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倉敷市 N様 REDWING ベックマン ハーフソールラバーが加水分解したため 張替え Vibram2333にて

倉敷市にお住まいのN様より、大切に履き続けてこられたワークブーツの修理をご依頼いただきました。今回お預かりしたのは、アメリカの老舗ブーツブランドである Red Wing Shoes の中でも、クラシックと実用性を兼ね備えた人気モデル「ベックマン」です。無骨さと上品さを併せ持つこの一足は、履き込むほどに味わいが増し、経年変化を楽しめることでも多くの愛用者を魅了しています。

N様のベックマンは長年の使用により、ハーフソールラバー部分に明らかな劣化が見られる状態でした。表面はベタつき、指で触れると粘り気を感じるほど柔らかくなっており、さらに部分的には割れや欠けも発生していました。歩行時のグリップも低下しており、このままでは快適に履き続けることが難しい状態です

このような症状の原因は「加水分解」と呼ばれる素材劣化です。特に塩ビ(PVC)系のラバーは、空気中の水分や温度変化の影響を受けやすく、時間の経過とともに化学的に分解が進みます。その結果、ゴム本来の弾力を失い、ネチョネチョとした質感になったり、最終的にはボロボロと崩れてしまうのです。外見上はまだ使えそうに見えても、内部の劣化が進んでいるケースも多く、気づいた時には歩行性能が大きく損なわれていることも珍しくありません。

ベックマンのようにレザーソールの上にハーフラバーを貼る仕様は、クラシックな見た目を保ちながら実用性を高める優れた構造ですが、素材選びによって耐久性は大きく変わります。今回の修理では、再発リスクを抑えつつ長く安心して履いていただけるよう、アウトソール素材の選定から丁寧に行いました。

そこで採用したのが、世界中の靴メーカーや修理職人から高い信頼を得ている Vibram 社の「Vibram2333」です。このソールは合成ゴムをベースにした高耐久素材で、耐摩耗性と柔軟性のバランスに優れているのが特徴です。特に加水分解に対する耐性が高く、塩ビ系素材のように急激な劣化が起こりにくいため、長期的な使用を前提とした修理に非常に適しています。

修理工程はまず、劣化したハーフソールを慎重に剥がす作業から始まります。加水分解したラバーは粘着質になっていることが多く、単純に剥がすだけでは接着面に残留物が残ってしまいます。そのため、専用の工具と溶剤を使い、革底を傷めないよう少しずつ丁寧に除去していきます。この下地処理が仕上がりの耐久性を大きく左右するため、最も神経を使う工程のひとつです。

下地が整ったら、ソール面の平滑性を確認し、必要に応じて微調整を行います。長年の使用でわずかな歪みや摩耗が生じている場合もあるため、均一な接着面を作ることで歩行時の安定感が向上します。その後、Vibram2333をブーツの形状に合わせて正確に裁断し、接着剤を塗布して圧着します。

今回の修理では、単なる貼り替えにとどまらず「出し縫い」による縫い直しも実施しました。出し縫いはソールと本体を機械で縫い合わせる伝統的な製法で、接着だけに頼らない強固な固定が可能になります。特にワークブーツのように歩行負荷が大きい靴では、この工程が耐久性を大きく高めます。糸のピッチやテンションを均一に保ちながら縫い進めることで、見た目の美しさと機能性の両立を図りました。

縫製後はコバ周りの仕上げを行い、全体のバランスを整えます。側面のラインを滑らかに整形し、磨きをかけることで、修理後とは思えない自然な仕上がりに。オリジナルの雰囲気を損なわないよう配慮しつつ、機能面では確実にグレードアップした状態へと生まれ変わりました。

完成したベックマンは、見た目にはクラシックな佇まいをそのままに、足元の安心感が格段に向上しています。Vibram2333の適度なグリップ力により、滑りやすい路面でも安定した歩行が可能になり、出し縫いによる強固な固定によって長期使用にも十分耐えうる仕様となりました。

加水分解は避けられない経年劣化のひとつですが、素材選択と適切な修理によって靴の寿命は大きく延ばすことができます。特にお気に入りの一足であればあるほど、単なる消耗品としてではなく、メンテナンスを重ねながら履き続ける価値があります。今回の修理はまさに、その好例と言えるでしょう。

N様のベックマンは、これから再び日常の足元を支え、履き込むほどに新たな表情を見せてくれるはずです。ソールが新しくなったことで歩行性能が向上しただけでなく、安心して長く付き合っていける一足へと生まれ変わりました。

靴は単なる道具ではなく、持ち主の歩んできた時間を刻む存在です。適切なタイミングで手入れや修理を行うことで、その歴史をこれからも積み重ねていくことができます。今回のようにハーフソールの劣化でお悩みの場合でも、素材や製法を見直すことで、見た目と機能を両立した最適な修理が可能です。

これからも安心して履き続けていただけるよう、細部まで丁寧に仕上げた今回の修理。N様の大切なベックマンが、これから先も長く活躍してくれることを心より願っております。

大阪府 K様 婦人ロングブーツ履き口内張り補修 加水分解

大阪府にお住まいのK様より、婦人ロングブーツの履き口内張り補修をご依頼いただきました。
長年愛用されてきたブーツですが、履き口の内側に使われている素材の劣化が進み、見た目にも触感にも違和感が出てきたことがきっかけでご相談くださいました。

今回の修理は、単に破れを塞ぐような部分補修ではなく、構造そのものに手を入れる必要がある内容でした。履き口の仕上がりはブーツ全体の印象や履き心地に直結するため、慎重な判断と丁寧な工程が求められます。ここでは、状態の確認から仕上げまでの流れを詳しくご紹介いたします。

ご依頼品の状態

拝見したブーツは、履き口の内側約7cm幅に合成皮革が使用されている仕様でした。
この合成皮革部分が経年劣化により加水分解を起こし、表面が粉状になって剥がれ落ちている状態です。

