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倉敷市 A様 REDWING Beckman(レッドウィング ベックマン) ハーフソールラバー交換修理レポート

倉敷市 A様 REDWING Beckman(レッドウィング ベックマン)

ハーフソールラバー交換修理レポート

― 加水分解した塩ビ系ソールを撤去し、耐久性の高いVibram2333で再構築 ―

今回お預かりしたのは、倉敷市のA様よりご依頼いただいた REDWING(レッドウィング)Beckman(ベックマン)
ワークブーツの代表格でありながら、クラシックで上品な印象を持つ人気モデルです。長く愛用されている方も多く、修理のご依頼も頻繁に届くモデルですが、今回の症状は 「ハーフソールラバーの加水分解」 によるものです。

ベックマンのハーフソールラバーは、モデルや年代によっては 塩ビ系素材(PVC) が使用されており、この素材は経年や使用環境により 加水分解 を起こしやすいという特徴があります。見た目にはまだ使えそうに見えても、触るとベタつきが出たり、指で押すと崩れるような感触になったり、細かいひび割れが広がってくることが非常に多いです。

A様のベックマンも、まさにその典型的な状態で、「突然ベタついてきた」「歩くと黒い粉や細かい破片が落ちる」といった症状をきっかけに修理をご依頼いただきました。


■ 状態確認 ― 加水分解が進行したPVC素材の特徴

ブーツをお預かりしてまず状態を確認したところ、

  • ハーフソールラバー全体ががっちり靴底に密着しているように見えるが、触ると柔らかく粘り気がある

  • 表面に白いくもりが出ており、粉を吹いたように劣化が進んでいる

  • 縫い付けの糸周辺からひび割れが広がっている

  • 歩行時にラバー片が少しずつ剥離・脱落している形跡あり

という状態でした。

PVC系素材は「加水分解しない」と誤解されることもありますが、実際は配合によってさまざまな劣化を起こします。ベックマンのハーフソールに使用されるタイプは、湿度や温度変化に弱く、長年の使用で粘化・崩壊が起こりやすい部類に入ります。

強度が落ち、グリップ力も低下するため、安全面から見ても早めの交換が適切です。


■ 修理工程 ①:縫い付けの糸を丁寧に除去

まずは既存のハーフソールを撤去するために、外周を走る 出し縫い(アウトステッチ) の糸をカットしていきます。

出し縫いはソールの強度を支える大事な構造のため、糸を切る際はブーツ本体のレザーを傷つけないよう慎重に進めます。ベックマンはレザー質が良いため、糸の下にしっかり革が沈み込み、縫い目の跡が残っています。こういった縫い溝を壊さないよう、専用工具を使って少しずつ糸を解いていきます。

糸が全周外れたら、ハーフソールラバーを剥がす作業に移ります。


■ 修理工程 ②:加水分解した旧ソールの完全除去

劣化したハーフソールラバーは、剥がそうとすると細かくちぎれながら崩れていきます。加水分解が進んだソール特有の状態で、無理に引きはがすとブーツ本体のミッドソールまで傷つけてしまうため、慎重に時間をかけて除去します。

  • スクレーパー

  • ヒートガンによる温度調整

  • ラバー専用クリーナー

これらを組み合わせ、ベタつきを取り除きながら 「新品のラバーがしっかり接着できる下地」 を整えます。

加水分解を起こしたソールを上から貼り替えるだけでは、接着が弱くすぐ剥がれてしまうため、この「下地処理」こそが品質を左右する最重要工程です。


■ 修理工程 ③:加水分解しない合成ゴム ― Vibram2333 を使用

新しく取り付けるのは Vibram(ビブラム)2333
耐久性の高い合成ゴムで、以下の特徴があります。

  • 加水分解しない素材

  • 摩耗に強い

  • グリップ力が高く滑りにくい

  • 冬場の路面でも硬化しにくい

  • ワークブーツにの相性が非常に良い

ベックマンのクラシックな雰囲気を損なわないデザインで、機能性も高く、修理後の満足度の高い素材です。

形状に合わせてハーフソールをトリミングし、靴底と完全に密着するよう圧着して貼り付けます。


■ 修理工程 ④:出し縫い(アウトステッチ)で強度アップ

ソールを貼り付けたら、次はベックマンの特徴でもある 出し縫い

ハーフソールを接着だけで固定すると、使用環境によっては剥がれが起こることがあります。そこで、外周をミシンで縫い付けて補強し、強度と安定性を確保します。

  • 専用の八方ミシンを使用

  • 革の縫い溝に沿って、美しく均一にステッチを落とす

  • ミッドソールを痛めない針の角度調整

  • 糸はベックマンの雰囲気に合わせた太めの糸を使用

出し縫いが入ることで、足裏がしっかり安定するだけでなく、見た目にもクラシックで引き締まった印象になります。


■ 修理工程 ⑤:コバの着色と仕上げ

最後に、ソール側面(コバ)を磨き、着色して整えます。

加水分解したソールを取り除いた際にできた細かな傷や段差を、サンドペーパーで均し、着色剤とワックスで自然なツヤを持たせていきます。
新品時のように艶やかでしまったコバに整えることで、修理跡が目立たず、全体が美しく引き締まります。


■ 完成 ― これからも長く履けるベックマンへ

ハーフソールを 耐久性の高いVibram2333へ交換し、出し縫いでしっかり補強 することで、加水分解前よりもタフで実用的な状態へリフレッシュされました。

A様にも「新品のようにしっかりした踏み心地になった」と大変喜んでいただけました。

ベックマンはアッパーの革質が非常に良いため、ソールを適切に交換しながらメンテナンスすれば、10年・20年と長く履き続けることのできる名靴です。今回の修理で靴底の寿命は大幅に延び、これから再び活躍してくれることでしょう。


■ ハッシュタグ

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埼玉県 I様 Joya(ジョーヤ)ウォーキングシューズ オールソール交換修理 詳細レポート

埼玉県 I様 Joya(ジョーヤ)ウォーキングシューズ

オールソール交換修理 詳細レポート

今回ご依頼いただいたのは、埼玉県にお住まいの I 様よりお送りいただいた Joya(ジョーヤ)製ウォーキングシューズのオールソール交換修理です。ジョーヤといえば、独自技術を採用した「非常に柔らかく、足に優しい履き心地」が大きな特長で、特に長距離の歩行や足・膝・腰への負担軽減を重視されるお客様から高い支持を得ているブランドです。しかし、その快適さの源でもあるミッドソールに採用されたポリウレタン(PU)素材は、避けて通れない「加水分解」という経年劣化を起こしやすいという弱点を持っています。

I 様のシューズも例外ではなく、届いた時点でミッドソール部分には大小の亀裂が入り、一部は完全に崩れて粉状になっていました。ポリウレタンは使用頻度に関わらず、湿気や空気中の水分によって劣化してしまうため、外見は綺麗でも突然ボロッと割れてしまうことがあります。まさに今回のケースがそれでした。


■ 修理方針の決定

ジョーヤのミッドソールは、ブランド特有の丸みを帯びた湾曲形状と厚み、そして柔らかいクッション性を実現するため、特殊な製造工程と素材が組み合わされています。この独自性ゆえに、純正と同じポリウレタン素材での修理は不可能であり、またメーカーでも基本的にソール交換対応は行っていません。

そのため当店では、劣化したPUミッドソール部分をすべて除去し、代替として **EVAスポンジを複数層に分けて積層し、成形していく「積み上げ方式」**で補修を行う方法を採用しています。EVAは軽量で耐候性も高く、ポリウレタンのような突然の加水分解を起こしません。長期的に安定した素材として靴修理では広く使われており、スポーツシューズのミッドソールにも多用されています。

ただし、EVAは素材特性が異なるため以下の点に留意が必要です。

  • 完全に純正の形状を再現することはできない

  • 柔らかさの質が変わるため、履き心地は必ず変化する

  • 仕上がりの見た目も純正と同一ではなくなる

I 様にも事前にその点を丁寧に説明し、ご理解をいただいたうえで作業を進めさせていただきました。


■ お客様からのご希望「EVAスポンジの配色指定」

今回 I 様からは、EVAスポンジの積層部分に 色の組み合わせについてのご希望をいただいていました。積み上げ式の修理は、機能性を回復させるだけでなく、配色次第でデザインとしても楽しいアレンジが可能です。

