィールドブーツ 履き口スポンジ表皮張り替え修理レポート

東京都 K様 Timberland(ティンバーランド)フィールドブーツ
履き口スポンジ表皮張り替え修理レポート

今回ご紹介する修理事例は、東京都にお住まいのK様よりご依頼いただきました、ティンバーランド・フィールドブーツの「履き口スポンジ表皮張り替え修理」です。ティンバーランドはワークブーツの名門ブランドとして世界的に愛され、タウンユースからアウトドアまで幅広く活躍するモデルですが、長年履かれた名品は素材の経年変化により様々なトラブルが発生します。

特に今回問題となったのは、履き口周りのクッション(スポンジ)を覆う表皮が合成皮革で作られていたため、経年劣化による加水分解で表面がボロボロと崩れ落ちてしまっていた点です。ティンバーランドに限らず、履き口スポンジの表皮に合成皮革が採用されている靴は非常に多く、長年の使用により同様の症状が生じやすい部分といえます。


◆ 修理前の状態と発生原因

K様よりお預かりした際、履き口周りの表皮はすでに粉状になって剥がれ落ち、触れるだけでポロポロと破片が落ちてしまうほど劣化が進行していました。スポンジ自体はまだ大きな損傷はありませんでしたが、合成皮革部分の崩壊の影響で内部のスポンジがむき出しになり、着脱時に衣類や靴下に黒い破片が付着してしまう状態でした。

これは皆さまも経験されたことがあるかもしれませんが、合成皮革は加水分解と呼ばれる現象により、空気中の水分と化学反応を起こして崩壊してしまう性質があります。
履く頻度に関係なく、保管しているだけでも10年前後で加水分解が始まることが多く、特に梅雨や湿気の多い日本の気候では劣化が早まる傾向にあります。

履き口スポンジは足首に直接触れる部分でもあるため、べたつきや表皮の剥がれは非常にストレスとなり、ブーツ自体はまだしっかりしていても「履き続けるのが困難」な状態へ陥ってしまいます。


◆ 修理方針の決定と色味の選定

今回は表皮をすべて除去し、新しい素材で巻き替える方法を採用することにしました。
K様に色について確認したところ、「現在見えている色が元の色と大きく変わらない」とのご回答でしたので、現状の雰囲気に最も近いキャラメルカラー(カラメル色)の本革をご提案し、採用することとなりました。

オリジナルは合成皮革でしたが、再び同じ素材を使うとまた同じように加水分解してしまいます。そこで今回は、耐久性に優れエイジングも楽しめる本革を使用し、長く履いていただける仕様へアップグレードする形となります。


◆ 作業工程

1. 履き口部分の縫い付けを丁寧に解体

まず、ブーツ本体と履き口スポンジ部分をつないでいる縫い付けを丁寧に切り、スポンジクッション部分を取り外します。
この工程は単純なようで非常に繊細な作業となります。なぜなら、縫い糸を誤って切りすぎたり引っ張りすぎたりすると、本体の革やライニングを傷めてしまう可能性があるためです。
一針一針慎重に糸をほどき、状態を確認しながら取り外しを行いました。

2. 崩壊している合成皮革の除去と下処理

次に、完全に崩れてしまった合成皮革をスポンジから除去します。
粉状の破片が広範囲に付着していましたので、クリーニングと下処理を時間をかけて行い、新しい革がしっかりと密着する状態を整えました。

3. 本革で新たに巻き替え加工

選定したカラメル色の本革を裁断し、履き口スポンジに美しく巻きつくよう成型していきます。履き口の形状は曲線が強く、立体的にフィットさせるには革の伸び方や厚みを考慮しながら加工する必要があります。
革の場合、合成皮革と比べて伸び縮みが異なるため、わずかな誤差が一目でわかってしまう仕上がりになりかねません。ここが技術者の腕の見せどころです。

4. 靴本体への再縫い付け ― 八方ミシンによる施工

新しい本革を巻いたスポンジパーツを靴本体に縫い戻します。
今回は**立体物の縫製に特化した「八方ミシン」**を使用しました。

八方ミシンは縫い方向や角度を自由に変えることができ、ブーツの履き口のようにカーブの多い部分の縫製に欠かせない専門機器です。一般的な平ミシンでは縫い付けが困難なため、靴修理の現場でのみ活躍する特殊なミシンといえます。

縫い幅やテンションを揃え、元々の仕立てと違和感が出ないよう慎重に縫製していき、無事に縫い付け工程が完了しました。


◆ 修理完了 ― 再び快適に履けるブーツへ

修理後は、履き口の本革が自然に馴染み、全体の雰囲気にも違和感のない仕上がりとなりました。
見た目のみならず、履き心地も大きく改善しています。
これで再び長く快適に履いていただける状態へと生まれ変わりました。

ティンバーランドのフィールドブーツは丈夫で長寿命のモデルですが、履き口の合成皮革だけは劣化が早い傾向にあり、今回のように部分修理を行うことで、靴全体の寿命を大きく伸ばすことができます。


◆ 最後に

「まだまだ履きたいのに、この部分だけ残念…」
そんなケースには分解修理や張り替えによって対応できる可能性が十分あります。

もし同じ症状でお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。

これからもK様に気持ちよく履いていただければ幸いです。
この度はご依頼いただき誠にありがとうございました。


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静岡県 M様 ニューバランス576 ヒールカップ交換修理