加水分解は合成皮革に起こりやすい代表的な劣化で、湿気や温度変化の影響を受けながら徐々に素材の結合が弱まり、最終的には触れるだけで崩れてしまうほど脆くなります。今回のブーツも例外ではなく、軽く指でなぞるだけで黒い粉が付着するほど劣化が進んでいました。

この状態を放置すると、見た目の問題だけでなく、
・足当たりの悪化
・衣類への付着
・構造の弱体化
など、実用面でも支障が出てしまいます。

さらに今回のブーツは、履き口の表側に縫い目が見えないデザインでした。つまり、外側から単純に革を重ねて補修する方法は採れず、構造を一度開いて内部から修復する必要があります。

修理方針の決定

K様には状態をご説明し、以下の方法をご提案しました。

・劣化した合成皮革はすべて除去
・耐久性の高い本革で内張りを新規作製
・外観を変えないよう内部から補修
・履き口を元の構造に復元

この方法であれば見た目を損なわず、今後も長くお使いいただけます。
ご了承をいただき、作業に取り掛かりました。

作業工程① 履き口の分解

まずは履き口を慎重に開いていきます。
ブーツの履き口は外装革・芯材・内張りが一体となって縫製されているため、糸をほどく位置を誤ると形状が崩れてしまいます。

縫製ラインを確認しながら、必要最小限の範囲で分解。
内部の構造を露出させ、劣化した内張りにアクセスできる状態にします。

この工程では「どこまで開くか」の見極めが重要で、開きすぎると復元時の精度が落ち、開き足りないと作業性が悪くなります。経験に基づく判断が仕上がりを左右します。

作業工程② 劣化素材の除去と下地調整

履き口の内側に残っていた合成皮革をすべて取り除きます。
劣化素材が残っていると新しい革の密着が悪くなるため、粉状になった表面や古い接着剤を丁寧にクリーニングします。

この下地処理は完成後には見えない部分ですが、耐久性を大きく左右する重要な工程です。
表面を整え、革を貼り付けるためのベースを作っていきます。

作業工程③ 本革内張りの作製

次に、新しい内張りとなる本革を準備します。
履き口は円筒状で、しかもわずかなテーパーがついているため、平面の革をそのまま貼るとシワや浮きが生じてしまいます。

そこで、現物から型を取り、曲面に沿う形状に裁断。
仮合わせを繰り返しながら、違和感のないフィット感になるよう微調整していきます。

本革は耐久性だけでなく、通気性や肌触りにも優れているため、履き心地の向上も期待できます。

作業工程④ 内側からの貼り込みと縫製

準備した本革を履き口の内側に貼り込みます。
今回の修理のポイントは「外から縫い目を見せない」こと。そのため、内側に巻き込むように配置し、構造の内側で縫い付けを行います。

革のテンションを均一に保ちながら縫製することで、シワのない自然な仕上がりになります。
縫製後、履き口のラインが崩れていないかを確認し、必要に応じて微調整を行います。

作業工程⑤ 履き口の復元

最後に、分解した履き口を元の構造に縫い合わせます。
この工程では、最初にほどいた縫い穴を正確に拾うことで、仕上がりの違和感を最小限に抑えます。

縫製が完了すると、履き口は外観上ほとんど修理跡が分からない状態になります。
内側にはしっかりとした本革が入り、見た目と強度の両方が回復しました。

仕上がりと履き心地

完成したブーツは、履き口の質感が格段に向上し、手で触れたときの安心感がはっきりと伝わってきます。
内側の剥がれや粉落ちも完全に解消され、実用面の不安もなくなりました。

見た目はほぼオリジナルのままですが、耐久性は大きく向上しています。
今後は本革特有のしなやかさが足に馴染み、より快適にお履きいただけるでしょう。

修理の価値

履き口の補修は外からは分かりにくい修理ですが、実際にはブーツの寿命を大きく延ばす重要な作業です。
特に合成皮革の加水分解は避けられない劣化のひとつですが、本革に置き換えることで長期的な耐久性を確保できます。

靴は足元を支える道具であると同時に、持ち主の時間を共に歩んできた存在でもあります。
だからこそ、修理には単なる機能回復以上の意味があると感じています。

来シーズンへ

今回の補修により、履き口の強度と快適性はしっかりと回復しました。
これで来シーズンも安心してお使いいただける状態です。

お気に入りの一足が再び活躍できるのは、私たちにとっても大きな喜びです。
これからまた季節の装いの中で、このブーツが活躍してくれることでしょう。

最後に

履き口の劣化は「もう寿命かな」と思われがちな症状ですが、適切な方法を選べば十分に再生が可能です。
特に今回のように構造を開いて内部から補修することで、見た目を損なわず機能を回復できます。

大切な靴に不具合を感じたときは、ぜひ一度ご相談ください。
状態を丁寧に確認し、最適な方法をご提案いたします。

大阪府のK様、このたびは大切なブーツの修理をお任せいただきありがとうございました。
新しく生まれ変わった履き口とともに、これからも長くご愛用いただけましたら幸いです。

来シーズンはまた、このブーツが軽やかに活躍してくれることでしょう。✨

静岡県H様ご依頼|ニューバランス576 ヒールカップ交換修理レポート

このたびは、静岡県にお住まいのH様より、大切に履き続けてこられたニューバランス576の修理をご依頼いただきました。長年のご愛用により、履き心地の要となるヒールカップ部分にダメージが生じており、「まだ履きたい」というお気持ちにお応えするべく、ヒールカップ交換という形でリペアを実施いたしました。

ニューバランス576は、クラシックランニングモデルとして長く愛されてきた一足であり、足を包み込むフィット感と安定性の高さが特徴です。その履き心地を支える重要なパーツのひとつが、かかと内部のヒールカップです。ここがしっかりしていることで、歩行時のブレを防ぎ、靴全体の寿命にも大きく影響します。


ご依頼時の状態|加水分解によるヒールカップの破損

H様の576は、外観こそ大切に履かれていた印象でしたが、内部のヒールカップに明らかな劣化が見られました。樹脂製のヒールカップは、長年の使用や湿気・温度変化の影響を受けることで、加水分解を起こしやすい素材です。今回も例外ではなく、素材が脆くなり、部分的に割れや欠けが発生していました。

