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日別アーカイブ: 2025年12月21日

岐阜県 K様 Blundstone(ブランドストーン)サイドゴアブーツ 加水分解によるオールソール交換修理事例

今回ご紹介する修理事例は、岐阜県よりご依頼をいただいたK様のBlundstone(ブランドストーン)サイドゴアブーツ、加水分解によるオールソール交換修理です。


ブランドストーンといえば、タフで履きやすく、アウトドアから日常使いまで幅広く活躍するサイドゴアブーツとして非常に人気の高いブランドです。一見すると頑丈で長く履けそうな印象がありますが、実はモデルによってはソールにポリウレタン素材が使用されており、経年劣化による「加水分解」からは逃れられないという側面も持っています。

K様からのご相談は、「久しぶりに履こうとしたら、ソールがボロボロ崩れてきた」というものでした。加水分解特有の症状で、履いていなくても年月の経過によって内部から劣化が進行し、ある日突然使えなくなってしまうケースです。実際に靴を確認すると、アウトソールからミッドソールにかけてポリウレタンが劣化し、指で触るだけでも粉状・塊状に崩れていく状態でした。

ポリウレタン素材は、クッション性や軽さに優れている反面、水分や湿気と化学反応を起こしやすく、一定年数が経過すると分子構造が壊れてしまいます。これが「加水分解」と呼ばれる現象です。特に日本のように湿度が高い環境では進行が早く、履く頻度に関係なく劣化してしまうのが厄介な点です。外見がきれいなままでも、内部ではすでに寿命を迎えているということも珍しくありません。

今回のブランドストーンのサイドゴアブーツも、アッパーの革やゴアゴム部分はまだ良好な状態を保っていました。しかし、ソールだけは完全に寿命を迎えており、部分補修では対応できないため、オールソール交換修理が必須と判断しました。

まずは劣化したソールの分解作業から始めます。加水分解したポリウレタンソールは、弾力を失い、ボロボロと崩れるため、通常のソール剥がしとは違った慎重さが求められます。無理に力をかけると、アッパー側までダメージを与えてしまう可能性があるため、状態を見極めながら少しずつ取り除いていきます。劣化した素材を完全に除去し、靴本体側に残った接着剤やポリウレタンの残骸も丁寧に処理します。

ソールをすべて取り除いた後は、新しいソール構造の土台作りに入ります。今回は、EVAスポンジ素材のミッドソールを新たに作成し、靴本体に取り付ける方法を採用しました。EVAスポンジは、軽量でクッション性があり、なおかつポリウレタンのように加水分解を起こしにくい素材です。今後長く履いていくことを考えると、非常に理にかなった選択と言えます。

このEVAミッドソールは、単に接着するだけでなく、マッケイ縫いによって靴本体にしっかりと縫い付けます。マッケイ縫いは、アッパーからミッドソールまでを一体化させる製法で、接着剤の劣化に左右されにくく、耐久性の高い構造を作ることができます。アウトドア用途や、日常的にガシガシ履く靴には非常に相性の良い製法です。

ミッドソールが安定したところで、次にアウトソールの取り付けを行います。今回K様からご指定いただいたのは、Vibram(ビブラム)528Kソールです。528Kは、スポンジ系素材をベースにしたアウトドアタイプのソールで、軽さとクッション性を兼ね備えながら、適度なグリップ力も持っています。ゴツすぎないデザインのため、ブランドストーンのシンプルなサイドゴアブーツの雰囲気を損なわず、非常に相性の良いソールです。

スポンジ系アウトソールというと「減りが早いのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、Vibramの素材は耐久性とのバランスが良く、日常使いから軽いアウトドアまで十分に対応できます。また、何よりも履いた瞬間に分かる軽さとクッション性は、従来のポリウレタンソールとはまた違った快適さを感じていただけるはずです。

アウトソールを接着・圧着した後は、側面のラインを整え、全体のバランスを見ながら仕上げを行います。サイドゴアブーツはシルエットが重要な靴のため、ソールが厚くなりすぎたり、野暮ったく見えたりしないよう、細部まで調整します。完成後は、しっかりとした安定感と軽快な履き心地を両立した一足に生まれ変わりました。

今回の修理によって、加水分解で履けなくなっていたブランドストーンのサイドゴアブーツは、今後も安心して履き続けられる構造へと再構築されています。ポリウレタンの弱点を避け、EVAスポンジ+マッケイ縫い+Vibramアウトソールという組み合わせは、耐久性と実用性の面で非常に優れた仕様です。

「もう寿命だと思っていた靴が、また履けるようになる」というのが、オールソール交換修理の大きな魅力です。特に、アッパーがしっかりしている靴ほど、ソールを替えることでその価値を最大限に活かすことができます。K様のブーツも、これからまた日常の相棒として活躍してくれることでしょう。

仕上がったブーツをお返しする際には、「またガシガシ履いてください」とお伝えしました。修理はゴールではなく、新たなスタートです。履いて、減って、また必要になったら直す。そんな循環の中で、靴は本当の意味で「道具」になっていきます。