静岡県 M様 ニューバランス576 ヒールカップ交換修理

――樹脂製ヒールカップの加水分解による破損を、本革製ヒールカップで再構築しました――

今回は、静岡県のM様よりご依頼いただいた ニューバランス 576(NewBalance 576) の修理事例をご紹介いたします。

ニューバランスの中でも長年愛され続けている名作モデルで、特に英国製の576はクラシックラインの代表格として人気が高い一足です。履き心地の良さはもちろん、そのスタイルにも温かみがあり、長く愛用されている方も多いモデルですが、経年とともに避けられないトラブルのひとつが ヒールカップの加水分解 です。


◆ご依頼内容と状態確認

お預かりしたシューズを確認すると、かかと内部にある 樹脂製ヒールカップが加水分解を起こし、バキバキに割れて崩れてしまっている状態でした。靴の外側から触るだけでカパカパと音がし、歩行の安定感もほとんど失われています。

ヒールカップとは、かかと部分の形を保持する硬い芯材のことで、履いたときのホールド感や安定性を担っています。一般的に、スニーカーにはプラスチック系樹脂が使用されていることが多く、経年によって硬化・脆化が進むと割れて崩壊してしまうことがあります。特にニューバランスやNIKEなど、90年代〜2000年代のスニーカーでは加水分解のご相談は非常に増えています。

M様の576は、アッパー(甲革)は非常に綺麗に保たれており、まだまだ履ける状態でしたが、ヒールカップの崩壊により履き続けることができない状況でした。


◆修理方針についてのご説明

本来であれば純正に近い形の樹脂製カップでの交換を検討しますが、
このモデルに合う同等の樹脂製パーツは市場に存在しません。

そこで当店では、これまで多くの同様の修理に採用してきた方法として
本革で代用品となるヒールカップを新規製作し、内部に縫い付ける修理 を提案いたしました。

本革の利点は以下の通りです:

  • 経年劣化に強い(加水分解しない)

  • 足の動きに柔らかく馴染む

  • 強度と形状保持力がある

  • 手作りで靴に合わせて調整できる

また、靴の内部への固定には 八方ミシンを使用して縫い付け ます。
八方ミシンとは、一般的なミシンでは縫えない 立体的な靴内部、底周りなどの狭い場所を縫うことができる専用ミシン であり、靴修理の現場では欠かせない特殊な機械です。


◆修理工程の詳細

1. かかと周りの分解

まず、ライニング(内側の生地)を丁寧に開き、内部の崩壊したヒールカップを取り除きます。加水分解した樹脂は粉々になっているため、掃除だけでもかなり手間がかかります。細かい破片が残っていると履き心地に影響するため、慎重にすべて取り除きました。

2. 新しいヒールカップ(本革)を製作

靴本体の形状に合わせ、厚みやカーブを調整しながら立体的に成形します。
機械で抜いた板ではなく、手作業で削り込んで仕上げるため、フィット感の良い形に作り上げることができます。

3. 八方ミシンで縫い付け

革で作成したカップを靴内部に納め、八方ミシンを使ってしっかり縫い付けます。
八方ミシンは縫う方向を360度自由に変えることができるため、複雑な構造のかかと部分でも確実に縫い込むことが可能です。縫い付けることで芯材のズレを防ぎ、長期間安心して履ける仕上がりになります。

4. ミッドソールとアウトソール間の剥がれ補修

ミッドソールとアウトソールの間に軽い剥がれが確認できたため、こちらも同時に修理しました。


古い接着剤を剥がし丁寧に下処理し、専用ボンドで圧着。部分的な剥がれでも放置すると大きな破損につながるため、非常に重要な工程です。

5. 内装を元に戻し仕上げ

ライニングを丁寧に閉じ、形を整えて完成。
外観は大きく変わることなく、履き心地と強度が新しく蘇りました。


◆修理後の状態と今後のアドバイス

新しいヒールカップは本革製のため、今後 加水分解による破損が起こる心配はありません
履き込むほどに足に馴染んでいき、純正以上の快適なホールド感が得られるようになります。

アウトソールの接着も再強化していますので、安心してまた長くご愛用いただけます。


◆職人としての想い

ニューバランス576のように、長く履きたいと多くの方が感じる名品モデルこそ、修理によって生き返らせる価値があります。
「まだ履けるのに、壊れた部品が手に入らないから買い替えしかない」
そんな状況を救えるのが、靴修理の役割だと考えています。

M様、この度は大切な一足をお預けいただきありがとうございました。
これからも永く快適に履いていただけますと幸いです。


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**佐賀県 I様 CONVERSE ALL STAR(コンバース オールスター) かかとコーナー修理 & 滑り部分革当て修理レポート**

**佐賀県 I様

CONVERSE ALL STAR(コンバース オールスター)
かかとコーナー修理 & 滑り部分革当て修理レポート**

今回ご紹介する修理事例は、佐賀県のI様よりお送りいただいた **CONVERSE ALL STAR(コンバース オールスター)**の修理です。
コンバースといえば、世界中で愛されるスニーカーの定番中の定番。シンプルなデザイン、クセのないフォルム、合わせる服を選ばない柔軟さ。履き潰してもまた買い直してしまう、そんな魅力のある靴です。

しかし、今回お預かりしたオールスターはまだ捨てるには惜しい状態。ソールやアッパーはまだ充分使用可能ですが、「かかと部分の減り」と「内部の滑り部分破れ」が気になる、とのご相談でした。

日常的に履きやすいスニーカーだからこそ、かかとは減りやすく、そして履き口やヒール内部は擦れて破れが生じやすい部分です。
放置すれば靴の歩行バランスが崩れ、内部の破れは靴下を巻き込んだり、靴擦れの原因にもなります。