ヒールカップが破損したまま履き続けると、かかとが安定せず、歩行時のフィット感が損なわれるだけでなく、アッパーの型崩れやソールの偏摩耗にもつながります。見た目では気づきにくい箇所ですが、履き心地を左右する非常に重要なポイントです。

H様からは
「履き慣れたこの感覚を残したまま、できるだけしっかり直したい」
というご要望をいただきました。そこで今回は単なる補修ではなく、耐久性とフィット感の向上を目的とした本革ヒールカップの新規製作をご提案しました。


修理方針|本革によるヒールカップの新規制作

一般的にスニーカーのヒールカップは樹脂成形ですが、修理では同素材を完全再現することが難しいケースが多くあります。そこで当店では、耐久性と足当たりの良さを両立するため、本革を用いた製作を採用しました。

本革を使用するメリットは大きく3つあります。

  1. 耐久性の向上
     樹脂に比べ経年劣化が穏やかで、割れにくい

  2. 足当たりの柔らかさ
     履き込むほど足に馴染む

  3. 修理後の再調整が可能
     再補修やメンテナンスがしやすい

特にニューバランスのクラシックモデルは履き心地を重視される方が多く、革製ヒールカップは非常に相性の良い仕様です。


作業工程|八方ミシンによる立体縫製

修理はまず、既存のヒールカップを慎重に取り外すところから始まります。内部構造を傷めないよう、接着や縫製の状態を確認しながら分解を行いました。

次に、靴の内部形状に合わせて型紙を作成します。ヒール部分はわずかな形状の違いでもフィット感に影響するため、実物合わせで微調整を重ねました。

本革を裁断した後、立体的に成形しながら八方ミシンで縫製します。八方ミシンは立体物を自在に縫える特殊ミシンで、スニーカーの内部補修には欠かせない設備です。縫い目のテンションや位置を細かく調整し、履いたときに違和感が出ないよう仕上げていきます。

縫い付け後は内部の段差や当たりを丁寧に整え、クッション材とのバランスを確認。最後に全体のフィット感をチェックし、違和感がないことを確認して作業完了となります。


仕上がり|見た目と機能性の両立

完成後のヒールカップは、外観からは修理箇所がほとんど分からない自然な仕上がりとなりました。革ならではの落ち着いた質感が加わり、むしろ高級感が増した印象です。

機能面では、かかとのホールド感が明確に向上し、歩行時の安定性が改善。履き込むほどに革が足に馴染み、より快適なフィット感へと変化していきます。

H様にも
「履いた瞬間に安心感が違う」
とお喜びいただくことができました。


ヒールカップ交換という選択肢の価値

スニーカー修理というとソール交換が注目されがちですが、実はヒールカップの状態も履き心地に大きく影響します。

・かかとがグラつく
・内側が割れている
・履くと違和感がある

こうした症状がある場合、ヒールカップ交換で大きく改善するケースが多くあります。

特にクラシックモデルや履き慣れた一足は、新品に買い替えるよりも修理した方が足に合うことも珍しくありません。靴は単なる消耗品ではなく、履く人の足の形や歩き方に合わせて変化していくものです。その積み重ねを活かせるのが修理の大きな魅力です。


長く履くためのメンテナンスのすすめ

ヒールカップの劣化は、使用環境や保管方法によって進行スピードが変わります。長持ちさせるためには、

・湿気の少ない場所で保管する
・連続使用を避ける
・定期的に内部を乾燥させる

といったケアが効果的です。小さな違和感の段階でメンテナンスを行うことで、大掛かりな修理を防ぐことにもつながります。


おわりに|お気に入りの一足をこれからも

今回の修理は、単に壊れた部分を直すだけでなく、これからも快適に履き続けていただくための“再設計”とも言える内容でした。靴には履いてきた時間や思い出が刻まれています。その価値をそのままに、さらに長く使える状態へと導くことが私たちの役目です。

小さな破れや違和感でも、適切な処置を行えば履き心地は大きく変わります。お気に入りの靴をこれからも楽しんでいただくために、気になる点があればいつでもご相談ください。

大切な一足に、新たな命を吹き込むお手伝いをこれからも続けてまいります。

岡山市 Y様 NewBalance 1300 加水分解による オールソール交換修理しました

岡山県岡山市のY様より、大切に履き続けてこられた New Balance の名作モデル「1300」のオールソール交換修理をご依頼いただきました。

長年にわたり足元を支えてきた一足には、履き込まれた証である風合いとともに、ミッドソールの加水分解という避けられない経年変化が見られました。特にウェッジヒール部分はスポンジが崩れ、歩行時の安定性やクッション性が大きく損なわれている状態でした。

今回の修理の目的は、単に靴底を新しくするだけではありません。オリジナルの履き心地やフォルムを尊重しながら、今後も安心して履き続けられる耐久性を持たせること。そして、Y様が再びこの靴で歩く楽しさを感じられるようにすることです。そのため、分解から再構築まで一つひとつの工程を丁寧に進めていきました。

まず最初の工程は、劣化したソールの取り外しです。加水分解したポリウレタンは粉状になっている部分もあり、無理に剥がすとアッパーを傷めてしまう恐れがあります。そのため、熱と専用工具を使いながら、接着層の状態を見極めつつ慎重に分解を行いました。分解後に現れる中底の状態は、靴の寿命を左右する重要なポイントです。今回は大きな損傷がなく、構造的に再利用可能と判断できたため、クリーニングと補強処理を施しました。

次に取り掛かったのは、新しいミッドソールの設計です。オリジナルのシルエットを保つため、残っていたソールの厚みやカーブを細かく採寸し、EVAスポンジを積層してウェッジ形状を再現しました。EVAは軽量でクッション性に優れ、加水分解しにくい素材のため、長期的な耐久性の面でも非常に有効です。単に貼り合わせるのではなく、削り出しによって曲線を整え、歩行時の体重移動が自然に行えるようバランスを調整しています。

