オフィシャルブログ

広島県 T様 デュ・バリー ブーツのソールが加水分解したため、オールソール交換修理しました

広島県にお住まいのT様より、大切に履き続けてこられたデュ・バリーのブーツをお預かりし、オールソール交換修理を行いました。本記事では、その修理の背景から施工内容、仕上がりの意図までを詳しくご紹介いたします。同じような症状でお悩みの方にとっても、ひとつの参考になれば幸いです。


今回お預かりしたブーツは、アッパーの状態こそ良好で、丁寧に履き込まれてきたことがよく伝わってくる一足でした。しかしながら、靴底に深刻な問題を抱えていました。アウトソール自体は一見まだ使用できそうな状態に見えたものの、その内部、いわゆるミッドソール部分に使用されていたポリウレタン素材が経年劣化による加水分解を起こし、崩壊していたのです。

ポリウレタン素材は軽量でクッション性に優れており、ブーツやスニーカーのソール材として広く使用されています。しかし一方で、水分と反応して分解が進む「加水分解」という避けられない性質を持っています。見た目には問題がなくても、内部が粉状に崩れていたり、触るとボロボロと崩れ落ちるような状態になっていることが多く、今回のブーツもまさにその典型的な症状でした。

このようなケースでは、部分的な補修では対応できず、ソール全体を作り直す「オールソール交換」が必要となります。特に今回のようにミッドソールが完全に崩壊している場合、構造そのものを一から再構築する必要があるため、一般的なソール交換よりも高度な作業が求められます。


まず最初の工程として行うのは、既存ソールの分解です。アウトソールとミッドソールを慎重に剥がし、劣化したポリウレタン素材をすべて取り除きます。この工程では、アッパー(靴本体)を傷めないよう細心の注意を払いながら作業を進めます。加水分解した素材は粉状になっているため、清掃も含めて丁寧に処理し、次の工程に備えます。

今回のブーツは構造的に、元のアウトソールをそのまま再利用することが難しい状態でした。理由としては、ミッドソールの崩壊によってソール全体の形状が歪んでしまっていたこと、そして再接着しても十分な強度が確保できないと判断したためです。結果として、アウトソールも含めた完全な再構築を行う方針といたしました。


次に行ったのが、新たなミッドソール構造の設計と構築です。今回は、耐久性と修理後の安定性を重視し、従来のポリウレタン素材ではなく、より劣化しにくい素材を用いて土台を作り直しました。そのうえで、見た目のバランスと履き心地を両立させるため、厚みや形状を細かく調整していきます。

さらに今回の大きなポイントとなったのが、「ステッチダウン風」の仕上げです。通常の構造では再現が難しいため、アッパー側面に新たに革を縫い付け、それを外側に折り返すことで、ステッチダウン製法のような外観を作り出しました。この手法により、単なる修理にとどまらず、デザイン的にも一体感のある仕上がりを実現しています。

この工程では、革の厚みや柔軟性、縫製のピッチに至るまで細かく調整を行い、違和感のない自然な仕上がりを目指しました。特に折り返し部分は見た目の印象を大きく左右するため、丁寧に成形しながら仕上げています。


ミッドソールの構築が完了した後は、「出し縫い」によってソールをしっかりと固定していきます。出し縫いとは、靴底とアッパーを貫通させて縫い上げる製法で、接着だけに頼らない高い耐久性が特徴です。今回のように構造を再構築するケースでは、この出し縫いを行うことで、長期間の使用にも耐えうる強固な仕上がりを実現します。


そして最後に取り付けたアウトソールが、Vibram社製の「2303」デッキシューズ用ソールです。このソールは、グリップ力と耐久性に優れ、比較的フラットなデザインが特徴です。今回のブーツの雰囲気を損なわず、なおかつ実用性を高めるという点で、非常に相性の良い選択となりました。

デッキシューズ用として設計されているため、滑りにくく安定した歩行が可能で、日常使いはもちろん、多少の悪路でも安心してご使用いただけます。また、見た目にも過度な主張がないため、今回のステッチダウン風のデザインとも自然に馴染んでいます。


こうしてすべての工程を経て、今回のオールソール交換修理が完了しました。元の構造とは異なるアプローチではありますが、機能性・耐久性・デザイン性のすべてをバランスよく再構築することができたと考えております。

加水分解によるソールの劣化は、どんな靴にも起こり得る現象です。特にポリウレタン素材を使用している場合は、見た目に問題がなくても内部で劣化が進んでいることがあります。「最近歩くと違和感がある」「ソールが柔らかくなりすぎている」といった症状がある場合は、早めの点検をおすすめいたします。

お気に入りの一足を長く履き続けるためには、適切なタイミングでの修理と、素材に応じた対処が重要です。今回のように構造を見直すことで、新たな形で靴に命を吹き込むことも可能です。

大切な靴に少しでも不安を感じた際は、ぜひ一度ご相談ください。一足一足の状態に合わせた最適な修理方法をご提案させていただきます。


#靴修理
#ブーツ修理
#オールソール交換
#加水分解
#靴職人
#Vibramソール

Translate »