今回は、靴全体の寿命を延ばしつつ、履き心地を改善し、見た目にも自然な修理を施しました。


■ 修理前状態

まず、修理前に状態を確認します。

❏ かかと部分(コーナー)

  • すり減りが進行

  • まだ穴は開いていないものの、もう少し履けば外側に大きく崩れる可能性あり

  • 靴底の角が丸くなり歩行の安定性が低下

歩行時の体重のかけ方にもよりますが、特にオールスターはソールがフラットなため、かかとの片減りが顕著に現れやすい傾向があります。

❏ ヒール内側(滑り部分)

  • 内張りの合成皮革が破れておりスポンジ・カウンターが露出

  • 擦れにより黒い粉状のカスが発生

  • 履き口の違和感あり

この部分は意外と見落とされがちですが、最も修理が必要となる箇所のひとつです。破れを放置すると ヒールカウンター(かかと芯材)が変形し、靴の形が崩れるため、早めの対処が望ましい状態でした。


■ 修理内容の方向性

今回の修理方針は次の通りです。

  1. かかとの減り → コーナー修理

    • フランス TOPY社製の傾斜板を使用し、磨耗部に合わせて角度調整。

    • 高さ補正により元の履き心地へ戻す。

  2. 内部滑り部分(内張り破れ)→ 本革補修

    • 靴内部から革を縫い込み、耐久性と摩擦強度を改善。

    • 八方ミシンで縫製し、構造に負担をかけず自然な仕上がりに。


■ 材料選定

修理に使用した主な素材はこちらです。

用途 素材 特徴
かかとの補修 TOPY(トピー社製)傾斜板 柔軟性あり、摩耗に強い、高品質ラバー
内部滑り補修 本革(牛革) 耐久性・フィット感に優れ、再破損しにくい

TOPY社はフランスの老舗製造メーカーで、靴底用ラバーでは世界的評価があります。グリップ性に優れながら柔らかく足に馴染む性質があり、今回はコーナー修理として最適な素材と言えます。


■ 修理工程

ここからは実際の作業工程を詳しくご紹介します。


① かかと修理範囲のマーキング

まずは元の削れ具合を確認し、必要な削り・補填範囲を正確にマーキングします。
左右の高さ差が出ると歩行バランスを崩すため、ミリ単位で調整します。


② 傾斜加工・整形

TOPY社製のラバー傾斜板を靴底形状に合わせて削り込みながらフィット加工。
その後、失われた高さを補うように貼り合わせます。

この工程により、自然な曲線・高さ・接地角度を再現できます。


③ 圧着・バフ掛け(仕上げ)

専用圧着機でしっかりと接着。
その後、切断面・段差・傾斜角を整え、元からあったかのような自然なラインに仕上げます。


④ 内張り修理(滑り部分)

次に内部の破れへの処置です。

  • 破れた合成皮革を除去

  • 露出したカウンターの状態確認

  • 必要最小範囲で補強・形状整形

その後、本革を裏面から当て、靴内部とのなじみを確認しながら縫製します。

ここで活躍するのが 八方ミシンです。
一般的なミシンでは入り込めない立体構造の靴内部も縫える専用機で、靴修理には欠かせない存在です。

今回のオールスターは内部に元々半円型ステッチが存在しなかったため、
縦の縫製ラインを利用して自然な取り付けラインを形成しました。

これにより強度を保ちながらも見た目に違和感のない仕上がりとなります。


■ 修理後の状態

修理後は以下の効果が期待できます。

◎ かかと磨耗の再発防止
◎ 歩行バランスが改善
◎ 靴内部の擦れや違和感が解消
◎ 靴下の破れ防止
◎ 履き心地の向上
◎ 使用寿命の大幅延長

修理した箇所だけが新しい印象にならず、全体の雰囲気に馴染む仕上がりになりました。


■ まとめ

項目 内容
修理箇所 かかとコーナー / 滑り部分補修
使用素材 TOPY ラバー / 本革
縫製方法 八方ミシン
修理目的 高さ補正・耐久性向上・快適性改善

今回のように、靴底や内部が傷んできても、まだアッパーがしっかりしている場合は 修理によって寿命を延ばすことが可能です。
特にコンバースのような定番シューズは、履き込むほどに足に馴染むため、買い替えだけが選択肢ではありません。


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**埼玉県 K様 Timberland(ティンバーランド) フィールドブーツ 履き口スポンジ 表皮本革張替え修理レポート**

 

**埼玉県 K様 Timberland(ティンバーランド) フィールドブーツ

履き口スポンジ 表皮本革張替え修理レポート**

今回ご紹介するのは、埼玉県にお住まいのK様よりご依頼いただいた Timberland(ティンバーランド)フィールドブーツの修理事例です。
アウトドアからタウンユースまで幅広く愛用されているティンバーランドですが、中でもこのフィールドブーツは定番モデルとして長年人気があります。見た目の無骨さとは裏腹に、履き心地の柔らかさや耐久性の高さが特徴で、長期間履き続けている方も多い靴です。

しかし今回修理対象となったのは、ソールやアッパーではなく、意外と劣化が早く進行してしまう 履き口(履き口パッド部分)のスポンジ表皮。この部分が 経年劣化によって加水分解し、ボロボロと剥がれてしまっている状態でした。


■ 修理前の状態確認

お預かりしたフィールドブーツは、アッパーのレザーはまだ良好で、靴全体としては十分これからも履ける状態でした。ところが履き口部分の表皮だけが劣化し、指で触れるだけで粉状の破片が落ちてくるほどでした。