ウェッジの形成が終わると、いよいよアウトソールの装着です。今回は耐摩耗性とグリップ力のバランスに優れた Vibram の298Cを採用しました。このソールは、都市部の舗装路から日常使いまで幅広いシーンで安定した性能を発揮するため、1300のキャラクターにもよく合います。接着面の下処理を丁寧に行い、専用プレス機で圧着することで、剥がれにくく一体感のある仕上がりを実現しました。

また、今回の修理で重要だったのが、靴全体のバランス調整です。ソールを新しくすると、わずかな厚みの違いでも履き心地に影響が出ます。そこで、左右差の確認や接地面の微調整を繰り返し、歩行時に違和感が出ないよう細部まで仕上げました。この工程は見た目には分かりにくい部分ですが、実際の履き心地を大きく左右する職人の腕の見せどころです。

ヒールカップについては、今回の点検時点で割れや変形は見られず、しっかりとしたホールド感を維持していました。そのため大掛かりな補修は行わず、クリーニングと保湿ケアのみ実施しています。構造が健全な部分は無理に手を加えないことも、靴を長持ちさせるための大切な判断です。

すべての工程を終えた後、最終チェックとして実際に屈曲テストと歩行シミュレーションを行いました。新しいウェッジソールは適度な反発力を持ち、踏み出しの際のスムーズさがしっかり感じられます。アウトソールのグリップも良好で、日常の使用において安心して履いていただける状態に仕上がりました。

こうして生まれ変わった1300は、見た目の美しさだけでなく、機能面でも新たな命を吹き込まれています。履き慣れた靴には、新品にはないフィット感や思い出が宿っています。修理とは単なるメンテナンスではなく、その価値を未来へつなぐ作業だと私たちは考えています。

今回のように、ミッドソールの加水分解はスニーカーにとって避けて通れない問題ですが、適切な方法で再構築すれば、再び長く活躍できる状態に戻すことが可能です。お気に入りだからこそ手放せない一足、もう履けないと諦めていた靴でも、修理という選択肢で新たな可能性が生まれます。

Y様の大切な一足が、これからも日々の暮らしの中で活躍し続けることを願いながら、心を込めて仕上げさせていただきました。歩くたびに感じるクッション性と安定感、そして履き慣れた安心感を、ぜひこれからもお楽しみいただければと思います。

私たちは、靴を単なる消耗品ではなく「長く付き合う道具」として考えています。修理によって寿命を延ばすことは、履き心地の向上だけでなく、愛着やストーリーを守ることにもつながります。どんな小さな違和感でも、早めにメンテナンスを行うことで靴は驚くほど長持ちします。

もし、ソールの劣化や履き心地の変化を感じた際は、ぜひお気軽にご相談ください。素材や構造を見極め、それぞれの靴に最適な方法で修理をご提案いたします。大切な一足をこれからも快適に履き続けていただけるよう、確かな技術と経験でサポートいたします。

これからも一足一足に真摯に向き合い、履く人の毎日を支える仕事を続けてまいります。皆様のご来店・ご相談を心よりお待ちしております。

広島県 T様 REDWING ショートブーツ ソール交換しました

広島県のT様、この度は大切なブーツの修理をご依頼いただき、誠にありがとうございました。長年履き込まれた一足をお預かりし、再び快適に履いていただける状態へと仕上げることができたことを、私たちも大変嬉しく思っております。

今回お持ち込みいただいたのは、世界中にファンを持つワークブーツブランド、RED WING のショートブーツ。堅牢な作りと履き込むほどに味わいが増すレザーが魅力のモデルで、日常使いからちょっとした外出まで幅広く活躍してきたご様子でした。ブーツ全体にはしっかりとしたエイジングが見られ、T様がこれまで大切に履いてこられた時間が感じられる、非常に良いコンディションの一足でした。

しかしながら、ソール部分は経年による硬化が進んでおり、クッション性の低下やグリップ力の減少が見受けられる状態でした。ラバーソールは長年の使用や保管環境の影響を受けると、弾力を失い硬くなることがあります。こうした状態を放置すると、歩行時の疲労が増すだけでなく、滑りやすさやひび割れの原因にもなるため、適切なタイミングでの交換が重要です。

そこで今回の修理では、アウトソールを新品へ交換する「オールソール(アウトソール交換)」を実施いたしました。採用したのは、耐久性と軽快な履き心地のバランスに優れた Vibram 4014ソール(ホワイト)。クッション性のある軽量ラバーを使用したこのソールは、ワークブーツの重厚感を保ちながらも、日常使いに適した快適さを提供してくれる定番素材です。

ホワイトソールの特徴は、見た目の軽やかさと程よいカジュアル感。レザーの風合いが深まったアッパーとのコントラストが美しく、リペア後はまるで新しいブーツのようなフレッシュな印象に仕上がりました。ブーツ本来の雰囲気を損なうことなく、むしろ魅力を引き立てるカスタムと言えるでしょう。

修理工程では、まず古いアウトソールを丁寧に取り外し、接着面を整える下処理を行います。この工程は仕上がりの耐久性を大きく左右する重要な作業で、残った接着剤や汚れをしっかり除去し、平滑な面を作ることで新しいソールの密着度を高めます。その後、接着と圧着を行い、必要に応じてコバ周りを整形。細部までバランスを確認しながら仕上げていきます。

今回のブーツは、ミッドソール(中間層)の状態が非常に良好でした。硬化や割れ、沈み込みといった劣化が見られなかったため、交換せずそのまま活かしています。ミッドソールは履き心地を左右する重要なパーツですが、状態が良ければ無理に交換する必要はありません。元の構造を活かすことで、履き慣れたフィット感を保ちながら修理できるのも大きなメリットです。

修理後の履き心地は、ソールの弾力が戻ったことでクッション性が向上し、歩行時の衝撃が和らぐ仕上がりとなっています。また、Vibram4014特有のしなやかさにより、足運びが軽く感じられるはずです。見た目の変化だけでなく、機能面でもしっかりとリフレッシュされた一足になりました。

