修理ご依頼の概要

倉敷市にお住まいのS様よりお預かりしたのは、紳士用のウェスタン調ブーツです。シャープなシルエットと独特の雰囲気を持つブーツで、サイド部分には装飾性と機能性を兼ね備えたゴアゴムが用いられています。今回のご相談内容は、その履き口部分に取り付けられているゴアゴムが経年劣化により伸び切ってしまい、ブーツ全体がゆるくなってしまったというものです。
ゴアゴムは本来、足入れを容易にしつつ、着用時にはしっかりと足首周りをホールドする重要なパーツです。しかし、長年の使用や保管環境の影響により、内部のゴム繊維が疲労し、弾力を失ってしまうことがあります。今回のブーツもまさにその状態で、見た目にもゴアゴムが波打ち、触ると張りが感じられないほど劣化していました。
修理前の状態確認

お預かりしたブーツを詳しく確認すると、履き口両サイドに設けられたゴアゴムが大きく伸び、足を入れた際に本来感じられるはずの抵抗がほとんどありません。そのため、歩行時にかかとが浮きやすく、フィット感が大きく損なわれている状態でした。
また、このブーツの特徴として、履き口周辺に多数の革のヒダ(プリーツ)が設けられており、その一つ一つが丁寧に縫い留められています。装飾性の高いデザインである反面、修理の観点から見ると非常に手間のかかる構造です。ゴアゴムはそのヒダの内側に組み込まれる形で縫製されており、単純に古いゴムを外して新しいものに取り替える、というわけにはいきません。
修理方法の検討
ゴアゴム交換修理では、いかに元のデザインや雰囲気を損なわずに仕上げるかが重要になります。今回のブーツの場合、革のヒダが多く、それぞれが独立して縫い付けられているため、無理に靴本体に付いたまま作業を進めると、縫いズレや革へのダメージが生じる恐れがあります。
そこで今回は、ゴアゴムとヒダ部分を一度すべて取り外し、部品単位で作業を行う方法を採用しました。取り外しが可能な構造であったことが、今回の修理を成功させる大きなポイントです。
ゴアゴムおよびヒダ部分の取り外し

まずは既存の縫い糸を慎重に解き、劣化したゴアゴムと、それを覆うように配置された革のヒダを一体のパーツとして取り外します。この工程では、革を傷つけないよう細心の注意が必要です。特にウェスタン調ブーツに使われている革は、厚みがありながらも装飾性が高いため、刃物の入れ方一つで仕上がりに大きな差が出ます。

すべてのヒダを無事に取り外した時点で、ようやく新しいゴアゴムを縫い付ける準備が整います。
新しいゴアゴムの選定と縫製

今回使用するのは、耐久性と伸縮性のバランスに優れた石目ゴムです。石目ゴムは表面に独特の凹凸があり、見た目にも高級感があるため、紳士靴やブーツの修理に多く用いられます。オリジナルの雰囲気を損なわず、なおかつ実用性を高める素材として最適な選択です。
取り外したヒダ部分に、新しいゴアゴムを一つ一つ位置合わせしながら縫い付けていきます。この作業には八方ミシンを使用します。八方ミシンは、立体的な形状のパーツにも対応できる特殊なミシンで、今回のような複雑なブーツ修理には欠かせない存在です。
ヒダの数が多いため、同じ工程を何度も繰り返すことになりますが、ここで手を抜くと左右のバランスが崩れてしまいます。一針一針、テンションを確認しながら、丁寧に縫製を進めます。
靴本体への再取り付け

ヒダとゴアゴムが一体となった部品が完成したら、次はそれを靴本体へ縫い戻す工程です。ここでも八方ミシンが活躍します。元の縫い穴をできるだけ活かしながら、位置ズレが起きないよう慎重に作業を行います。
ウェスタン調ブーツ特有のラインやシルエットを崩さないよう、左右を見比べながら縫い進め、全体のバランスを確認します。すべて縫い終えた時点で、ようやくブーツ本来の姿がよみがえります。
修理完了後の状態

修理完了後のブーツは、履き口にしっかりとした張りが戻り、足を入れた瞬間からフィット感の違いを感じていただける状態になりました。伸び切っていたゴアゴムは新しい石目ゴムに交換され、見た目にも引き締まった印象です。
革のヒダも元通り整い、修理跡が目立つことはありません。ウェスタン調ブーツの持つ雰囲気を損なうことなく、機能性だけを回復させることができました。
まとめ
ゴアゴム交換修理は一見シンプルに思われがちですが、今回のようにデザイン性の高いブーツでは、構造を理解した上で適切な工程を選択することが重要です。取り外し可能なパーツは部品単位で作業を行うことで、仕上がりの精度を高めることができます。
これでS様のウェスタン調ブーツも、また安心して履いていただけます。お気に入りの一足を長く履き続けるためにも、ゴアゴムの伸びや劣化が気になり始めたら、早めの修理をご検討ください。
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