劣化の原因は素材特有の性質である 加水分解です。
ティンバーランドを含む多くのメーカーは、履き口の表皮や内部素材に **合成皮革(PU・PVC系)**を採用していることが多く、これは新品時には柔らかく快適ですが、空気中の湿度と反応して 時間とともに内部から崩壊が始まるという弱点があります。

特に履き口は、以下の理由で劣化が進みやすい箇所です:

  • 汗・皮脂が直接触れる部分

  • 着脱時の摩擦が大きい

  • 湿気が溜まりやすい

  • 冬場の保管で固くなり、春にひび割れが進行する

今回もまさにその典型的な症状で、合成皮革は役目を終え、スポンジ内部がむき出しになっている状態でした。放置するとスポンジ自体が裂け、履き心地が悪くなるだけでなく、靴内部にも削れた粉が入りやすくなります。


■ 修理内容の方向性

K様には修理方法として、

  1. 新品時と似た合成皮革で張り替える方法

  2. 耐久性の高い本革で張り替える方法

の2種類をご提案しました。

合成皮革は見た目が元に近くなる反面、再び数年後に同じ症状が起きるリスクが高い素材です。
一方本革は強度・耐久性・質感すべてにおいて優れています。履き込むほどに風合いが増し、靴の雰囲気とも馴染んでいきます。

じっくり比較いただいた結果、K様は **「長く履ける本革仕上げ」**を選択されました。
ティンバーランドのようにエイジングを楽しむ靴には、この選択が非常に合っています。


■ 使用革の選定

次に革の色味の選定ですが、ティンバーランドのブランド特有のカラーは完全一致する革の入手が非常に難しいという問題があります。同じ色に見えても、光沢・吟面の質感・染料の深さが異なるため、「似ているけれど違和感が出る色」になってしまうことが少なくありません。

そこで当店にある複数の革サンプルをお見せしながら、
・色馴染み
・経年変化後の色の深まり
・他パーツとの調和

を考慮して候補を検討。

最終的にK様がお選びになったのは、深みのある コーヒーブラウンでした。

「ただ元に戻すのではなく、靴に新しい表情を与える色」。
その選択はセンスの良い判断で、実際仕上がりも非常に自然で上質な印象となりました。


■ 作業工程

修理作業は以下の工程で進めました。


① 履き口パーツ取り外し

靴本体から履き口パーツを慎重に外します。無理に引き剥がすと、本体革や履き口ステッチが切れてしまうため、接着剤の層を熱で緩めながら丁寧に分解しました。


② 劣化表皮の除去とスポンジ補修

劣化した合成皮革を完全除去し、粉状の表皮や残った樹脂膜を丁寧に取り除きます。必要に応じて内部スポンジの形状も再整形し、部分的に補修。


③ 本革張り込み

選定したコーヒーブラウンの本革を成型しつつ張り込みます。履き口は曲線が多く縫製も立体構造のため、革の厚み・テンション・伸ばし方のバランスが重要です。


④ 八方ミシンで本体へ縫い付け

張り替えた履き口パーツを靴本体に戻し、八方ミシンを使用して縫い付けます。
八方ミシンは立体物を縫う専用ミシンで、靴修理では欠かせない機材です。

縫い幅のズレや革の寄りを防ぎながら、元の縫製ラインに極力合わせて縫っていきます。


⑤ 仕上げ・磨き・最終チェック

革の表面を軽くオイルケアし、余分なバリを処理して完成です。ステッチの均一性、革とスポンジの沈み込み、履き口の曲線とフィット感などを確認し、問題がないことを最終チェック。


■ 修理後の仕上がり

コーヒー色の本革が加わったことで、靴全体の雰囲気が引き締まり、より上品で落ち着いた印象に仕上がりました。既存のフィールドブーツカラーとも自然に馴染んでおり、「修理した」というより **「ワンランクアップした仕様になった」**と言える出来栄えです。

今後は本革のため、適度なメンテナンスを行うことでより味わい深く変化し、靴全体のバランスにもさらに馴染んでいくことでしょう。


■ 今回のまとめ

内容 詳細
修理内容 履き口スポンジ部分 表皮張替え
原因 合成皮革の加水分解・経年劣化
仕上げ素材 本革(コーヒーブラウン)
加工方法 分解 → 張替え → 八方ミシン縫製
メリット 耐久性UP・経年変化が楽しめる・再発リスク低減

■ 最後に

ティンバーランドやクラークス、レッドウィングなど、アウトドア系ブーツは素材や製法がしっかりしているため、部分修理や素材交換を行えば 長年履き続けることができる靴です。

特に今回のような履き口部分は、見た目・快適性・耐久性に大きく関わる重要なパート。
「他はまだ履けるのにココだけ傷んできた…」という方は、買い替える前にぜひ修理をご検討ください。


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山形県 Y様 ECCO 紳士カジュアルシューズ アウトソール張替え修理レポート

山形県 Y様 ECCO 紳士カジュアルシューズ

アウトソール張替え修理レポート

――冬の路面でも安心して歩くために

今回ご紹介するのは、山形県にお住まいのY様よりお預かりした、ECCO(エコー)製の紳士カジュアルシューズのアウトソール張替え修理です。

実はこの靴、初めて当店へお持ちいただいたものではありません。
以前、ソールが加水分解してボロボロになってしまった状態で当店へご依頼くださいました。その際はオールソール交換で総合的に修理を行い、土台となるソール部分は新たにEVAスポンジで構築し直しました。

あれから時間が経ち、今回のご依頼はアウトソール部分の交換。つまり、靴が再びユーザーの生活に寄り添い、歩いた年月の証として摩耗が進んだ――その延長線上にある修理です。