ブーツは「消耗品」でありながら、「育てる楽しみ」がある数少ないアイテムです。特にRED WINGのような堅牢な作りの靴は、適切なメンテナンスと修理を重ねることで10年、20年と履き続けることも可能です。ソール交換はその中でも最も効果的なメンテナンスのひとつで、履き心地を大きく改善しつつ、靴の寿命を大きく延ばすことができます。

長く履くためのポイントとしては、
・定期的なブラッシングと保湿(レザーケア)
・雨に濡れた際のしっかりした乾燥
・連続着用を避け、休ませる
といった基本的なお手入れがとても重要です。これらを心がけることで、アッパーのコンディションを良好に保ち、次のソール交換まで安心して履いていただけます。

今回の修理でT様のブーツは、これからまた新たな時間を刻んでいく準備が整いました。履き込むほどに増していく革の風合いと、交換したばかりのソールの軽快さ。その両方を楽しみながら、日々のコーディネートやお出かけにぜひご活用いただければ幸いです。

私たちにとって修理とは、単に壊れた部分を直す作業ではなく、「お客様と靴のこれからの時間をつなぐ仕事」だと考えています。一足一足の背景にある思い出や愛着を大切にしながら、最適な方法をご提案し、丁寧に仕上げることを常に心がけています。

改めまして、広島県のT様、この度はご依頼いただき本当にありがとうございました。生まれ変わったブーツとともに、これからもたくさんの素敵な場所へ出かけていただければ嬉しいです。

靴のソール交換やメンテナンス、カスタムのご相談はいつでもお気軽にどうぞ。大切な一足を、これからも長く楽しんでいただくお手伝いをさせていただきます。👞✨

山口県のお客様より|Joyaウォーキングシューズのオールソール交換修理事例

― 加水分解した靴底をEVA三層構造で再構築し、TOPYクロコ柄ソールで美しく再生 ―

山口県にお住まいのお客様より、長年大切に履かれてきたJoya(ジョーヤ)のウォーキングシューズをお預かりいたしました。

「履き心地がとても気に入っていて、できればこれからも履き続けたいのですが、靴底が崩れてきてしまって……」

そんなご相談から始まった今回の修理。拝見すると、ミッドソール部分のポリウレタンが加水分解を起こし、ソール全体が脆く崩れ始めている状態でした。

Joyaは“やわらかさ”と“衝撃吸収性”に優れた構造が特徴のウォーキングシューズです。その独特の履き心地に魅了され、長年愛用されている方も少なくありません。しかし、純正ソールに使用されているポリウレタン素材は、経年や湿気の影響により加水分解を起こす性質があります。

今回は、その大切な一足を「これからも安心して履ける靴」へと生まれ変わらせるオールソール交換修理を行いました。


■ 加水分解とは何か?Joyaに起こりやすい劣化症状

加水分解とは、空気中の水分と化学反応を起こし、ポリウレタン素材が分解・崩壊してしまう現象です。

・ソールを指で押すとボロボロと崩れる
・歩くと黒い粉が出る
・突然ソールが割れる、剥がれる

こうした症状は、履いていなくても進行します。つまり「大切に保管していたのに、久しぶりに履いたら壊れた」というケースも少なくありません。

今回お預かりしたJoyaも、ミッドソールが全体的に劣化し、側面のポリウレタンが崩れ始めていました。アウトソールも摩耗が進んでおり、部分修理では対応できない状態だったため、オールソール交換をご提案いたしました。


■ 修理工程①|劣化ソールの完全除去

まずは既存のソールを丁寧に分解します。

加水分解したポリウレタンは非常に脆く、削るというより“取り除く”作業になります。崩れた素材を残したまま新しいソールを取り付けると、接着不良や剥がれの原因になるため、劣化部分は徹底的に除去します。

中底(インソール下の構造部分)まで状態を確認し、再利用できる部分と補強が必要な部分を見極めます。今回のケースでは、中底は健在でしたので、クリーニングと補強処理を施して活かすことにしました。


■ 修理工程②|EVAスポンジ三層構造でミッドソールを再構築

Joyaの特徴は、何といっても独特の厚みとローリング構造による歩行サポート機能です。

その履き心地をできる限り再現するため、今回はEVAスポンジを三層構造で使用しました。

EVA素材のメリットは:

・加水分解しない
・軽量でクッション性が高い
・加工がしやすく、曲線を美しく成形できる
・耐久性に優れている

まずはベース層を形成し、そこに硬度の異なるEVAを重ねることで、クッション性と安定性のバランスを調整します。

単純に厚みを出すだけではなく、Joya特有の美しい曲線と前傾バランスを意識しながら、削りと成形を繰り返します。この工程はまさに“立体造形”の作業。ミリ単位で削りながら、歩行時の体重移動を想定してフォルムを整えていきます。

三層にすることで、衝撃吸収・安定性・耐久性の三要素を確保。これにより、元の履き心地に近づけながらも、より長持ちする構造へと進化させました。


■ 修理工程③|側面の接着跡を本革縫い付けで美しく補修

加水分解したポリウレタンを除去すると、どうしても側面に接着跡や段差が残ります。

ここをそのままにすると、見た目の美しさが損なわれてしまいます。そこで今回は、本革を使用し、側面を丁寧にカバーしました。

革をただ貼るのではなく、ミシンでしっかりと縫い付けています。

・強度を高める
・将来的な剥がれを防止する
・デザイン性を向上させる

縫い付けることで、構造的な一体感が生まれ、見た目も自然に仕上がります。修理でありながら、どこか“カスタム”のような高級感も感じられる仕上がりになりました。


■ 修理工程④|フランスTOPY社クロコ柄アウトソールで仕上げ

アウトソールには、フランスTOPY(トピー)社製のクロコ柄ラバーソールを採用しました。

TOPY社はヨーロッパで高い評価を受けている老舗ソールメーカー。耐摩耗性に優れ、グリップ力も高く、実用性とデザイン性を兼ね備えています。

クロコ柄は:

・滑りにくい
・高級感がある
・スタイリッシュな印象になる

ウォーキングシューズでありながら、街履きとしても映える仕上がりになりました。

EVAミッドソールとの相性も良く、軽さを保ちながら耐久性を確保しています。


■ 修理後の仕上がりと履き心地

完成した一足は、まるで新品のような佇まい。

しかし中身は、加水分解の心配がない構造へとアップデートされています。

・軽量
・クッション性良好
・安定感のある接地
・長期間使用可能

お客様からも「これならまたたくさん歩けそうです」と嬉しいお言葉をいただきました。

靴は単なる道具ではありません。歩いてきた時間の記憶が詰まった存在です。その一足を、これからも共に歩める形へと再生すること。それが私たちの使命です。


■ Joyaやウォーキングシューズの加水分解でお困りの方へ

・ソールが割れてしまった
・久しぶりに履いたら崩れた
・メーカー修理ができないと言われた
・履き心地を保ったまま直したい

そのようなお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。

素材の特性を理解し、用途に合わせた最適な構造をご提案いたします。


■ お気に入りの靴を、これからも

今回のJoyaは、加水分解という避けられない劣化を乗り越え、新たな構造で生まれ変わりました。

EVA三層構造による安定感
本革縫い付け補修による美しさ
TOPYクロコ柄ソールによる耐久性とデザイン性

修理は「元に戻す」だけではありません。
「これから先をより良くする」仕事でもあります。

山口県でウォーキングシューズ修理、Joya修理、オールソール交換をご検討の方は、ぜひ当店へ。

あなたの大切な一足に、新たな旅路を。

ご相談・お見積りはお気軽にどうぞ。
皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。

静岡県Y様 ニューバランス990 オールソール交換修理事例

― 硬化したソールをVibram298Cで再生 ―

こんにちは。靴修理専門店として、日々さまざまな一足と向き合っております。今回ご紹介するのは、静岡県にお住まいのY様よりお預かりした「ニューバランス990」のソール交換修理事例です。

ニューバランス990といえば、1982年の誕生以来、ランニングシューズとして、そしてタウンユースのスニーカーとしても高い支持を受け続けている名作モデルです。優れたクッション性、安定感、そして上質なアッパー素材。履き心地とデザイン性を両立させた完成度の高い一足として、多くのファンに愛されています。

Y様も長年この990をご愛用されており、「履き心地が良くて、つい手に取ってしまう一足」とのことでした。しかし最近、歩行中に違和感を感じるようになったそうです。拝見すると、アウトソールは全体的に摩耗が進み、特にかかと部分は削れが顕著。さらに、ゴム底の表面が硬化し始めており、本来の弾力が失われつつある状態でした。

■ ソールの硬化がもたらす影響

スニーカーのソールは、単に「地面と接するゴム」ではありません。クッション性、屈曲性、グリップ力、衝撃吸収性など、歩行の快適さを左右する重要な役割を担っています。

ゴムは経年変化により徐々に硬化していきます。紫外線や湿度、使用頻度などの影響を受け、弾力を失い、滑りやすくなり、衝撃吸収性も低下します。硬化したソールは地面からの衝撃をダイレクトに足へ伝えてしまい、長時間歩行時の疲労感の増加や、膝・腰への負担につながることもあります。

Y様の990は、アッパー部分には目立ったダメージはなく、内部構造も良好な状態でした。つまり、問題はあくまで「ソール」。この部分を適切に交換することで、再び快適な履き心地を取り戻せると判断しました。

■ 分解・下地処理

まずは既存のアウトソールを丁寧に分解していきます。ニューバランス990は複層構造のソールを採用しており、ミッドソールとアウトソールの接着状態を慎重に確認しながら作業を進めます。

劣化した接着剤を除去し、残留物をきれいに削り落とします。この下地処理は非常に重要です。ここが不十分だと、新しいソールを取り付けても耐久性が落ちてしまいます。見えない工程こそ、仕上がりを左右する要となります。

ミッドソールの状態も確認しましたが、今回は弾力がしっかり保たれており、再利用が可能なコンディションでした。そのため、ミッドソールは活かしつつ、アウトソール部分を交換する施工方法を選択しました。

■ Vibram298Cの採用

今回使用したのは、信頼性の高い「Vibram298C」です。

Vibram社はイタリアの老舗ソールメーカーで、登山靴からワークブーツ、スニーカーまで幅広く採用されています。298Cは耐摩耗性に優れ、適度な柔軟性を持ち合わせたラバーソールです。グリップ力が高く、日常使いから軽いウォーキングまで快適に対応できます。

ニューバランス990の持つ安定感やクッション性を損なわないこと。そして、デザインのバランスを崩さないこと。この二点を重視し、298Cを選定しました。

厚みや形状を微調整し、元のシルエットに違和感が出ないよう成形していきます。スニーカー修理では、単に貼り替えるだけでなく「いかに自然に仕上げるか」が重要です。オリジナルの雰囲気を保ちながら、機能性を向上させる。それが理想的な修理だと考えています。

■ 接着・圧着工程

成形したソールを専用接着剤で圧着します。接着面の温度管理、圧力、乾燥時間などを厳密にコントロールし、しっかりと固定していきます。

接着後は圧着機にて均一な力を加え、密着度を高めます。これにより、日常使用に耐えうる強度を確保します。最後に外周部分を丁寧に整形し、違和感のないラインに仕上げて完成です。

■ 仕上がりと履き心地の変化

完成した990は、見た目にも引き締まり、足元に安定感が戻りました。硬化していた旧ソールとは違い、適度な弾力としなやかさが復活。歩行時の「コツコツ」とした硬い感触がなくなり、自然なクッション性が感じられます。

グリップ力も向上しているため、濡れた路面や駅のタイル床でも安心感があります。かかとの安定性も改善され、着地時のブレが軽減されました。

Y様にも実際に足入れしていただいたところ、「また新品のように安心して歩けます」と嬉しいお言葉をいただきました。お気に入りの一足が再び活躍できる状態になったことを、大変喜んでおられました。