お送りいただいたご希望をもとに、

  • シューズ本体のカラーと相性が良い

  • 層の境目が美しく見える

  • 実際の歩行時に強度的に問題がない

これらを考慮しながら最適なEVA素材を選び、各層をミリ単位で整形しながら組み上げていきました。

EVAの積層は単純に貼り合わせるだけではなく、元のジョーヤの丸み・反り具合・つま先の立ち上がり・かかとの傾斜角度など、歩行機能に影響する要素を細かく調整しながら行います。この工程だけでも数時間を要する、非常に手作業性の高い作り込みです。


■ 劣化ミッドソールの除去と下処理

まずは劣化したPUミッドソールをすべて取り除きます。劣化が進んでいる状態では、触っただけでボロボロと崩れ落ちてしまうため、慎重に剥離しながら靴本体のレザーや中底を傷めないように作業を進めていきます。

ミッドソールがなくなると、靴本来のバランスが失われるため、中底の平面を整えて補強を行い、後の積層作業でズレが起きないように下準備をします。この下処理が不十分だと仕上がりの形状が歪んだり、歩行時の衝撃が変な方向に掛かって足に負担が出るため、細心の注意で進めました。


■ EVAスポンジの積層と成形

用意した複数色のEVAスポンジを、指定の配色順に貼り合わせ、専用の刃物とグラインダーで丸みを帯びたラインに削り出していきます。 この作業が最も技術を要する部分で、元のジョーヤの形状を目指しつつも、EVAの特性に合わせて強度と柔軟性のバランスを調整します。

特に、

  • 土踏まず周りのアーチ形状

  • かかとの着地面の角度

  • つま先の蹴り出しライン(トー・スプリング)

これらは歩行に直結するため、経験を頼りに慎重に仕上げていきます。

積層後は全体のバランスを確認し、左右差が出ないよう調整。配色のラインも綺麗に揃うよう、細かい面出し作業を行いました。


■ アウトソールは TOPY社製「クロコ柄ソール」

アウトソールには、フランス TOPY(トピー)社製のクロコ柄ソールを採用しました。TOPY社のラバーソールは高い耐久性と柔軟性を兼ね備えており、今回のようにデザイン性を重視したいケースでも非常に相性が良い素材です。

クロコ柄の立体的な凹凸は滑りにくさにも貢献し、ウォーキング用途としても性能を十分に発揮してくれます。EVAスポンジとの接着相性も良いため、長く安心して履いていただける構成に仕上がりました。


■ 仕上げと最終確認

アウトソール貼り付け後、周囲を丁寧に面取りし、側面の処理を整えます。ジョーヤのような丸みのある靴は、側面の仕上げが見た目の印象を大きく左右するため、滑らかな一体感が出るよう慎重に仕上げました。

最終的には、

  • 左右の高さ・角度・重心位置のチェック

  • 実際の歩行動作を想定したしなり具合

  • 接着面の密着状態の確認

これらをクリアしたうえで、磨きと仕上げを施し、ようやく完成となります。


■ 修理完了

今回の修理では、オリジナルのポリウレタンミッドソールの柔らかさとは異なるものの、EVAスポンジによる積層で安定感のある履き心地と耐久性を両立しました。

お客様からご希望いただいた配色も美しく反映でき、見た目の新鮮さも加わった仕上がりになっています。アウトソールの TOPY クロコ柄ソールも機能性・デザイン性ともに相性が良く、今後のウォーキングライフをしっかり支えてくれるはずです。

I 様がまた快適に歩行を楽しんでいただけることを願っております。
この度は当店へ修理をご依頼いただき、誠にありがとうございました。

総社市 I様 ニューバランス993 オールソール交換修理 (Vibram 762K / 一体型カップソール仕様)

総社市 I様

ニューバランス993

オールソール交換修理

(Vibram 762K / 一体型カップソール仕様)

ニューバランス993といえば、アメリカ製ランニングシューズの中でも特に完成度の高いモデルとして人気の高いシリーズです。独自のABZORBクッションやENCAP構造がもたらす柔らかな履き心地、そして「990番台らしい」クラシックなデザイン性を兼ね備え、今も多くのファンを持つ一足です。しかし、その優れた履き心地を支えるヒール構造の一部にはポリウレタン素材が用いられており、経年による加水分解(素材崩壊)が避けられないという問題があります。

今回ご依頼くださった I様のニューバランス993も、まさにその“加水分解”が進行し、特にヒール部分のソールが大きく崩れ落ちていました。ポリウレタンは軽量で弾性が高い反面、湿気や加水分解に弱いという特性があり、経年劣化によって突然ボロボロと崩れてしまいます。

■ 状態確認

実際に靴を手に取って確認すると、ヒール部分のポリウレタンはすでに形を保てないほどに崩壊しており、わずかに触れただけでも粉のように崩れていく状態でした。

一方で前足部のスポンジ系ミッドソールは比較的しっかり残っているように見えましたが、ニューバランス993のオリジナル構造は「前後が一体的に動くことでクッション性を発揮する」タイプのため、後部だけを新品交換し前部を残したままの修理は、強度バランスの観点から非常にリスクが高くなります。

また、部分交換を行った場合の接合強度や、前後で異なる素材を組み合わせることによる“ねじれ”も靴の寿命を縮めてしまいます。
そのため I様にも「前足部を含めた一体型カップソールへの交換」という最も信頼性の高い修理方法をご提案し、ご了承いただきました。


■ 3種類のカップソール候補を選定

カップソール交換は、単純に「サイズが合えば付けられる」というものではありません。
スニーカーの形状、土台のカーブ、踏まずの深さ、横幅、接地面の角度など、細かい部分のマッチングが必要で、ソールの選定・加工は非常に重要です。

今回は I様とのご相談のうえで、以下の3種類のカップソールを候補として提示しました。

  1. Vibram 762K(第1候補)

  2. Vibram186C(第2候補)

  3. Vibram893C(第3候補)

「もし取り付けが困難だった場合に即座に次点案に切り替えられるように」と、第3候補まで選んでいただく形にしました。ニューバランスは本来のソール形状がやや独特で、スニーカーの中でも互換の難しい部類に入るため、このような準備は非常に重要になります。

実際に仮合わせを行ったところ、幸いにも 第1候補の Vibram 762K が非常に良い相性でフィット。ミッドソールの厚み、踏まずのアーチ、前後の高低差ともに自然で、元の履き心地に近い形での修復が可能と判断できました。


■ Vibram 762K について

Vibram社の説明では、このソールは元々 トレイルランニング用 に開発されたモデルとのこと。

ただし I様の靴に使用した 762K は、アウトソール配合が タウンユース向けの「XS TREK」 仕様に改良された特別モデルです。
XS TREK は滑りにくさと柔軟性を両立させた万能ラバーで、普段履きだけでなく軽いアウトドア、ジョギング、ウォーキングにも対応できる幅広い性能を持っています。

さらに、762K の特徴として

  • 厚みのある凸凹形状のアウトソール

  • クッション性の高い EVA ミッドソール

  • 靴の踏まずをホールドする TPU サイドパーツ

これらが一体となった 「総合性能の高いカップソール」 である点が挙げられます。

特にTPU(熱可塑性ポリウレタン)パーツは、柔軟性と耐久性を併せ持ち、踏まず部分のねじれを防ぎつつ自然な歩行をサポートしてくれます。

元のニューバランス993とは構造が異なるものの、
“屈曲性は損なわず、安定性はむしろ向上する”
という良いバランスで仕上がるため、カスタムとしても非常に人気の高いソールです。


■ ソール交換作業の流れ

修理工程は以下のとおり丁寧に行いました。

● 1|オリジナルソールの完全分解

加水分解した部分はすべて除去し、残っているスポンジ素材も含めて“土台となる部分”をフラットに整えます。加水分解は一見ヒール部分から始まっていても、前方部分にも細かな劣化が進んでいる場合が多いため、靴全体をまんべんなくチェックします。