靴修理において、「1回修理して終わり」ではなく、再び戻ってきてくれるということは、職人にとって何より嬉しい瞬間です。
靴が修理によって息を吹き返し、そしてまた活躍した証でもあるからです。


■ 修理前の状態確認

まずは靴全体の状態確認から始めます。

アッパー(甲革の部分)は丁寧に履かれており傷みも少なく、革の状態も良好。インソールの沈み込みや変形もほとんどありません。ユーザー様が大切に使われてきた様子が一目で分かります。

そして今回の主役となるアウトソールを確認します。

使用されていたアウトソールは、以前の修理時に取り付けたVibram(ビブラム)1319モデル。冬道での滑りに強く、アウトドア系・スノーエリアの靴にも採用されている実績あるパターンです。

ただ、雪国での使用や季節ごとの路面状況を考えると摩耗は避けられません。
アウトソールはすり減り、特に荷重が集中するカカト外側とつま先部は薄くなり始め、グリップ性能が低下している状態でした。

しかし、靴の重要構造である**ミッドソール(EVAスポンジのウェッジ構造)**は健在。前回の修理がしっかりと活きている証拠でもあります。


■ ソール構造と修理方針

ECCOは本来、メーカー独自の「ダイレクト・インジェクション製法」を採用しているブランドです。これは、アッパー(革)に直接樹脂を注入し、革とソールを一体化させる構造で、非常に優れた耐久性があります。

しかし、その素材がウレタン系である場合、避けられない問題があります。

それが――

《加水分解》

履いた年数や環境条件に関係なく、時間とともに素材が劣化し粉状に崩れてしまう現象です。

前回修理時にはその加水分解したソールをすべて取り外し、EVAスポンジをミッドソールとして再構築することで、同じ問題を繰り返さない仕様に変更しました。

今回の修理ではその土台を活かし、アウトソール部分のみ新しく張り替えるという方法を採用します。


■ 使用するアウトソール

Vibram 1319 冬仕様モデル(オレンジチップ)

今回使用するアウトソールは、前回と同じくVibram 1319
ただし今回は最新ロットのモデルであり、チップカラーが変更されています。

  • 前回モデル:ブルーチップ

  • 今回採用モデル:オレンジチップ

このカラーの違いは単なるデザインではなく、製造ロットの違いを示すものです。もちろん性能には問題なく、むしろ近年のモデルは素材改良が重ねられており、より安定性が向上している印象があります。

Vibram 1319の特徴は以下の通りです↓

  • ✔ 凍結路面対応の特殊ラバーコンパウンド

  • ✔ 雪踏み効果を高める深めのブロックパターン

  • ✔ 滑りやすい氷上でもトラクションを維持

  • ✔ 冬靴向けソールの中でも軽量クラス

雪国で生活されるY様にとって、この選択はまさにベストと言える仕様です。


■ 修理工程

ここから実際の作業工程を説明します。

① 古いアウトソールの除去

経年によって接着面が一部弱っている箇所があったため、専用工具とヒートガンを使い慎重に剥がします。剥がした跡のミッドソールは非常に綺麗で、前回の修理素材の安定性を再確認できました。

② ミッドソール表面の均しと下処理

接着力を確保するため、表面をフィニッシャーで均一に荒らし、洗浄剤で脱脂します。ここを丁寧に行うかどうかで、耐久年数が大きく変わります。

③ 新アウトソール仮合わせ・位置調整

靴によって微妙に左右の形状差や荷重癖があります。専用マーカーでラインどりしながらセット。

④ 接着作業

高性能靴用接着剤を、ソールとミッドソール双方へ塗布。
乾燥時間と圧着タイミングを管理し、加圧プレス機で固定します。

⑤ 仕上げ・最終点検

接着後、コバ(側面)を整え、防水性と美観を保つため仕上げ剤で保護。
最後に屈曲検査・圧着強度・接着面の視認チェック・靴バランス確認を行い完了です。


■ 完成・そして再び歩き出す靴へ

仕上がった靴は見違えるように引き締まり、アウトソールの存在感が冬靴らしい頼もしさを演出してくれています。

特に凍結路面や圧雪の上を歩く機会が多い地域では、靴底の性能が安全性そのものに直結します。
今回の修理により、グリップ性能は新品同様以上に回復し、安心して冬道を歩いていただける仕様になりました。


■ まとめ

  • 前回のオールソール修理により靴本体とミッドソールは良好維持

  • 今回は冬仕様Vibram 1319モデルへのアウトソール交換のみ

  • 最新ロットのオレンジチップ仕様

  • 建て付け・耐久性・滑り防止性能すべて向上

靴は消耗品ではありますが、適切な修理を施していくことで、単なる「道具」ではなく、人生を共に歩く相棒になります。

Y様、この冬も安心して足元から快適に、そして安全に歩いていただければ嬉しく思います。
また必要があればお気軽にお声がけください。


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浅口市 鴨方町 M様 和ゾーリ かかとゴム交換修理

浅口市 鴨方町 M様 和ゾーリ かかとゴム交換修理

— いずみ靴店 修理事例 —

今回ご紹介するのは、浅口市鴨方町にお住まいの M様よりご依頼いただいた和ゾーリのかかとゴム交換修理です。草履は日本の伝統的な履物であり、四季を通して履かれる方もいらっしゃいますが、特に夏場の外出用として愛用されている方も多いアイテムです。

