今回は、岩手県にお住まいのO様よりお預かりした ニューバランス575(New Balance 575) の修理事例をご紹介いたします。

長年履き込まれてきたお気に入りの一足ですが、かかと外側に取り付けられている樹脂製ヒールカップが加水分解によって劣化してしまったため、本革を使用して新たに作り直す修理を行いました。
スニーカーは消耗品と思われがちですが、適切な修理を行えば長く履き続けることができます。特にニューバランスのように作りの良いスニーカーは、ソール交換や各パーツの修理によって寿命を大きく延ばすことが可能です。
今回はそんな修理の一例として、ニューバランス575のヒールカップ交換修理の工程をご紹介します。
ニューバランス575とは|長年愛されるクラシックモデル

ニューバランス575は、1988年に登場したクラシックランニングモデルで、500番台シリーズの中でも人気の高いスニーカーです。もともとはオフロードランニング用として開発されたモデルで、安定感のある丸みのあるシルエットとグリップ力の高いアウトソールが特徴です。
上質なレザーやヌバックを使用したモデルも多く、履き心地の良さと高級感を兼ね備えたスニーカーとして、現在でも多くのファンに愛されています。
今回お預かりしたO様の575も、長年履き込まれており、アッパーの革には良い風合いが出ていました。スニーカーは履き込むほど足に馴染みますので、新品にはない履き心地が生まれます。そうした理由から、「傷んでも修理して履き続けたい」という方が多いモデルでもあります。
以前にウェッジヒール交換を行った一足
実はこのニューバランス575、以前にも当店で修理を行った靴でした。
数年前、ミッドソールのウェッジヒール部分が加水分解を起こしたため、ウェッジヒール交換修理を行っています。
スニーカーのミッドソールにはポリウレタン素材が使用されていることが多く、この素材はクッション性に優れている反面、湿気などの影響で経年劣化を起こすことがあります。
一般的にはポリウレタン素材は製造から3~5年ほどで加水分解が始まるとされており、日本のような湿度の高い環境では劣化が早まる場合もあります。
そのため、長年履いているスニーカーではミッドソールの交換修理を行うことも珍しくありません。
当時の修理では、ヒールカップはまだ健全な状態でしたので交換は行わず、ウェッジヒール部分のみの修理で対応しました。
今回の不具合|ヒールカップの加水分解

その後数年が経過し、O様より
「かかとの外側のパーツがボロボロになってきた」
というご相談をいただきました。
靴を確認すると、かかと外側に取り付けられている樹脂製ヒールカップが加水分解を起こしており、表面が割れたり崩れたりしている状態でした。
ヒールカップとは、スニーカーのかかと外側に取り付けられている樹脂製の補強パーツです。
このパーツには
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かかとの形状を保護する
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靴の安定性を高める
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デザインのアクセント
といった役割があります。
特にニューバランスのクラシックモデルでは、ヒールカップの存在がデザイン上の特徴の一つにもなっています。
しかし、このパーツは樹脂素材で作られていることが多いため、長い年月が経つと加水分解によって劣化してしまうことがあります。
今回の575も、長年の使用によってヒールカップが硬化し、触ると崩れてしまう状態になっていました。
劣化したヒールカップの取り外し
まずは劣化したヒールカップを取り外します。
この作業は見た目以上に慎重さが必要です。ヒールカップは接着や縫製で固定されていることが多く、無理に剥がすとアッパーの革を傷めてしまう可能性があります。
さらに、加水分解した樹脂は非常にもろくなっているため、粉状に崩れてしまうこともあります。
そのため、
という点に注意しながら、丁寧に取り外していきます。
パーツを取り外した後は、接着剤や劣化した素材をきれいに取り除き、次の工程に備えます。
本革で新しいヒールカップを製作

今回の修理では、元の樹脂パーツの代わりに本革を使用してヒールカップを作成しました。
本革を使用する理由はいくつかあります。
まず耐久性です。本革は非常に丈夫で、適切に使用すれば長期間にわたって形状を維持することができます。
また、天然素材のため樹脂のような加水分解の心配がありません。
さらに、本革は履き込むほどに柔らかくなり、靴の形に馴染んでいくという特徴もあります。そのため、履き心地の面でも非常に優れた素材です。
靴の形状に合わせて型取りを行い、本革を裁断し、立体的な形状になるよう成形していきます。
ヒール部分はわずかな形状の違いでも仕上がりに影響するため、靴に合わせて細かな調整を繰り返しながら作業を進めていきます。
八方ミシンでしっかり縫い付け

新しく作成した本革ヒールカップは、八方ミシンを使用して縫い付けました。
八方ミシンとは、靴のような立体物を縫製するための特殊なミシンです。通常のミシンでは縫えない場所でも、靴の形状に合わせて自由な角度から縫うことができます。
ヒール部分は曲面になっているため、通常の平面ミシンでは縫うことができません。
しかし八方ミシンを使用することで、靴の形状を保ったまま正確に縫製することが可能になります。
縫い目の位置や糸のテンションにも注意しながら、丁寧に縫い付けていきます。
修理完了|安心して履ける状態に

こうして本革ヒールカップの取り付けが完了しました。
修理後の靴は、かかと部分がしっかりと保護され、見た目も自然な仕上がりになっています。
本革を使用しているため、履き込むことでさらに靴に馴染み、味わい深い雰囲気へと変化していくことでしょう。
以前行ったウェッジヒール交換修理に続き、今回のヒールカップ交換によって、このニューバランス575は再び安心して履いていただける状態になりました。
スニーカーは修理すれば長く履ける
スニーカーはソールだけでなく、今回のようにさまざまなパーツが経年劣化することがあります。
しかし、
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ソール交換
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ミッドソール修理
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ヒールカップ交換
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アッパー補修
など、適切な修理を行うことで、お気に入りの靴を長く履き続けることができます。
長年履いてきた靴には、新品にはない履き心地と愛着があります。
O様のニューバランス575も、これからまた長く活躍してくれることでしょう。
もしお手持ちのスニーカーで
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ソールが崩れてきた
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パーツが割れてしまった
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加水分解してしまった
などの症状がありましたら、ぜひ一度ご相談ください。
大切な一足を、これからも長く履き続けていただけるよう、丁寧に修理させていただきます。