● 2|接合面の整形

カップソールは土台との相性が重要なため、靴の底面ラインとソールの形を細かくすり合わせます。特に踏まずの角度は2mm違うだけで履き心地が変わるため、削り・微調整を何度も繰り返します。

● 3|圧着・成形

専用のプレス機と手加工を併用し、ソールを立体的に密着させていきます。
ニューバランスのアッパーは柔らかいため、圧をかけ過ぎないよう慎重に調整して作業を進めます。

● 4|サイドの最終調整

カップソールの側面ラインがアッパーと自然につながるよう、細かな処理を行います。特にTPUパーツの部分は硬いため、小さな段差でも違和感につながるので入念に調整を行いました。


■ 完成後の状態

仕上がりは非常に自然で、アッパーとのバランスもよく、I様の993が新品のような姿を取り戻しました。
Vibram 762K の厚みと反発力により、着地時の安定感が増し、オリジナルの柔らかいクッション性とは違う方向性ではありますが、歩行の“前へ進む力”が感じられる履き心地になったと思います。

また、XS TREK 配合のおかげで、
ウォーキングはもちろん、軽いジョギングにも安心して使える仕様 になっています。


■ I様、この度はご依頼ありがとうございました

ニューバランス993は構造上、ソール交換が難しいモデルのひとつですが、今回のように カップソール交換で新たな履き心地を得るカスタム修理 はとても相性の良い方法です。

これからもまだまだ長くご愛用いただける一足として、ぜひ活躍させていただければ幸いです。

大阪府 Y様 Mizuno(ミズノ)ゴルフシューズ ヒール交換およびメスネジ取り付け修理

大阪府 Y様 Mizuno(ミズノ)ゴルフシューズ
ヒール交換およびメスネジ取り付け修理

今回ご紹介するのは、大阪府Y様よりご依頼いただいたミズノ製ゴルフシューズの修理事例です。ゴルフシューズは一般的なスニーカーやビジネスシューズとは異なり、芝上でのグリップ力や体重移動時の安定性が強く求められるため、ソール構造も複雑で、修理には専門的な判断と技術が必要となります。特に近年のゴルフシューズはメーカー独自のスパイク構造を持ち、素材にも樹脂・ウレタン・EVAなど複数が組み合わされているため、加水分解やパーツ破損が起こりやすい特徴があります。

今回お預かりしたシューズも例外ではなく、ヒール部分のスパイクがプレートごと脱落した状態でご持参いただきました。まずは破損の原因を確認し、構造を読み解いた上で、いかにオリジナルのイメージを損なわず、なおかつ長期使用に耐える補修を施すかを考えながら作業を進めていきました。


■ 破損状態の確認:ヒールプレートがスパイクごとなくなった状態

お預かりした際、ヒール後部のスパイクユニットが丸ごと脱落している状態でした。本来なら、ヒール部には3本の“下駄”のような樹脂パーツが横並びで配置され、その上にトップリフトとしてのヒールゴムプレートがボンドで接着されています。そのプレートの上にスパイクが取り付けられている構造です。

しかし今回、長年の使用と素材の経年劣化、特にボンドの劣化が重なったことで、そのトップリフトプレートが「3本の下駄」ごと外れてしまったものと思われます。スポーツシューズに多用されるウレタン・EVA・樹脂素材は、見た目が比較的きれいでも内部では劣化が進んでいる場合があります。特に接着を支えるボンド層が粉状に崩れてしまうと、外観の傷みが少なくても突然パーツが剥がれるケースも珍しくありません。


■ 修理方針:構造を再構築し、強度と再現性を両立する

オリジナルは「3本の樹脂下駄の上にトップリフトプレートをボンドで固定する」という構造でしたが、この構造は長年の使用にはやや弱く、再接着しても同じ箇所が再び剥がれるリスクがあります。また、脱落したトップリフトパーツは大部分が欠損しており、元の部材をそのまま使うことは不可能でした。

さらに問題となったのが、スパイクを取り付けるために必要な「メスネジ」の構造です。純正と同じメスネジをゴム底に直接埋め込むことは難しく、単純に新しいトップリフトゴムを取り付けてもスパイクの固定ができない状態でした。

そこで今回の修理方針としては以下の3点を重視しました。

  1. ヒール構造を一から作り直すこと

  2. スパイク装着のためのメスネジを確実に固定できるベースを作ること

  3. オリジナルの見た目や高さのバランスをできるだけ再現すること

単純な接着修理ではなく、構造全体の再構築が必要な内容となります。


■ 作業工程①:EVAスポンジでベースを積み上げ、下駄部分を補強

まずはヒール部のベースとなる部分をEVAスポンジで積み上げます。EVAは軽量でクッション性があるだけでなく、加工性が非常に良いため、ゴルフシューズのように複雑な荷重が掛かる靴の補修では大変有効な素材です。

積み上げたEVAは接着後、元の形状に合わせて削り込み、ヒール形状が自然に見えるよう整えます。

次に、オリジナル構造の「3本の下駄」にあたる部分を補強するため、前後2箇所にビスを打ち込み固定しました。元の構造は接着のみで支えられていましたが、スポーツ時の横揺れや体重移動を考えると、ビスによる補強は非常に有効です。これにより、ヒールゴムを取り付ける“土台”が強固になり、再び脱落するリスクを大幅に減らすことができます。


■ 作業工程②:メスネジをセットしたトップリフトゴムを新たに製作

ベースが完成したら、次にスパイク取り付け用のメスネジを組み込んだトップリフトゴムを作ります。市販のトップリフトにはスパイク用メスネジが入っていないため、単純に交換するだけでは用途を果たせません。

今回使用したメスネジは「インチネジ対応タイプ」です。
お預かりしたシューズの残存スパイクは“クイックタイプ”で、現在このタイプの純正スパイクおよびメスネジは入手が難しいため、現実的な選択肢としてインチネジ用メスネジに仕様を変更しました。

トップリフトゴムを適切な厚みにカットし、メスネジを確実に固定するための下処理を行った後、専用の治具で真っ直ぐかつ強固に埋め込みます。斜めに取り付いてしまうとスパイクがねじ込めないため、ここは特に慎重な工程となります。


■ 作業工程③:トップリフトゴムをベースに取り付け、全体の高さとバランスを調整

メスネジを組み込んだトップリフトが完成したら、先ほどEVAで作ったベース部分に取り付けます。接着だけでなく、下駄構造との整合性を取りつつ、ビス補強した箇所と干渉しないように位置を調整しながら慎重に固定していきます。

今回は構造上、どうしても元の状態よりやや厚めの仕上がりとなりました。しかし、実際の見た目や全体の高さバランスは可能な限り元に寄せるように調整しており、不自然さのない自然な仕上がりとなっています。

ゴルフシューズの場合、ヒール構造が大きく変わるとスイング時の安定性に影響するため、単純に「似た形にする」だけでは不十分です。実際に左右を比較し高さが揃っているか、立った時の接地バランスが崩れていないかなど、細かい点まで確認して仕上げています。


■ 完成後の状態

本来のクイックタイプのスパイク方式とは異なるものの、インチネジタイプのメスネジを搭載したことで、今後のスパイク交換も問題なく行えるようになりました。また、EVAベース+ビス補強により、オリジナル以上に強度が向上し、再脱落のリスクも大きく低減しています。

見た目も大きく違和感のない仕上がりとなり、Y様にも満足いただける状態に復元できたと思います。

ゴルフシューズは構造が特殊なため、メーカー修理が受けられない場合やパーツ欠損がある場合でも、工夫次第でしっかりと補修が可能です。同じような「ヒールごと脱落」「スパイク周りの破損」などでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。


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静岡県 O 様 Clarks Nature2(クラークス ネイチャー2) ― オールソール交換修理の詳細記録 ―

静岡県 O 様 Clarks Nature2(クラークス ネイチャー2)

