――ベタつく生ゴムソールを耐久性の高いVibram4014白へ交換――

今回お預かりしたのは、石川県にお住まいのH様よりご依頼の、Clarks(クラークス)デザートトレックです。

クラークスといえばイギリスを代表するカジュアルシューズブランドで、特にこの「デザートトレック」は、クラークスの中でも不動の人気を誇る定番モデル。特徴的なセンターシームのアッパーデザインと、ぽってりとした生ゴム(クレープ)ソールの組み合わせが、どこか無骨でありながら温かみのある雰囲気を醸し出しています。
■ ソールの状態と今回のご依頼内容

H様のデザートトレックは、外観こそ比較的きれいで、ソールの減りも少なめでした。
しかし、底面を触ると「ベタベタ」とした粘り気があり、靴底が床に軽くくっつくような状態になっていました。
これは生ゴム(クレープソール)特有の熱劣化によるものです。
生ゴムは天然素材で柔らかくクッション性に優れていますが、その反面、気温や湿度、経年によって性質が変化しやすいという欠点もあります。
特に夏場の高温や直射日光、暖房の熱などにさらされると、ソール表面が溶けたようにベタついたり、変色したりすることがあります。
この「ベタベタ現象」は一度起こると自然には元に戻らず、拭き取ってもすぐに再発してしまうため、根本的な解決には**オールソール交換(ソール全交換)**が必要です。
H様からも「今後はこうしたベタつきに悩まされない素材で交換してほしい」とのご希望をいただきました。
そこで今回は、見た目の雰囲気を保ちながらも、より耐久性が高く扱いやすい素材への交換をご提案しました。
■ 分解作業 ― クラークス独特の構造に注意しながら

まずは古いソールの取り外しからスタートします。
デザートトレックは、底面の周囲をぐるりと一周「出し縫い(だしぬい)」と呼ばれる縫製で固定している構造。
この縫いを丁寧にカットしてから、ソールと中底(インソールの下の層)を一体で分解していきます。
このモデルの中底はフェルト素材が使用されています。フェルトは柔らかく足当たりが良い反面、湿気や摩擦に弱く、長期使用には向きません。実際に分解してみると、フェルトの繊維がすでに擦り切れ、ところどころ薄くなっていました。
これでは新しいソールを取り付けても安定感が損なわれる恐れがあります。

そのため今回は、本革製の中底に交換して耐久性を高めることにしました。
この本革中底は、取り外した古いソールをもとに型を取り、一枚革から新たに切り出したものです。
革は使い込むほどに足裏の形になじみ、吸湿性・通気性にも優れています。履き心地の安定感が格段に増す、いわば「靴の骨格」となる重要なパーツです。
■ 新しいソールの選定 ― Vibram4014 白ソール

今回使用したのは、Vibram(ビブラム)社の4014ソール・白。
このモデルは、レッドウィングなどのワークブーツにも採用されることが多い、厚みのあるEVA系スポンジソールです。
柔軟で軽量、さらに摩耗に強く、経年変化によるベタつきや割れにも非常に強い素材。
もともとデザートトレックのクレープソールは、ソフトな履き心地が魅力ですが、今回のVibram4014もクッション性が高く、歩行時の衝撃吸収力は十分。
しかもクレープソールよりも格段に軽量なため、長時間の歩行でも疲れにくくなります。
白いソールがアッパーのスエードと対比し、足元に軽快な印象を与える点も大きな魅力です。
■ ソール取り付け ― 接着と出し縫いでしっかり固定
中底の整形が終わったら、新しいソールの取り付けです。
まず靴底とソール両方の接着面をしっかり研磨し、下処理を行います。
この工程を丁寧に行うことで、接着強度が格段に高まります。
接着剤を塗布し、一定時間乾燥させた後、圧着機で密着。
その後、クラークス特有の構造を再現するために**出し縫い(だしぬい)**を施します。
これは、アッパーとソールの境目を縫い合わせる伝統的な製法で、見た目にも美しく、耐久性を高める重要な工程です。
糸は靴のトーンに合わせてナチュラル色を使用。
この糸色を変えるだけでも印象が大きく変わりますが、今回はクラシックな雰囲気を保つため、元の風合いに近い色味で仕上げました。
縫い上げた後、コバ(靴の側面)を丁寧に整え、ワックスで艶出し。
ソールの厚みを均一に削り、全体のバランスを整えて完成です。
■ 仕上がりと履き心地の変化

完成したデザートトレックは、見た目こそ元の雰囲気をしっかり残しながらも、ソールが白くなることで軽やかで現代的な印象に生まれ変わりました。

Vibram4014は、靴底がしっかりしていながらも弾力性があり、着地の衝撃を吸収してくれます。
歩き出した瞬間にわかる「フワッ」とした軽さは、クレープソールとはまた違った魅力です。
加えて、本革中底による安定した足裏感もポイント。
フェルト素材のようにヘタることがなく、長く履いても型崩れしにくい構造になっています。
また、湿気を吸って放出する天然皮革ならではの調湿効果により、蒸れにくく快適な履き心地をキープできます。
■ 修理後のメンテナンスについて
今回のVibram4014ソールは、スポンジ系素材の中でも特に強度と耐候性に優れています。
ただし、クレープソールと違って「削れた部分の補修」は難しいため、すり減りが進む前に早めのメンテナンスをおすすめします。
また、アッパーがスエード素材のため、汚れや色ムラを防ぐには防水スプレーの併用が有効です。
月に一度程度、スエード専用のブラシで軽くホコリを落とし、防水スプレーを薄く重ねるだけでも、風合いを長く保てます。
■ 修理を終えて
H様のデザートトレックは、ソールのベタつきという「生ゴムの宿命」から解放され、より丈夫で軽快な靴として生まれ変わりました。
見た目の印象を損なわず、むしろ都会的な清潔感が増したようにも感じます。
これでまた、街歩きや旅行など、さまざまなシーンで快適にご愛用いただけることでしょう。
靴底の素材一つで、履き心地も寿命も大きく変わります。
同じクラークスでも、「どんなシーンで履くか」「どんな素材が好きか」によって最適なソールは異なります。
いずみ靴店では、お客様のご希望を伺いながら、見た目・機能性・履き心地のバランスを考慮した修理プランをご提案しています。
【今回の修理内容】
これでH様のクラークス デザートトレックも、再び快適に街歩きを楽しめる一足となりました。
天然素材の柔らかさと、Vibramソールの機能性が融合した仕上がりです。
長く履き続けてこそ味わえる革靴の魅力を、これからも存分にお楽しみください。
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