■ 靴は修理して履き続ける時代へ

近年は「良いものを長く使う」という価値観が広がっています。特にニューバランス990のような品質の高いモデルは、適切なメンテナンスを施せば、何年も愛用することが可能です。

アッパーが健在であれば、ソール交換によって再生できます。加水分解や硬化、摩耗などでお困りの場合も、ぜひ一度ご相談ください。状態を丁寧に見極め、最適な方法をご提案いたします。

靴は単なる消耗品ではなく、持ち主の歩んできた時間を刻んだ大切な存在です。その一足を再び最良の状態へ導くこと。それが私たちの使命であり、喜びでもあります。

静岡県Y様、この度は大切なニューバランス990をお任せいただき、誠にありがとうございました。これからも安心して、快適なシューズライフをお楽しみください。

大切なシューズのことでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
シューズライフをより楽しく、より快適に。

倉敷市K様 レッドウィング ベックマン 加水分解したハーフソール&ブロックヒールをVibram2333で再生した修理事例

靴修理専門店として日々さまざまな一足と向き合っていますが、今回ご紹介するのは、岡山県倉敷市にお住まいのK様からお預かりした
**レッドウィング「ベックマン」**の修理事例です。

レッドウィングといえば、アメリカを代表するワークブーツブランド。
中でもベックマンは、ワークブーツの無骨さとドレスシューズの上品さを併せ持つモデルとして、長年にわたり高い人気を誇っています。

K様もこのベックマンをとても大切に履かれており、
「できる限り長く履き続けたい」という強い思いから、今回当店へご相談くださいました。


■ ご相談内容:見た目はまだ良いが、足元に違和感が…

お預かりしたベックマンは、アッパーの革の状態が非常に良く、
定期的にお手入れをされてきたことがひと目で分かる一足でした。

しかし、足元をよく確認すると、

・ハーフソールラバーが硬化し、ひび割れが進行
・ブロックヒール内部の素材が劣化
・歩行時に「コツコツ」「グニャッ」とした違和感

といった症状が見られました。

これらの原因は、加水分解です。


■ 加水分解とは?ブーツに起こる静かなトラブル

加水分解とは、空気中の水分や湿気によって、
ゴムやポリウレタンなどの素材が化学的に分解されてしまう現象です。

特に、

・長期間履かずに保管していた
・湿度の高い日本の気候
・経年劣化

といった条件が重なると、見た目は問題なくても、
内部から静かに劣化が進行してしまいます。

K様のベックマンも、まさにこの状態。
このまま履き続けると、ある日突然ソールが剥がれたり、
ヒールが崩れてしまうリスクがありました。


■ 修理内容のご提案:加水分解しない素材へ

そこで今回ご提案したのが、

・ハーフソールラバー交換
・ブロックヒール交換
・出し縫いによる耐久性強化

という内容です。

最大のポイントは、使用する素材。
今回は、Vibram(ビブラム)2333 合成ゴムを採用しました。


■ Vibram2333 合成ゴムとは?

Vibram2333は、登山靴やワークブーツにも使用される、
非常に信頼性の高い合成ゴム素材です。

この素材の大きな特徴は、

・加水分解しない
・適度な硬さと柔軟性のバランス
・耐摩耗性が高く、削れにくい
・雨の日でも安定したグリップ力

といった点。

「今後も長く安心して履きたい」というK様のご希望に、
まさに最適な素材だと判断しました。


■ 作業工程① 既存ソール・ヒールの分解

まずは、劣化したハーフソールラバーとブロックヒールを
丁寧に分解していきます。

無理に剥がすとアッパーやミッドソールを傷めてしまうため、
一工程ずつ慎重に作業を進めます。

分解してみると、内部のゴムはすでに弾力を失い、
ボロボロと崩れ始めていました。
この状態では、本来のベックマンの履き心地は到底得られません。


■ 作業工程② 下地調整と成形

 