― オールソール交換修理の詳細記録 ―

今回ご依頼いただいたのは、静岡県 O 様よりお預かりした Clarks(クラークス)の人気モデル「Nature2(ネイチャー2)」 のオールソール交換修理です。

クラークスの中でも屈指の履き心地を誇るネイチャーシリーズですが、その独特な構造ゆえに、ソール交換には高度な判断と手作業が求められる難易度の高い修理となります。

お預かりした靴は、アッパーはまだ十分に使用できる状態ながら、アウトソールが塩ビ系素材特有の加水分解を起こし、割れや崩れが全体に広がっている状態でした。

ソールを指で押すとパラパラと細かく崩れてしまう箇所もあり、このままでは歩行時のトラブルや転倒の危険性もあります。


■ ネイチャー2特有の構造と修理が難しい理由

Nature2 の構造で最も特徴的なのが、

  • アッパーがアウトソールに直接縫い付けられていること

  • 中底(インソールを支える土台)が存在しないこと

  • アウトソール側に深い凹みが作られ、その凹部に厚手のスポンジ付きインソールがはめ込まれる構造

という、一般の製法とは大きく異なる仕組みです。

通常の靴は「アッパー → 中底 → ミッドソール → アウトソール」という層構造になっていますが、ネイチャー2には中底がなく、アウトソールが中底の役割の大半を担っているといえます。そのため、アウトソールが劣化してしまうと、単純な張り替えでは元の構造を再現できず、履き心地も大きく損なわれてしまいます。

さらに、アウトソールの凹みにぴったり収まる専用インソールも、この構造に合わせて設計されているため、他の靴のように汎用的なインソールや中底を組み合わせる方式では対応できません。

このように、ネイチャー2のオールソール修理は「構造をどう再構成するか」が大きな課題となります。


■ 今回採用した修理方針

〜 特殊構造を“通常のステッチダウン製法”へと再構築 〜

O 様の靴はアウトソールが完全に崩壊していたため、元の構造を生かす修理は現実的ではありませんでした。そのため今回は、

● クラークス独自構造 → 通常のステッチダウン方式へ作り替える
という方向で全体構造を再構築し、丈夫でメンテナンス性の良い靴に作り変える方法を選択しました。


■ 修理工程の詳細

1. アウトソールの分解と清掃処理

まずは加水分解したアウトソールをすべて取り除きます。劣化が進んだ塩ビ系素材は触れるとパリパリと崩れ、靴の内部にも粉状の破片が入り込んでいるため、ブラシや器具を使って丁寧に掻き出します。

アッパー側の縫い付け跡や、素材が疲れている部分を確認しながら、ミシンで再縫製できる状態まで慎重にクリーニングを進めます。


2. 本革の中底を新設し、アッパーに縫い付ける(出し縫い)

ネイチャー2には本来存在しない中底を、今回は新たに本革で製作します。耐久性とコシ、そして履き馴染みを考えて、厚みと硬さのバランスがとれた牛革を採用。

これをアッパーにしっかりと「出し縫い(外縫い)」で縫い付けます。
この工程によって、靴全体の構造は 「ステッチダウン製法」 に近い形へと変わります。折り返したアッパーを外側へ広げ、そこを縫い止めることで強度と安定性が生まれ、今後のソール交換も容易になります。

元の特殊構造とは違うものの、「末永く履ける靴にする」という観点では大変有効なリメイクです。


3. インソールの厚み調整(スポンジ除去)

中底が新設されたことで、靴内部の容積が以前よりも狭くなります。このまま元のインソールを入れると 足が圧迫され、履き心地が悪くなる ため、インソール裏面の厚手スポンジを取り除き、適切な厚みに調整します。

ネイチャー2の履き心地の要である柔らかさを損なわないよう、表面のレザーは残しつつ、裏のクッション材だけを慎重に薄く削り取ります。


4. 選択したアウトソール:Vibram 2668 を接着

今回はアウトソールに Vibram(ビブラム)2668 を採用しました。スポンジ系素材ながら、

  • しっかりとしたグリップ力

  • 長期間使用してもヘタレにくい耐久性

  • クラークスの雰囲気を損なわない柔らかな見た目

という特徴があり、ネイチャーの履き心地を継承しつつ、より長く歩ける靴に仕上がるソールです。

中底にしっかりと接着し、形を整え、側面ラインも美しく仕上げていきます。


■ 修理完了後の状態と履き心地

今回の修理によって、O 様の Nature2 は

  • 劣化しやすい塩ビ系アウトソールから、耐久性の高いビブラムソールへ

  • クラークス独自の特殊構造から、堅牢でメンテナンスしやすいステッチダウン方式へ

  • インソール調整により、履き心地は元の柔らかさをキープ

という、大きなアップデートを経て生まれ変わりました。

構造を変えることで、今後の修理やオールソール交換も容易になり、末長く愛用いただける仕様になっています。仕上がりを手に持つと、靴としての剛性感が高まりつつも、足を入れた瞬間の柔らかさはしっかり残っており、まさに「見えないところが進化した」靴と言えるでしょう。

O 様にも、これまで以上に快適に歩いていただけるはずです。


■ 最後に

ネイチャー2のように特殊構造の靴は、通常の修理店では「対応不可」と判断されることも多く、オーナー様が困ってしまう例も少なくありません。しかし、構造を理解し、適切に再構築すれば、むしろ以前より強靭で長持ちする靴へと生まれ変わらせることも可能です。

今回の修理が、O 様にとってこれまで以上に愛着の湧く一足となり、また楽しく歩いていただけるきっかけになれば大変嬉しく思います。


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東京都 T様 クラークス デザートトレック オールソール交換修理

東京都 T様 クラークス デザートトレック オールソール交換修理

― 生ゴムソールの劣化を乗り越え、Vibram4014白で新たな一歩へ ―

今回ご依頼いただいたのは、東京都にお住まいのT様よりお預かりした Clarks(クラークス)・デザートトレック
英国のカジュアルシューズを代表する名作として知られ、1970年代の誕生以来、世界中で愛され続けているモデルです。
特徴的なセンターシーム(甲の中央を縫い合わせたデザイン)と台形に広がるアウトライン、そしてクレープソール(生ゴムソール)の柔らかな履き心地が魅力の一足です。

今回お預かりしたのは、特に希少な 「40周年記念・BEAMSコラボモデル」
限定デザインのため、アッパーの素材感や中底の仕様も通常のデザートトレックとは一味違い、特別なこだわりが感じられるモデルです。
しかし、そんな特別な靴も避けて通れないのが「生ゴムソールの経年劣化」。
T様からは「ソールがベタベタしてきて履けない」というご相談をいただきました。


■ 生ゴムソールの宿命 ― 加水分解と熱劣化

デザートトレックに採用されている生ゴムソール(クレープソール)は、天然ゴムを主原料とした非常に柔らかい素材です。
この素材ならではのクッション性と独特の粘り気が人気の理由でもありますが、一方で 熱・湿気・油分・紫外線に弱く、経年でベタつきやすい という大きな欠点も抱えています。

特に日本のように湿度が高く、夏場に気温が上がる環境では、生ゴム内部の樹脂成分が酸化しやすくなり、粘着質に変化してしまいます。
この状態になると、床や靴箱にくっついたり、ほこりやゴミを吸着して見た目にも清潔感を損ねてしまいます。

T様の靴もまさにこの状態で、指で触るとゴムが指先に張り付くほどのベタつきがあり、歩くたびに粘りを感じるレベルでした。
このままでは靴としての機能を果たせないため、オールソール交換での再生修理を行うことになりました。


■ 修理方針 ― Vibram4014白を採用

今回T様からのご要望は明確でした。
「できるだけ軽くて、見た目も明るく、履き心地の良い白いソールにしたい」というもの。

この条件を踏まえ、いくつかの候補の中から選定したのが Vibram(ビブラム)4014ソール・白色モデル です。

Vibram4014は、作業靴やモックブーツにも使われる厚底タイプのソールで、
・高いクッション性
・グリップ性能
・軽さ
・そして優れた耐久性
を兼ね備えた万能ソールです。