和ゾーリは一般的なスニーカーや革靴とは異なり、構造や素材、製法が特殊です。そのため修理する際も、靴とは違った知識と技術が必要になります。
今回お預かりした草履は、長年大切に履かれてきたもので、かかとのゴム部分だけが劣化し割れている状態でした。特に湿気や経年変化による劣化でゴムが硬化し、歩行時にカチカチと滑るような感触が出てしまっていたとのことです。


■ 修理前の状態

お預かりした時点では、かかとのゴムがひび割れ、部分的に欠けてしまっていました。
和ゾーリに使われているかかとゴムは、通常の靴底素材と違い、クッション性・摩耗耐性・見た目のバランスが重視されています。しかしながら、長期間使用されたり、湿度の高い場所に保管されると、ゴムは次第に硬化し弾力を失ってしまいます。

さらに、ゴム部分に負荷が集中する 着地ポイントから崩れることが多く、今回もまさにその典型的な症状でした。

歩行していると気づかないうちにゴムが削れ、気付いた時には修理が必要な状態になってしまうケースは少なくありません。


■ 修理方法について

和ゾーリの修理は、ただ古いゴムを剥がして新しいものを取り付けるだけではありません。
使用されている台の材質、縫製方法、底材の接着方式などをみながら、元の構造にできるだけ負担をかけず修理を進める必要があります。

今回の修理では、まず古いかかとゴムを丁寧に剥がし、底面のバランスが崩れないよう形状を整えました。その後、和履きの草履に適した柔らかめの新しいゴムを選び、強力な接着処理を施し取り付けています。

接着後は圧着しながら固定し、完全に乾燥させるため一定時間置く必要があります。これによって使用中に剥離するリスクを大幅に減らすことができます。


■ 修理後の状態

交換後のかかとゴムは新品のようにきれいな仕上がりとなり、これまでよりも安定した歩行ができるようになりました。

草履の場合、かかとまで踏み込む歩き方をする方もいれば、前重心で歩く方もおられ、摩耗の進み方に個性が出ます。
M様の場合は歩行時にかかとがしっかり接地するタイプでしたので、今回の交換により履き心地が改善し、また長くご使用いただける状態になったと思われます。


■ 和ゾーリ修理の重要性

和ゾーリは修理できないと思われる方も多いですが、実は 多くの箇所が修理可能です。

例えば、

  • 鼻緒の交換や調整

  • かかとゴム交換

  • 底面補修(滑り止め加工など)

  • 表面素材の補強

など、適切な素材を選ぶことで、履き慣れた草履を長く履き続けることができます。

特に、今回のようなかかとゴム交換は草履修理の中でも依頼が多く、**「滑りやすい」「歩くと硬く感じる」「音がカツカツする」**といった症状が出てきたタイミングが交換の目安です。


■ 修理納期・費用について

和ゾーリのかかとゴム交換は、靴修理に比べ作業工程が特殊なため、状態や素材に応じて納期が変わります。
一般的には数日~1週間程度をいただいておりますが、お急ぎの場合は可能な範囲で対応いたしますので、ご相談ください。

費用については、素材・サイズ・構造により異なりますが、今回の修理では標準的な価格帯での施工となりました。


■ 最後に

靴や草履は消耗品ではありますが、直しながら丁寧に使うことで、より長く愛着を持って履き続けることができます。
特に和装用品や思い出の品、履き慣れたものは買い替えるより修理する方が良い場合も多くあります。

このたび修理をご依頼いただいたM様、誠にありがとうございました。
今後もお困りの際はお気軽にお持ち込みください。


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長野県 A様 NIKE エアフォース・ワン ソール内クッション交換修理

 

長野県 A様 NIKE エアフォース・ワン ソール内クッション交換修理

今回修理をご依頼くださいましたのは、長野県A様のNIKE・Air Force 1(エアフォースワン)です。
ナイキを代表する名作モデルであり、長年愛用される方の非常に多いスニーカーですが、その構造上避けられないトラブルのひとつが「ミッドソール内部のクッション素材の加水分解」です。

お預かりした状態を確認しますと、まず靴底の縫い目部分が浮き上がり、触れると白い粉状のものが溢れてくる状態でした。この症状は、外から見ただけではわかりにくいものの、内部クッションが崩壊している典型的なサインです。

加水分解は湿気や経年によって起こる化学反応で、ウレタン素材が空気中の水分と結合し、次第に柔軟性を失って破断→粉化していきます。ナイキのエアソール搭載モデルでは特に多く見られる症状で、内部構造が崩れてしまうと元のエアーバッグやクッション素材を再利用することはほぼ不可能になります。

今回も例外ではなく、内部を開いてみるとクッション部分は完全に粉状となり、本来の形状を保てていませんでした。ただ、エアバッグが使用されていた痕跡となる透明ビニール膜の一部が残っており、元々の構造が想像できる状態ではありました。


■ 分解工程 ― 内部損傷の原因確認

まずはソールとアッパーを慎重に分離し、ミッドソール内部へアクセスします。エアフォースワンは構造的に接着と縫製(オパンケ縫い)が併用されているため、ただ剥がすだけではなく縫製部分の処理が重要になります。

縫い上げ糸を切りながらソールを剥がしていくと、中から大量の粉が出てきました。クッション素材は完全に崩壊し、握れば崩れる程度の状態。これは、湿気・劣化・気候差などによる加水分解が進行し、素材本来の性能を失った典型例です。

ソール内部の粉を完全に除去する必要があるため、エアバッグ残骸・分解したクッション・接着剤片・埃まで、全てきれいに取り除きます。ここで掃除が甘いと新しい素材の密着性や内部安定性に影響が出るため、慎重に作業を進めます。