いずみ靴店では、ブランドや流行にとらわれず、一足一足の状態を見極めた修理をご提案しています。ブランドストーンの加水分解でお困りの方、同じような症状で悩まれている方は、ぜひ一度ご相談ください。

山梨県 A様 NIKE バスケットボールシューズ 靴紐通し修理事例

今回ご紹介する修理事例は、山梨県よりご依頼をいただいたA様のNIKE(ナイキ)バスケットボールシューズ、靴紐通し部分の修理です。
一見すると小さな不具合に思われがちな「靴紐通し」のトラブルですが、実は競技用シューズにおいては非常に重要なパーツであり、破損したままでは安全に履くことができません。

バスケットボールシューズは、ジャンプ、着地、急停止、急激な方向転換といった激しい動作を繰り返すため、靴全体にかかる負荷が非常に大きい構造になっています。その中でも、足と靴をしっかり一体化させる役割を担っているのが靴紐通し部分です。ここが破損すると、紐を締めても力が分散せず、フィット感が損なわれるだけでなく、プレー中に足がズレてしまう危険性も高まります。

A様からのご相談内容は、「靴紐を通す輪っかの一部が壊れてしまい、紐として機能しなくなっている」というものでした。実際に靴を確認してみると、ナイキのバスケットボールシューズ特有の構造が見て取れます。このモデルでは、金属ハトメや樹脂パーツではなく、1本の硬めの紐状パーツを靴の側面に沿わせ、途中途中を縫い付けることでループ(輪っか)を形成する構造になっていました。

この構造は軽量化やフィット性の向上という点では非常に優れていますが、縫い付け部分に負荷が集中しやすいという側面もあります。特に、靴紐を強く締め込むバスケットボールシューズでは、紐を引くたびに縫製部分に強いテンションがかかります。長期間の使用によって、その縫い付けられている布部分が裂けてしまい、輪っかが元の「ただの紐」に戻ってしまうという状態になっていました。

輪っかが輪として機能しなくなると、そこに靴紐を通すことができず、実質的にシューレースホールが一つ使えない状態になります。そのまま無理に履こうとすると、紐の締まり方に左右差が出てしまい、足首や甲のホールド感が大きく損なわれます。競技用としては非常に危険な状態と言えるでしょう。

今回の修理では、単に破れた部分を接着剤で留めるといった簡易的な方法では対応できません。激しい動きに耐えられる強度を確保するためには、新たに布を補強材として当て、その布ごと靴本体に縫い付ける必要があります。そこで行ったのが、部分的な補強縫製による靴紐通しの再構築です。

まず、破損している箇所を確認し、使える元の紐状パーツは活かす方針としました。完全に作り直すのではなく、元の構造を尊重しながら「壊れた部分だけを確実に補強する」修理です。破れてしまった縫製部分には、新たに耐久性のある布を当て、その上から紐を固定する形で縫い付けを行います。この布は、引っ張りや摩擦に強く、かつ厚みが出すぎない素材を選定しています。

ここで重要になるのが、使用するミシンです。靴の側面、しかも立体的な構造の途中にある靴紐通し部分は、一般的な平ミシンや腕ミシンでは角度や位置の制約が大きく、正確な縫製ができません。そこで使用するのが八方ミシンです。八方ミシンは、靴修理や鞄修理など立体物の縫製に特化したミシンで、文字通りあらゆる方向から針を入れることができます。

靴の形を崩さず、必要な位置にだけピンポイントで縫いを入れることができるため、今回のような部分補強修理には欠かせない機械です。布・紐・靴本体を一体化させるように、しっかりとした縫製を施し、輪っかとしての形状を再構築していきます。

縫い付け後は、実際に靴紐を通し、引っ張りながら強度を確認します。見た目だけでなく、「競技中に強く締め上げても問題がないか」という実用面でのチェックが非常に重要です。補強布があることで、力が一点に集中せず、周囲に分散される構造になり、元の状態よりもむしろ安心感のある仕上がりとなりました。

修理後の靴は、破損していた靴紐通しがしっかりと輪っかとして機能するようになり、他のシューレースホールと同じように使える状態に戻っています。アッパー全体のコンディションも良好で、ソールの状態もまだ問題がないため、今回の修理によって再び実戦で使用できる一足となりました。

靴紐通しの破損は、「もう履けない」と判断されがちなトラブルですが、構造を正しく理解し、適切な補強を行えば修理が可能なケースも多くあります。特に競技用シューズは高価なものが多く、足に馴染んだ一足を手放したくないという方も少なくありません。

いずみ靴店では、ソール交換や大きな修理だけでなく、今回のような細かなパーツ修理にも対応しています。「こんな部分でも直るのだろうか」と迷われている場合でも、一度ご相談いただければ、状態を見極めたうえで最適な修理方法をご提案いたします。

今回のA様のNIKEバスケットボールシューズも、靴紐通し修理によって再び安心して履いていただける状態になりました。これでまた、コートの上で存分に活躍してくれることでしょう。

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