一見するとワークブーツのような印象を与えますが、実際に履いてみると非常に軽快で、柔らかいクラークスのアッパーとも相性が良い仕上がりになります。
特に白色はアッパーのベージュスエードとの対比が美しく、BEAMSコラボモデルらしい清潔感あるカジュアルスタイルにぴったりです。


■ 分解作業 ― 構造確認と中底の保護

修理作業はまず、劣化した生ゴムソールを丁寧に取り外すところから始まります。
この工程では、アッパーや中底を傷めないように、温度と力加減に細心の注意を払います。

デザートトレックは底付け構造が比較的シンプルで、ソールが直接アッパーに接着されています。
しかし、今回のBEAMSモデルは通常モデルより中底がやや柔らかく、しかも 本革の中底に「Clarks」の刻印ロゴ が入った特別仕様。

この部分を傷つけるわけにはいきません。
そのため、生ゴムソールを剥がす際には温風でゴムを柔らかくしてから、少しずつ剥離させていく手作業を繰り返します。
こうして無事に中底を残した状態でソールを分離することができました。


■ ミッドソール交換 ― EVAスポンジで厚みと弾力を補強

中底は良好な状態でしたが、その下にあった ミッドソール部分 は完全に劣化しており、押すとぺしゃんと潰れてしまうほど柔らかくなっていました。
ここをそのままにしてVibram4014を取り付けると、靴の形状やバランスが崩れてしまうため、
新しいミッドソールを一から作り直す必要 があります。

素材には、クッション性と復元力に優れた EVAスポンジシート を使用。
厚みや硬度を慎重に選び、左右の高さを微調整しながら成形していきます。

EVAは軽量で衝撃吸収性が高く、熱にも湿気にも強いため、クラークスの柔らかい履き心地を維持しつつ耐久性を高めるのに最適な素材です。
また、EVAミッドソールを中底にしっかり縫い付けることで、ソール全体の剛性を確保し、長期使用にも耐える構造にしています。


■ 出し縫い ― 見えない部分の確かな仕事

ミッドソールを取り付けた後は、靴の底面を整え、出し縫いミシン による縫い付け工程へ。
クラークスのようなカジュアルブーツの場合、底縫いはデザイン要素としても重要ですが、今回は新しいソール構造に変わるため「機能性重視」で縫い付けを行います。

使用するのは 太番手の靴用糸
アッパーとミッドソールをしっかり縫い合わせることで、接着剤だけに頼らない強度を確保します。
この「縫いによる補強」があるかどうかで、靴の寿命は大きく変わります。
デザインとしては見えにくい部分ですが、履き心地や安定感の根幹を支える重要な工程です。


■ Vibram4014白の取り付けと仕上げ

最後に、仕上げのアウトソールを取り付けます。
Vibram4014は凹凸の深いパターンが特徴で、接着面をしっかり平滑に整えてから、専用の高強度ボンドで貼り合わせます。
乾燥・圧着を経て、余分な部分を削り出し、縁を丁寧に整形。
側面のラインがアッパーと自然に繋がるよう、微妙な角度調整を繰り返します。

白いソールは汚れが目立ちやすいので、仕上げ段階では防汚加工を軽く施し、表面の質感を整えます。
最後に全体を磨き上げると、まるで新品のようなクリーンな印象に生まれ変わりました。


■ 完成 ― 柔らかさと安定感を兼ね備えた一足に

完成後の履き心地は、クラークスらしい柔らかさをしっかり残しつつ、Vibram4014特有の反発力と安定感が加わった、非常にバランスの良いものになりました。
EVAミッドソールの弾力が中底の柔らかさをしっかり支え、歩行時の沈み込みも自然。
さらに白いソールがアッパーのスエード素材を引き立て、軽快で清潔感のある印象を与えます。

T様にも仕上がりを大変喜んでいただき、
「見た目も履き心地も想像以上。これならまた長く履けそうです」
とのお言葉をいただきました。


■ 職人よりひとこと

クラークスのデザートトレックは、構造的にはシンプルながら非常に繊細なバランスで作られている靴です。
そのため、ただソールを張り替えるだけではなく、素材の柔らかさ・厚み・屈曲点の位置 をしっかり合わせることが重要です。

今回のようにEVAスポンジとVibramソールを組み合わせる修理では、
軽さ・耐久性・クッション性のバランスを考慮しながら、オリジナルの雰囲気を損なわず再構築することが求められます。

靴の構造を理解し、素材一つひとつの性質を見極める。
それが、長く履ける靴修理の基本です。


■ 使用材料・仕様まとめ

  • 靴種:Clarks デザートトレック(BEAMS 40周年コラボモデル)

  • 修理内容:オールソール交換

  • 中底:オリジナル本革(残し)

  • ミッドソール:EVAスポンジ 厚み調整・出し縫い固定

  • アウトソール:Vibram4014 白

  • 接着+出し縫い仕様

  • 仕上げ:縁仕上げ・防汚コート


■ 仕上がりの印象

クラシックな英国靴にモダンなホワイトソールが映える仕上がりとなり、
まるで別注スニーカーのような軽快さと、オリジナルのクラフト感が共存した一足に生まれ変わりました。
履き心地も軽く、日常使いにぴったりの仕様です。


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神奈川県 N様 New Balance 576(ニューバランス576)ヒールカップ交換とアウトソール交換修理

神奈川県 N様 New Balance 576(ニューバランス576)

ヒールカップ交換とアウトソール交換修理

神奈川県のN様より、長年ご愛用のNew Balance(ニューバランス)576の修理をご依頼いただきました。


こちらのモデルは、1988年に誕生したニューバランスの定番中の定番。英国製(Made in U.K.)としても知られ、上質なスエードと履き心地の良さで今なおファンの多い名作です。
しかし今回は、その576の要ともいえる「ヒールカップ」と「アウトソール」の両方に経年劣化が見られる状態でした。


■ 修理前の状態

お預かりした靴を拝見すると、まず目に入るのはかかと部分の割れ。
**ヒールカップが加水分解を起こしており、押すと「パキッ」と音を立てて崩れてしまいます。
ニューバランスの多くのモデルには、かかとの形を保ちホールド感を高めるために、**樹脂製のヒールカップが装着されています。
しかしこの樹脂は塩ビ系系素材であることが多く、湿気や時間経過によって化学的に分解されてしまう「加水分解」という現象を避けられません。

さらに靴底(アウトソール)も摩耗と経年で硬化しており、グリップ力が落ちている状態でした。
一見するとスニーカー全体がくたびれているように見えますが、アッパーのスエードはまだ柔らかく、縫製も健在。
つまり、底周りとヒールカップをリフレッシュすれば、まだまだ長く履き続けることができる一足です。


■ ヒールカップとは?

修理工程に入る前に、少し「ヒールカップ」について解説しておきましょう。
ヒールカップとは、かかとの外部に取り付けてある保護材のことで、靴の形状を保ち、かかとをしっかり支える役割を担っています。
このパーツが劣化して割れてしまうと、靴全体のバランスが崩れ、歩行時にかかとが左右にブレるようになります。
ニューバランスの576では、軽量化のために樹脂製のカップが使われており、長年使用するとここが劣化して粉状に砕けてしまうことがあります。
残念ながら、この純正樹脂パーツは単体での入手が難しく、メーカー修理でも交換対応が難しい部分です。
そのため今回は、本革で代用品を製作し、オリジナルの形状に合わせて縫い付ける方法で修復していきます。


■ ヒールカップ交換作業


すでに亀裂が多数入ったヒールカップをヒーターガンで加熱することで簡単に取り除くことができます
ここをしっかりきれいにしておかないと、後々浮きや歪みが出てしまいます。

続いて、本革を使って新しいヒールカップを製作します。
使用するのは厚みのある牛革。適度なコシと柔軟性を併せ持ち、履き心地を損なわない素材です。
革を濡らして型を取り、アッパーにぴったり沿うように成形。乾燥後、余分な部分をカットして形を整えます。

この革製ヒールカップをボンド接着した後、八方ミシンで縫い付けて固定します。
八方ミシンとは、ブーツやスニーカーのような立体構造の靴でも自由な角度で縫製ができる特殊ミシンのこと。
細かい部分の縫いも正確に行えるため、今回のような内部補強修理に最適です。