内部がすべて露出した段階で、今後どのような方法でクッション再構築を行うかを判断します。


■ 代替クッション素材 ― EVAスポンジの採用理由

オリジナルのエアバッグを再現することは構造上不可能ですが、重要なのは「履き心地を極力近づけること」と「今後同じ箇所が劣化しにくいこと」です。

そこで今回採用したのがEVAスポンジ素材

EVA素材には以下のメリットがあります:

  • 加水分解しない

  • ほどよいクッション性と反発性を持つ

  • 劣化がゆっくりで寿命が長い

  • 左右差・加重差に応じカット調整がしやすい

元のエアバッグとは構造は違いますが、実際の履き心地としては充分柔らかく、また歩行時の沈み込みや衝撃吸収性を確保できます。

内部構造は靴ごとに微妙な差があるため、ただスポンジを入れる訳ではありません。厚み調整・成形・屈曲ポイントの加工を行い、靴が元々持っている踏まずラインや踵のホールド性を損なわないよう調整します。

ここでミリ単位の加工が必要となるため、ハンドで削りながらフィッティングを調整。最終的に、歩行時の沈み込み・返り・荷重バランスが自然になるよう仕上げています。


■ 再セット・接着工程

成形したEVAクッションをミッドソール内部にセットした後、ソールを戻して接着固定します。接着剤の種類・塗布量・圧着時間などは靴の素材・用途に応じて変えています。焦って圧着すると後々の剥がれや履きジワの偏りが出るため、しっかり時間を置いて定着させます。

元通りソールが固定できたら、空気抜け・段差・縫いアタリをチェックし、構造的な問題がないことを確認します。


■ 縫製仕上げ ― オパンケ縫いによる補強

最後に、エアフォースワンを象徴する構造であるオパンケ縫いを施します。
外周をぐるりと囲むこの縫製は見た目の特徴でもありますが、構造的には強度のための縫いです。

接着のみでは経年で剥がれる可能性がありますが、このオパンケ縫いがあることでソール全体がしっかり固定され、 長期使用でも剥がれにくくなります。

縫い目の間隔・幅・縫いのテンションを調整しながら、元々の雰囲気を損なわないよう自然に仕上げています。


■ 修理完了 ― 再び歩けるスニーカーへ

修理前は粉化・内部崩壊で歩行時に沈み込みが生じ、履くこと自体難しい状態でしたが、修理後は内部構造が安定し、歩き心地も大きく改善されました。

オリジナルのエア構造とは異なるものの、実用性・耐久性はむしろ高くなっています。

「中身が崩れているスニーカーは修理できない」
そう思われる方は多いですが、適切な方法を選べばまだまだ履けます。

A様にもぜひ、また長く快適に履いていただければ嬉しく思います。


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神奈川県 S様 REGAL(リーガル)ローファ オールソール交換修理

神奈川県 S様 REGAL(リーガル)ローファ オールソール交換修理

今回お預かりしましたのは、神奈川県S様よりご依頼いただいたREGAL(リーガル)のローファです。リーガル特有のクラシックなフォルムと程よいボリューム感が魅力の一足ですが、長年ご愛用されたことによりアウトソール中央部が大きく割れてしまっています。

リーガルのドレスシューズやローファモデルに多く採用されているオリジナルソールは、耐摩耗性に優れ硬めの素材でつくられています。本来、長く使い続けられるよう設計されたものですが、素材の特性上、経年使用による硬化が進むと柔軟性を失い、写真のように「パックリと割れ」てしまうことがあります。今回のケースもまさにその典型例で、加水分解ではなく、素材硬化による物理破断でした。

ソールに割れが生じた時点で接着やパッチ補修のみでは強度確保が難しいため、今回はフルオールソール交換(ソール全交換)での対応となりました。


■ 分解工程 ― 丁寧に時間をかけて靴本体への負担を最小限に

まずは既存ソールの取り外しから作業スタートです。
ヒール部分にはブロックヒールが使用されていますので、ここから取り外し作業に入ります。ヒールは釘や接着剤で固定されているため、一気に外そうとするとアッパーや中底にダメージが及ぶ可能性があります。そのため、ゆっくりと慎重に力を分散させながら外していきます。

ヒールの取り外しが完了したら、次はアウトソールとアッパーを固定している縫い糸(出し縫い)部分を削りながら糸を切り離していきます。この縫い糸は底材の構造上、深い位置に埋め込まれているため、ただ取るのではなく「残すべき革」「除去すべき糸・古い接着剤」を見極めながら進める必要があります。

すべての糸を取り除いた段階で、古いソールを剥がし、中底や周辺部に残った糊跡や破片をきれいに清掃していきます。ここでしっかり処理しておくことで、交換後のソールが平滑に密着し仕上がり精度と耐久性が大きく変わります。こうした一見地味な工程こそ、修理品質を左右する大切なステップです。

これで下準備完了です。


■ 新しいソール素材 ― Vibram430の選定理由

今回採用したソールは、Vibram(ビブラム)430

Vibram430は、クラシックなラグパターン(通称ミニラグ)を採用したモデルで、ドレスシューズ・ワークシューズどちらにも馴染む万能タイプです。グリップ力に優れつつも、厚みが過剰にならず、履き心地やスタイルバランスを損なわないことが特徴です。

また、今回の靴のように硬化破断を起こしたオリジナルソールとは異なり、**合成ラバー素材で適度な柔軟性を持つため、同じように割れる心配がほとんどありません。**耐摩耗性も高く、普段履きとしてガシガシ使用される方にも向いた選択肢です。


