靴修理専門店として日々さまざまな一足と向き合っていますが、今回ご紹介するのは、岡山県倉敷市にお住まいのK様からお預かりした
**レッドウィング「ベックマン」**の修理事例です。
レッドウィングといえば、アメリカを代表するワークブーツブランド。
中でもベックマンは、ワークブーツの無骨さとドレスシューズの上品さを併せ持つモデルとして、長年にわたり高い人気を誇っています。
K様もこのベックマンをとても大切に履かれており、
「できる限り長く履き続けたい」という強い思いから、今回当店へご相談くださいました。

■ ご相談内容:見た目はまだ良いが、足元に違和感が…
お預かりしたベックマンは、アッパーの革の状態が非常に良く、
定期的にお手入れをされてきたことがひと目で分かる一足でした。
しかし、足元をよく確認すると、
・ハーフソールラバーが硬化し、ひび割れが進行
・ブロックヒール内部の素材が劣化
・歩行時に「コツコツ」「グニャッ」とした違和感
といった症状が見られました。
これらの原因は、加水分解です。

■ 加水分解とは?ブーツに起こる静かなトラブル
加水分解とは、空気中の水分や湿気によって、
ゴムやポリウレタンなどの素材が化学的に分解されてしまう現象です。
特に、
・長期間履かずに保管していた
・湿度の高い日本の気候
・経年劣化
といった条件が重なると、見た目は問題なくても、
内部から静かに劣化が進行してしまいます。
K様のベックマンも、まさにこの状態。
このまま履き続けると、ある日突然ソールが剥がれたり、
ヒールが崩れてしまうリスクがありました。

■ 修理内容のご提案:加水分解しない素材へ
そこで今回ご提案したのが、
・ハーフソールラバー交換
・ブロックヒール交換
・出し縫いによる耐久性強化
という内容です。
最大のポイントは、使用する素材。
今回は、Vibram(ビブラム)2333 合成ゴムを採用しました。
■ Vibram2333 合成ゴムとは?
Vibram2333は、登山靴やワークブーツにも使用される、
非常に信頼性の高い合成ゴム素材です。
この素材の大きな特徴は、
・加水分解しない
・適度な硬さと柔軟性のバランス
・耐摩耗性が高く、削れにくい
・雨の日でも安定したグリップ力
といった点。
「今後も長く安心して履きたい」というK様のご希望に、
まさに最適な素材だと判断しました。
■ 作業工程① 既存ソール・ヒールの分解

まずは、劣化したハーフソールラバーとブロックヒールを
丁寧に分解していきます。
無理に剥がすとアッパーやミッドソールを傷めてしまうため、
一工程ずつ慎重に作業を進めます。
分解してみると、内部のゴムはすでに弾力を失い、
ボロボロと崩れ始めていました。
この状態では、本来のベックマンの履き心地は到底得られません。
■ 作業工程② 下地調整と成形
次に行うのが、下地の調整です。
古い接着剤や劣化した素材を完全に取り除き、
新しいソールがしっかりと密着する状態を作ります。
その後、Vibram2333のハーフソールとブロックヒールを、
ベックマンのシルエットに合わせて丁寧に成形。
既製品をただ貼るだけではなく、
「レッドウィングらしい雰囲気」を損なわないよう、
細部までバランスを確認しながら作業を行います。
■ 作業工程③ 出し縫いで耐久性をプラス
今回の修理では、**出し縫い(アウトステッチ)**も施しました。
出し縫いを行うことで、
・接着剤だけに頼らない構造
・剥がれにくさが大幅に向上
・歩行時の安定感アップ

といったメリットがあります。
特にワークブーツであるベックマンには、
この「縫い」の工程が非常に相性が良く、
見た目にも無骨で力強い印象を与えてくれます。
■ 仕上がり:生まれ変わったベックマン

すべての工程を終え、仕上がったベックマンは、
まさに**「新しく生まれ変わった一足」**。
・足を入れた瞬間の安定感
・地面をしっかり捉えるグリップ力
・歩くたびに感じる安心感
K様にも大変喜んでいただき、
「またこれから何年も履けますね」と
笑顔でお言葉をいただきました。
■ 靴修理は、思い出をつなぐ仕事

靴は単なる履き物ではありません。
その人の生活や思い出が、確実に刻み込まれています。
今回のベックマンも、
K様とともに多くの時間を歩んできた一足。
私たちは、その歴史を尊重しながら、
「これからの時間」を支えるお手伝いをしています。
■ お気に入りのブーツ、諦める前にご相談を
・ソールが硬くなってきた
・歩くと違和感がある
・加水分解が心配
そんな症状があれば、ぜひ一度ご相談ください。
素材選びから仕上げまで、
一足一足、心を込めて修理いたします。
足元から始まる快適な毎日を、これからも。
あなたの大切な靴に、最高のケアをお届けします👞✨