縫い終わった後は、内側の縫い目が足に当たらないように仕上げ処理をします。
この作業を丁寧に行うことで、修理後も自然なフィット感が得られ、履き心地が新品時と変わらないように仕上がります。


■ アウトソール交換(Vibram 298C)

ヒールカップの補強を終えたら、次は靴底の修理です。
ニューバランス576の純正ソールは、クッション性の高いEVAミッドソールとゴム製アウトソールの二層構造。
今回N様の靴は、アウトソールが硬化して滑りやすくなっていたため、Vibram(ビブラム)298Cに交換します。

Vibram 298Cは、軽量かつ柔軟性に優れたスニーカー専用のソールです。
グリップ性能が高く、耐摩耗性にも優れており、舗装路でも土道でも安定した歩行をサポートします。
また、デザイン面でもニューバランスのスタイルに自然に馴染むパターンで、張り替え後の見た目も非常にバランスが取れています。


■ ミッドソールの下処理と貼り付け工程

まず、古いアウトソールを取り外します。
EVAミッドソールに残った接着跡や汚れは、サンドペーパーで削り落とし、表面を整えます。
この下処理が甘いと新しいソールの密着が悪くなるため、地味ですが非常に重要な工程です。

下処理を終えたら、専用のプライマー(接着促進剤)を塗布し、乾燥させます。
その上からウレタン系の強力ボンドを両面に塗布し、再度乾燥。
一定時間を置いたのち、圧着機でしっかりと貼り合わせます。

圧着後は、底面をハンマーで叩いて細部を馴染ませ、数時間養生します。
この間に接着剤が完全硬化し、耐久性の高い一体構造になります。

その後、側面をグラインダーで整えて形を均一にし、余分なはみ出しを処理。
新品のようなシャープなラインが復活します。


■ 出来上がりの状態

仕上がったニューバランス576は、まるで別の靴のように若返りました。
本革で作り直したヒールカップは、見た目にはまったく違和感がなく、履き心地も自然です。
むしろ樹脂製よりも足に馴染みやすく、しっかりしたホールド感が得られるのが特徴です。
履き込むほどに革が足型に沿って変化するため、今後はより快適なフィット感を楽しんでいただけるでしょう。

Vibram298Cソールも違和感なく馴染み、歩行時のクッション性と安定性が向上しています。
ニューバランスらしい「柔らかいけどしっかり支える」感覚が戻り、街歩きにも最適な仕様です。


■ ヒールカップを革で作るメリット

今回のように本革でヒールカップを作り直すと、

  1. 加水分解しない(半永久的に使用可能)

  2. 足当たりが柔らかく自然なホールド感が得られる

  3. 修理や再調整が容易
    といったメリットがあります。

一方で、樹脂のような「カチッ」とした成型感は少し控えめになりますが、履き込むほどに足に馴染むので、むしろ快適と感じる方も多いです。
今回もN様には「新品のように安定して履ける」と大変喜んでいただけました。


■ 修理を終えて

ニューバランス576は、アッパーが頑丈でシンプルな構造のため、メンテナンス次第で非常に長持ちするモデルです。
今回のようにヒールカップを革で補修し、ソールをVibram製に張り替えれば、これからも何年も履き続けることができます。

スニーカー修理というと、以前は「使い捨て」と考えられることも多かったのですが、
構造を理解し、適切に修復すれば、むしろブーツや革靴以上に再生可能な靴です。
今回の修理も、そのことを実感できる一例となりました。

N様の576は、長年の使用でアッパーにも深みのある艶が出ており、まさに“育った靴”という印象です。
これからもまた新たな年月を重ねながら、さらに味わい深い一足へと育っていくことでしょう。


■ 使用部材・仕様

  • ヒールカップ:本革製オリジナル(牛革)

  • アウトソール:Vibram 298C(ブラック)

  • 接着剤:ウレタン系強力ボンド

  • 縫製:八方ミシンによる補強縫い

  • 仕上げ:スエードクリーニング+保湿スプレー


■ 修理後コメント

樹脂製パーツの加水分解は避けられない経年変化ですが、今回のように**「素材を変えて修理する」**ことで靴の寿命を大きく延ばすことができます。
特にニューバランスのような履き心地重視のスニーカーでは、見た目よりも「内部構造のリフレッシュ」が効果的です。

履き心地・グリップ力・安定性がすべて蘇り、再び日常使いに戻れる一足となりました。
神奈川県のN様、このたびは修理のご依頼ありがとうございました。
また定期的なメンテナンスで、末永くご愛用ください。


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倉敷市 K様 REDWING Beckman(レッドウィング ベックマン)

倉敷市 K様 REDWING Beckman(レッドウィング ベックマン)

ハーフソールラバーとブロックヒール交換修理

倉敷市のK様より、REDWING(レッドウィング)の代表的モデル「Beckman(ベックマン)」の修理依頼をいただきました。
長年履き込まれたベックマンは、靴底前方のハーフソールラバー部分が加水分解を起こし、触れるとボロボロと崩れてしまう状態でした。また、後方のブロックヒール(積み上げヒール)もかなり削れ、地面との接地面が斜めにすり減っているため、姿勢のバランスにも影響が出ている状況でした。


■ 修理前の状態

まずお預かりしたベックマンを全体的に確認すると、アッパー(甲革)はまだしっかりとした厚みを保っており、レッドウィング特有のオイルドレザーらしい艶と風合いがよく出ています。
しかし、底材部分はさすがに経年の影響を隠せず、ハーフソールラバーが加水分解で崩壊。指で軽く押すだけでも黒い粉のようなカスが出てしまうほどでした。これは靴底に使用されている素材がポリウレタン系であることが多く、湿気や温度変化によって化学的に分解が進む「加水分解」という現象によるものです。

ブロックヒールの方は、摩耗と同時にラバー部分の弾性が失われており、歩行時のグリップ力も低下。
ヒールベース(積み上げ部分)自体はまだ使用できる状態でしたが、このまま使用を続けるとヒールベースまで削れ、さらに大掛かりな修理が必要になる恐れもあります。
そこで今回は、ハーフソールラバーとブロックヒールを同時に新調することとなりました。


■ REDWING Beckmanという靴について

ベックマンは、レッドウィングの中でも特にクラシックな外観と堅牢な作りで人気の高いモデルです。
元々は「ドレスとワークの中間」を狙ったデザインで、アッパーには上質なフェザーストーンレザーを使用。ワークブーツらしい頑丈さを残しつつも、街履きにも映えるスタイルが特徴です。
アウトソールはハーフラバー+レザーのコンビ仕様が多く、ドレスシューズのような雰囲気を持ちながら、グリップ性を高める実用的な設計になっています。

この構造は、経年によって前方のラバー部分だけが摩耗・劣化しやすいという弱点もあります。
つまり、「ハーフソールラバー交換」はベックマンのメンテナンスでは非常に定番かつ重要な修理といえます。


■ 劣化ソールの取り外し工程

劣化したハーフソールを取り除く際、加水分解した素材は手で触るだけで崩れるため、無理に剥がすとアッパー側のレザーまで傷めてしまう危険があります。
そのため、ここではヒーターガンで熱を加えて素材を柔らかくし、接着面を丁寧に分離していきます。

加水分解を起こしたソールは、接着剤も化学的に分解されており、熱を与えることで比較的容易に剥がすことができます。
ただし、過度に熱を加えると革の油分が抜けてしまうため、温度を一定に保ちながら少しずつ剥がすことが大切です。
こうして古いソールを完全に除去し、底面に残った汚れや接着剤のカスをサンドペーパーやブラシでしっかり除去します。
この「下処理」が最も重要な工程のひとつで、新しいソールをいかに密着させるかがここで決まります。