■ 接着・縫製工程 ― 機能性と耐久性を高める仕上げ

ソールの位置合わせを慎重に行い、ズレがないことを確認したうえでボンド接着を行います。ここでも急がず、圧着時間を十分に確保しながら確実な接着強度を確保します。

次にヒール部分。
今回の修理では釘打ちではなくビス止めを採用しました。これは経年時の緩み耐性を向上させるためで、特に歩行時に負荷が集中するヒール部では有効な補強方法です。ソール交換後の耐久性という観点からも大きなメリットがあります。

固定が完了したら、クラシックシューズの基本でもある**出し縫い**を施します。縫い目を美しく均等に入れることで強度と見た目の完成度が両立します。この工程があることで、接着のみの靴に比べ耐久性・修理可能性が高まるのです。

最後にVibram430のヒールベースを取り付け、コバ(側面)を整え、ワックス仕上げで全体を調整し、ようやく完成となります。


■ 修理後の仕上がりと今後の安心感

リペア後の靴は、外観のバランスを崩さず、より信頼性の高い構造へとアップデートされています。歩行時の屈曲にもしっかり追随するため、以前のように大きく割れる症状が起きる心配はまずありません。

今回の修理でREGAL本来の履き心地を損なうことなく、むしろ実用性と快適性が高まり、これから先も長くご使用いただける状態に仕上がりました。大切な靴を修理し、また履き続けてもらえることは修理屋としてやはり嬉しい瞬間です。

S様、この度はご依頼ありがとうございました。
またメンテナンスや追加修理が必要になった際は、気軽にお声がけください。


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大阪府 K様 Columbia(コロンビア)トレッキングシューズ ソール張替え修理レポート

大阪府 K様 Columbia(コロンビア)トレッキングシューズ
ソール張替え修理レポート
―― Vibram S2480 ANTRONAソールカスタム ――

今回ご依頼いただいたのは、大阪府にお住まいのK様よりお送りいただいた Columbia(コロンビア)製のトレッキングシューズ です。しっかり履き込まれた相棒のような雰囲気で、これまで数々のアウトドアシーンを共にしてきたことが伺える一足でした。

■ご依頼内容と状態確認

お客様からのお問い合わせ時点での症状としては、

  • アウトソール全体の摩耗

  • 一部接着の剥がれ

  • 経年劣化によるグリップ性能低下

といったトレッキングシューズではよく見られる症状が出ていました。特にアウトソールのゴム素材は使用環境や保管状態によって劣化具合が大きく変化し、摩耗していなくても硬化して滑りやすくなることがあります。

今回のご相談でも「まだアッパーは状態が良く、履き心地も気に入っているため、できることならこの靴をまだ使いたい」というご希望をいただきました。

近年はアウトドアブランドのソール仕様がモデルごとに細分化され、貼り替えが困難なものも増えていますが、今回は状態・仕様ともにソール交換可能な構造でしたので、オールソール交換にて対応させていただくことになりました。

■特徴的なトゥガード形状とソール選定

今回のColumbiaシューズの大きな特徴として、つま先部分に立体成形されたトゥガードが採用されていることが挙げられます。

アウトドア用途では、岩場・登山道・アスファルトなど多様な路面での衝撃保護が求められるため、こうした立体形状のトゥガード構造はとても有効です。ただし、ソール交換の観点から見ると、この形状がジャストフィットする交換用ソールが必要となるため、

汎用ソールでは適合しない場合がある

という点がネックになることがあります。

しかし今回は幸いにも、形状が近く適合性が高い Vibram(ビブラム)製 S2480 ANTRONA ソール を調達することができました。荒れた路面でのグリップ性能が高く、全天候型のアウトドア用途に適したソールです。

■交換前の分解工程

ソール交換作業はただ剥がして貼り替えるだけではありません。特に登山靴・アウトドアシューズは接着面が複雑で、層構造が多いため、慎重に工程を進めていきます。

  1. まずは古いソールの接着を温度管理しつつ剥離。

  2. アッパーとの接合面を傷つけないよう、工具で段階的に分離。

  3. 接着剤の残り・加水分解した素材・段差を徹底的に除去。

  4. 新しいソールが精度良く付き、強度を確保できるよう研磨処理。

この下処理が甘いと、後々の剥がれや浮きの原因になります。特にアウトドア用途の靴は負荷が大きく、定期的に水分・泥・砂利にさらされますので、接着技術は非常に重要です。

■新しいソールの装着

剥離作業と下処理を終えた後、Vibram S2480 ANTRONAソールのフィット確認を行い、接着作業に進みます。

今回採用したソールは黒色仕様
元々装着されていたソールはベージュ系でしたが、残念ながらメーカーラインナップに同色が無く、代替としてブラックを採用しました。

ただ、実際に仕上がった姿を見ると、

黒ソールのほうが引き締まり、精悍さ・アウトドアギア感が増しました。

色違い交換が不安だった場合でも、実物を見ると「むしろこっちが正解では?」と思う仕上がりになることが多い典型例です。

■修理完了と今後のケアについて

全工程を経て仕上がったシューズは、グリップ力・安定性・履き心地が復活し、まさに「また使えるギア」として蘇りました。

アウトドア用シューズは定期的なメンテナンスが寿命を伸ばす最重要ポイントです。特に今回のような修理後は、

  • 使用後の泥落とし

  • 直射日光・車内放置を避けた保管

  • 必要に応じた防水スプレー活用

といったケアをしていただくとより長く活躍してくれます。


■最後に

K様、この度は大切な相棒を当店へお預けいただき、誠にありがとうございました。
新しいソールで再びフィールドへ――しっかり踏みしめて、これからも思い切り歩いてください。


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