■ 新しいソール素材「Vibram 2333」について

今回使用するハーフソールは、Vibram(ビブラム)社の「2333」モデル
Vibram社はイタリアの老舗ソールメーカーで、登山靴からドレスシューズまで幅広く採用される信頼のブランドです。
2333ソールは、見た目がクラシックでありながらも素材は加水分解しない合成ゴム製。耐摩耗性・柔軟性・グリップ性のバランスに優れており、レッドウィングのベックマンとの相性も抜群です。

表面は滑りにくく適度な摩擦を保ちながらも、見た目にはワークブーツの雰囲気を損なわない控えめなデザイン。
「ハーフソールラバー」として貼り合わせた後も自然な仕上がりで、オリジナルの雰囲気をしっかりと再現できます。


■ ソールの接着と出し縫い

下処理を終えたら、新しいVibram2333を底面に合わせて裁断します。
接着面には専用のプライマーを塗布し、その上から強力なウレタン系ボンドを均一に塗ります。
しっかり乾かした後、圧着機を使って密着させ、さらにハンマーで細部を叩き込んで固定します。

接着後は、より強度を高めるために**「出し縫い(アウトステッチ)」**を施します。
これは靴底の周囲をミシンで縫い付け、接着だけでなく縫製によってソールを固定する手法です。
使用するのは出し縫い専用のミシン。糸は太番手の0番糸を使い、ステッチピッチを均一に整えながら、しっかりとした縫い付けを行います。
この縫いがあることで、ソールが剥がれるリスクが大幅に減り、見た目にもブーツらしい力強さが生まれます。


■ ブロックヒール交換

続いてヒール部分の修理に移ります。
既存のブロックヒールはすでに摩耗が進んでおり、底面が斜めに削れてしまっています。
ヒールのバランスが崩れていると、歩行姿勢にも影響し、左右の脚への負担差が大きくなります。
ここは早めの交換が最善です。

ヒールベースを傷つけないよう古いヒールゴムを取り外し、底面を平らに整えたうえで、新しい**ブロックヒール(積み上げ一体型タイプ)**を接着します。
接着剤が完全に乾いたら、機械で高さと角度を微調整し、左右のバランスを正確に合わせます。
最後にエッジ部分を削り出して丸みを整え、自然なラインに仕上げます。
ヒールゴムはVibram製のものを選定し、グリップ性と耐久性を両立。
完成後の見た目もベックマン本来の重厚感をしっかり残すことができました。


■ 仕上げと最終チェック

ソール全体を軽く磨き上げ、アッパーにはレッドウィング純正オイルを薄く塗布して保湿。
オイルドレザーの艶がよみがえり、ブーツ全体が引き締まった印象に戻ります。

最後にステッチや接着面の浮きがないかを確認し、左右の高さ・バランスを再度チェック。
履いたときの安定感も申し分なく、底面のグリップもしっかりと効いています。
見た目も新品当時のような重厚な佇まいを取り戻しました。


■ 修理を終えて

今回のベックマンは、アッパーがしっかりしていたため、ソールを交換することでまだまだ長く履ける一足に生まれ変わりました。
レッドウィングの靴は、素材・縫製ともに非常に頑丈に作られており、定期的にソール交換を行うことで10年、20年と履き続けることができます。
特にハーフソール部分の加水分解は避けられない経年変化のひとつですが、今回のようにVibram製の合成ゴム素材へ交換すれば、次回のメンテナンスまで長い期間安心してご使用いただけます。

倉敷市のK様も、仕上がりをご覧になって「まるで新品みたいですね」と喜んでくださいました。
愛用の一足を長く履き続けるために、定期的なメンテナンスの重要性を改めて感じていただけたようです。


■ 使用部材・仕様

  • ハーフソールラバー:Vibram 2333(合成ゴム製/ブラック)

  • ブロックヒール:Vibram製ヒールゴム(耐摩耗タイプ)

  • 接着剤:ウレタン系強力ボンド

  • 縫製:出し縫いミシン(0番糸使用)

  • 仕上げ:アッパーオイルメンテナンス(レッドウィング純正オイル)


■ 修理後コメント

今回の修理では、見た目の美しさと機能性の両立を意識しました。
Vibram2333はデザイン的にもオリジナルの雰囲気を損なわず、滑りにくく耐久性にも優れています。
ブーツ底面にしっかりとした厚みが戻り、また街歩きでも安心して履ける仕上がりです。

これからもこのベックマンが、K様の日常を支える頼もしい相棒として活躍してくれることを願っております。


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倉敷市 H様 NIKE エア・ジョーダン1.5 ソール剥がれ修理

倉敷市 H様 NIKE エア・ジョーダン1.5 ソール剥がれ修理

― ボンド劣化による剥がれをオパンケ縫いで強化補修 ―

今回の修理事例は、倉敷市にお住まいのH様よりお預かりした「NIKE AIR JORDAN 1.5(ナイキ エア ジョーダン1.5)」のソール剥がれ修理です。
このモデルは、バスケットボールシューズの歴史を語る上で特別な存在。エアジョーダン1とエアジョーダン2の中間に位置する希少な復刻版で、クラシックな外観と現代的なクッション性を兼ね備えています。

しかし、長年の経年変化により、ソールを固定しているボンド(接着剤)が劣化し、アウトソールが全体的に剥がれてきていました。
特にジョーダン1.5は、ジョーダン1のようにソールをアッパーに縫い付けていない構造のため、接着剤の劣化が進むと一気に剥がれが広がってしまうのです。


■ ソール剥がれの状態

修理前の状態を確認すると、つま先からかかとまで広範囲にわたってソールが浮き上がり、内部の白いミッドソール層が露出していました。
加水分解こそ起きていなかったものの、接着面に残る古いボンドは粉のように崩れており、接着力を完全に失っている状態。軽く力を加えるだけでペリペリと剥がれるほどでした。

このような状態のまま使用を続けると、ソール内部に砂や水分が入り込み、ミッドソールのスポンジが傷みやすくなります。また、接着面にゴミが入り込むと、再接着の際に密着が妨げられるため、剥がれたら早めの処置が肝心です。

H様からは「まだまだ履きたいので、しっかり直してほしい」とのご要望。
そこで今回は、単なる接着修理ではなく、“縫い付け補強”を併用して強度を高める方法をご提案しました。


■ 一旦分解し、下処理を徹底

まずはソール全体を丁寧に分解します。
アウトソールとミッドソールを無理に剥がすと、内部のフォーム材(クッション層)を破損してしまうため、専用の温風機で温めながら慎重に分離しました。

古いボンドが完全に劣化しているため、接着面はザラザラとした粉状。これをすべて削り落とす必要があります。
ワイヤーブラシやサンドペーパーを使って、古い接着剤を除去し、素材表面を均一に荒らします。この工程を「下処理」と呼びます。
靴修理において下処理は最も重要な工程のひとつで、ここを丁寧に行うかどうかで修理の寿命が決まります。

下処理が完了したら、新しい接着剤(ウレタン系ボンド)を均一に塗布。乾燥後にもう一度熱をかけ、両面を圧着していきます。


■ オパンケ縫いによる補強

今回のジョーダン1.5は、オリジナルの構造ではソールが縫い付けられていません。つまり接着だけで固定されています。
この構造は軽量化には優れていますが、経年でボンドが劣化するとどうしても剥がれやすいという弱点があります。

そこでH様には、「オリジナルの仕様とは異なるが、縫い付けを追加することでより強度を高める」方法をご提案し、ご納得のうえで施工を進めました。

縫製方法には「オパンケ縫い」を採用しました。
オパンケ縫いとは、ソールの側面から糸を通し、アッパーとソールをぐるりと縫い付ける製法。スニーカーやカジュアルシューズの補強に用いられることが多く、外観的にもクラフト感が加わります。

この縫い方の利点は、単なる装飾ではなくソール剥がれを物理的に防止できること
ボンド接着だけで支えていた構造に、縫製という“機械的な固定”を加えることで、加水分解や接着劣化が起きても靴底が完全に剥がれ落ちることを防ぎます。


■ 修理後の状態と履き心地

H様にお渡しの際、実際に履いていただいたところ、「前よりも安定している」「足裏がしっかり支えられる感じがする」とのお言葉をいただきました。
接着と縫い付けを併用することで、ソールの“浮き”が解消され、着地時のぐらつきがなくなったのが大きな改善点です。

また、オパンケ縫いによってサイドラインにほんのりクラフト感が加わり、ファッション的にも味のある雰囲気に仕上がっています。
修理によって見た目が変わることを心配される方も多いですが、ジョーダンシリーズのデザインには縫いラインが自然に馴染むため、違和感はほとんどありません。


■ 今後のメンテナンスについて

ボンドはどんなに強力でも、年月とともに少しずつ硬化・劣化していきます。特にナイキのスニーカーに多いウレタン系ミッドソールは、湿気や温度変化で素材自体が脆くなることもあります。
今回のように縫い付けを加えておけば、仮にボンドが劣化しても“完全に剥がれ落ちる”という事態を防ぐことができます。

保管時には、直射日光や高温多湿を避け、風通しの良い場所で保管してください。
長期間履かない場合でも、月に一度ほど陰干しをして湿気を逃がしておくと、加水分解の進行を遅らせることができます。


■ 修理を終えて

エアジョーダン1.5は、ジョーダン1のクラシックなルックスに、ジョーダン2のソール技術を組み合わせた“ハイブリッドモデル”。そのため構造的にも独特で、修理には通常のスニーカー以上の注意が必要です。

今回のように、オリジナルの仕様に縫いがない靴でも、「少しでも長く履けるように」というお客様のご希望に沿って、必要に応じて補強を追加することができます。
靴の修理とは単に“直す”ことではなく、使う人の履き方や思い出を残しながら“再構築”していく仕事です。

H様のジョーダンも、ソールの剥がれをしっかり補強したことで、また長く履いていただける状態に戻りました。
バスケットコートでの使用はもちろん、街履きとしても十分な強度と安心感があります。


■ まとめ

  • 症状:ボンド劣化によるソール全体の剥がれ

  • 対応:一旦分解 → 下処理 → 再接着 → オパンケ縫いによる補強

  • 使用機材:八方ミシン、ポリエステル強化糸

  • 修理後:強度・安定性が大幅に向上。外観も自然に仕上がり。


H様、この度はご依頼ありがとうございました。
これでまたジョーダン1.5を安心して履いていただけます。
履き心地の変化を楽しみながら、ぜひこれからもガンガン活躍させてください。


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総社市 S様 Danner(ダナーライト)ソール張替え修理

総社市 S様 Danner(ダナーライト)ソール張替え修理

―EVAスポンジで高さ補正、Vibram148ソールにて再構築―

今回ご依頼いただいたのは、総社市にお住まいのS様よりお預かりした「Danner(ダナーライト)」のソール張替え修理です。


ダナーライトといえば、アメリカ・オレゴン州発祥のアウトドアブーツブランド「Danner」の代表的モデル。ゴアテックス防水ライニングを採用し、堅牢なつくりと履き心地の良さを両立した名作として、登山からタウンユースまで幅広く愛されています。

S様のブーツは、長年履き込まれており、アウトソールのかかと部分が大きく削れていました。さらに、アウトソールだけでなく、その下にある「ミッドソール(スポンジ層)」までもが摩耗しており、靴全体のバランスが崩れてしまっていました。こうなると単純に底ゴムを張り替えるだけでは修理が完結しません。削れた分を補う“高さ補正”を行い、靴としての正しい姿勢と接地角度を取り戻す必要があります。


■ 状態確認と分解

お預かりした時点で、かかと外側の削れがかなり進行しており、ソールの厚みが左右で違って見えるほどでした。ミッドソールに使用されているスポンジ材(EVA系)、一緒に削れていました。

まずは古いアウトソールを丁寧に剥がし、ミッドソールの状態を確認します。摩耗している部分は斜めにえぐれるように削れており、左右の高さ差は約3〜4mmほど。人間の歩行においてはこの差が大きく、履き続けると姿勢や足首への負担につながります。

このため、EVAスポンジを使ってミッドソール部分を再構築し、元の形状とバランスを復元する作業を行うことにしました。


■ EVAスポンジによる高さ補正

EVA(エチレン・ビニル・アセテート)スポンジは軽量でクッション性があり、登山靴やスニーカーのミッドソールに多く使われる素材です。削れた箇所に合わせてEVA板を加工し、厚みを慎重に調整します。

今回は、元のミッドソール色に近いものを探しましたが、同色のEVAスポンジは現行で入手が難しく、ややトーンの違うものを採用しました。後ろから見ると補修部分が少し明るめに見えますが、強度や弾性は同等です。修理前にS様にも色味の違いについてご説明し、ご納得いただいたうえで作業を進めています。

EVA素材の貼り合わせは、温度や圧力管理が重要です。接着剤を塗布した後、適切な圧力で圧着し、しっかりと固着させます。これを怠ると使用中に剥離を起こすリスクがあるため、圧着後は数時間しっかりと養生時間を取りました。


■ 新しいアウトソールの選定 ― Vibram148 ―

アウトソールには「Vibram(ビブラム)148」を使用しました。
Vibram148は「Kletterlift(クレッターリフト)」という名称でも知られるモデルで、登山靴やハンティングブーツなどに多く採用されている定番のソールです。ダナーライトのオリジナルソールとしても相性がよく、グリップ力・耐久性ともに非常に優れています。

このソールの最大の特徴は、深いラグパターンによる高いトラクション性能と、かかと部分のショック吸収構造。滑りやすい岩場や舗装路でも安定した歩行が可能です。また、ソールのゴム硬度が絶妙で、タウンユースでも減りが穏やか。日常使いにも適した万能タイプと言えるでしょう。

修理では、ミッドソールに補強したEVAスポンジをベースにVibram148を貼り合わせ、圧着・成形を行います。靴底のアーチラインに沿って均一に貼るため、位置決めは慎重に。特にダナーライトはヒールカーブが大きく、少しでもズレると歩行時の重心がブレるため、経験と感覚が問われる工程です。


■ 加工と仕上げ

補修したEVAスポンジ部分の色味はやや明るめですが、違和感なくまとまっています。靴全体のバランスも元に戻り、接地面もフラット。履いたときの安定感が格段に向上しています。


■ 修理後の履き心地と今後のメンテナンス

修理完了後、試し履きを行ってみると、着地時の沈み込みが適度に復活し、クッション性が明らかに改善されていました。削れによる左右の高さ差も解消され、歩行時の姿勢も安定します。

お客様にもお渡しの際に確認していただき、「新品のときよりも履き心地がいい」とのお言葉をいただきました。EVAスポンジの弾性とVibram148ソールの硬度の組み合わせがちょうどよく、登山はもちろん、街中での長時間歩行にも十分対応できます。

今後も長く履いていただくためには、定期的なブラッシングとオイルケアをおすすめします。アッパーの革部分はゴアテックス仕様で水を弾きますが、ステッチ部分からの浸水を防ぐためにも防水スプレーを併用すると安心です。また、かかとが再び大きく削れてきた際は、早めの補修を行うことで靴本体へのダメージを防ぐことができます。


■ 修理を通して感じたこと

ダナーライトのような名靴は、構造がしっかりしているため、一度ソールを張り替えればまた何年も履き続けることができます。今回のように、ミッドソールが部分的に削れてしまっても、EVAで補修し、Vibramソールで再構築すれば、機能・耐久ともに新品同等のパフォーマンスを取り戻すことが可能です。

ただ、EVAスポンジの色味や風合いはメーカーや時期によって微妙に異なるため、完璧に同一の見た目に仕上げることは難しい場合があります。その点を丁寧にご説明し、ご納得の上で修理を進めることが大切です。いずみ靴店では、見た目の美しさと機能のバランスを常に意識し、「履き心地を最優先にした修理」を心がけています。


ダナーライトは「修理しながら一生履ける靴」の代表格です。
今回のように、EVAスポンジで高さ補正を行い、Vibram148ソールでしっかりと組み直すことで、再びタフに活躍できる状態に生まれ変わりました。

S様、この度はご依頼ありがとうございました。
ぜひまたガンガン履いていただき、次の修理のタイミングで再びお手伝いできればと思います。


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