次に行うのが、下地の調整です。

古い接着剤や劣化した素材を完全に取り除き、
新しいソールがしっかりと密着する状態を作ります。

その後、Vibram2333のハーフソールとブロックヒールを、
ベックマンのシルエットに合わせて丁寧に成形。

既製品をただ貼るだけではなく、
「レッドウィングらしい雰囲気」を損なわないよう、
細部までバランスを確認しながら作業を行います。


■ 作業工程③ 出し縫いで耐久性をプラス

今回の修理では、**出し縫い(アウトステッチ)**も施しました。

出し縫いを行うことで、

・接着剤だけに頼らない構造
・剥がれにくさが大幅に向上
・歩行時の安定感アップ

といったメリットがあります。

特にワークブーツであるベックマンには、
この「縫い」の工程が非常に相性が良く、
見た目にも無骨で力強い印象を与えてくれます。


■ 仕上がり:生まれ変わったベックマン

すべての工程を終え、仕上がったベックマンは、
まさに**「新しく生まれ変わった一足」**。

・足を入れた瞬間の安定感
・地面をしっかり捉えるグリップ力
・歩くたびに感じる安心感

K様にも大変喜んでいただき、
「またこれから何年も履けますね」と
笑顔でお言葉をいただきました。


■ 靴修理は、思い出をつなぐ仕事

靴は単なる履き物ではありません。
その人の生活や思い出が、確実に刻み込まれています。

今回のベックマンも、
K様とともに多くの時間を歩んできた一足。

私たちは、その歴史を尊重しながら、
「これからの時間」を支えるお手伝いをしています。


■ お気に入りのブーツ、諦める前にご相談を

・ソールが硬くなってきた
・歩くと違和感がある
・加水分解が心配

そんな症状があれば、ぜひ一度ご相談ください。

素材選びから仕上げまで、
一足一足、心を込めて修理いたします。


足元から始まる快適な毎日を、これからも。
あなたの大切な靴に、最高のケアをお届けします👞✨

岡山県・赤磐市 M様 New Balance 576 修理事例 ―― ウェッジヒールとヒールカップの加水分解を乗り越え、再び履ける一足へ ――

今回ご紹介するのは、岡山県・赤磐市にお住まいのM様よりお預かりした、
New Balance(ニューバランス)576の修理事例です。

New Balance 576といえば、英国製モデルとしても知られ、
安定感のある履き心地とクラシカルなデザインで、長年愛され続けている名作スニーカー。


M様もこの576をとても大切に履かれてきたとのことで、
「できることなら、これからも長く履き続けたい」という想いを込めて、当店へご相談くださいました。

しかし今回お預かりした576は、**経年劣化による“加水分解”**が進行しており、
そのまま履き続けることが難しい状態になっていました。


■ ご相談内容:ウェッジヒールとヒールカップの加水分解

M様がお困りだった主なポイントは、次の2点です。

  1. ウェッジヒール(ミッドソール部分)の加水分解

  2. 樹脂製ヒールカップの割れ・崩れ

New Balance 576は、ミッドソールにポリウレタン素材を使用しているため、
年数が経つとどうしても避けられないのが「加水分解」という現象です。

加水分解とは、
空気中の湿気や保管環境の影響によって、素材が分子レベルで分解され、
・ボロボロと崩れる
・ひび割れが起きる
・弾力が失われる
といった症状が現れる劣化のこと。

M様の576も、
歩行時に違和感が出始め、
「このまま履くと完全に壊れてしまいそうで怖い」
という状態でした。

さらに、かかと外側に取り付けられている樹脂製ヒールカップも、
同じく加水分解によってひび割れが生じ、
部分的に欠け落ちてしまっていました。


■ 修理方針:見た目と履き心地、どちらも妥協しない

今回の修理で私たちが大切にしたのは、
**「オリジナルの雰囲気を尊重しながら、今後も安心して履ける仕様にする」**という点です。

単に壊れた部分を直すだけではなく、

  • 576らしいシルエットを崩さない

  • 履いた時の安定感・クッション性を損なわない

  • 同じトラブルを繰り返しにくい素材を選ぶ

この3点を軸に、修理内容を組み立てていきました。


■ ウェッジヒール修理:段差を活かした2段構造で再現

まずは、最も劣化が進んでいたウェッジヒール部分から作業を開始します。

劣化したポリウレタン素材は、
一度加水分解が始まると、表面だけでなく内部まで脆くなっているケースがほとんどです。
そのため、部分補修ではなく、劣化部分を完全に除去することが重要になります。

慎重にソールを分解し、
崩れてしまった素材を一つひとつ丁寧に取り除いた後、
新たにEVAスポンジ素材を使って、ウェッジヒールを作り直していきました。

今回のポイントは、
**かかとの段差を活かした「2段構造」**での再構築です。

New Balance 576特有のヒールラインは、
単なるフラット構造では再現できません。
段差の高さや角度をミリ単位で調整しながら、
オリジナルに近いフォルムになるよう積み上げていきます。

この工程は、
見た目だけでなく、歩行時の体重移動や安定感にも大きく影響するため、
特に時間と神経を使う部分でもあります。


■ 樹脂製ヒールカップを本革で製作・補強

続いて、樹脂製ヒールカップの修理です。

New Balance 576に使われているヒールカップは、
デザイン性とホールド感を高める重要なパーツですが、
樹脂素材のため、どうしても経年劣化に弱いという弱点があります。

今回は、同じ樹脂素材で作り直すのではなく、
耐久性の高い本革を使って代替パーツを製作する方法を選択しました。

本革は、

  • 加水分解を起こさない

  • 適度な柔軟性がある

  • 使い込むほど足に馴染む

といったメリットがあり、
長期的に見ても非常に優れた素材です。

靴の形状に合わせて革を成形し、
八方ミシンという特殊なミシンを使用して、
しっかりと縫い付けていきます。

縫製位置やステッチ幅も、
外観を損なわないよう細心の注意を払いながら調整しました。


■ 仕上げと最終チェック

すべてのパーツを組み上げた後は、
全体のバランスを確認しながら最終仕上げに入ります。

  • 左右の高さに違いはないか

  • 接地時の安定感は十分か

  • 歩行時に違和感が出ないか

実際に足を入れて確認し、
問題がないことを確認してから完成となります。

完成した576は、
オリジナルの雰囲気をしっかり残しつつ、
以前よりも安心して履ける一足へと生まれ変わりました。


■ M様へ、そして同じお悩みをお持ちの方へ

M様、この度は大切なNew Balance 576の修理をご依頼いただき、
誠にありがとうございました。

「もう履けないかもしれない」と感じていた靴が、
修理によって再び日常で活躍できるようになる。
それは私たち靴修理職人にとって、何より嬉しい瞬間です。

New Balanceをはじめ、
加水分解によるトラブルは、決して珍しいものではありません。
しかし、適切な素材選びと技術によって、
まだまだ履き続けられるケースがほとんどです。

あなたの大切な一足も、
「これはもう無理かな?」と思う前に、ぜひ一度ご相談ください😊
靴と向き合い、一足一足に心を込めて、最善の方法をご提案いたします。

ニューバランス576 ウェッジヒール修理事例(岡山県赤磐市 M様)加水分解による

こんにちは。靴修理専門店として、日々さまざまな一足と向き合っている私たちですが、今回ご紹介するのは、岡山県赤磐市にお住まいのM様からお預かりした「ニューバランス576」の修理事例です。

ニューバランス576といえば、クラシックなランニングシューズの代表格として、長年にわたり多くのファンに愛されてきたモデルです。上質なスエードとメッシュの組み合わせ、程よいボリューム感のあるシルエット、そして履き心地の良さ。単なるスニーカーという枠を超え、生活の一部として日常に寄り添ってくれる存在だと言えるでしょう。M様もまた、この576を長年大切に履き続けてこられたとのことでした。

しかし、どれほど大切に履いていても、経年劣化だけは避けられません。今回お預かりした576で最も深刻だったのは、ウェッジヒール部分の「加水分解」です。ミッドソールやヒールに使われる素材の中には、空気中の水分や湿気と反応することで、内部から劣化が進んでしまうものがあります。特にポリウレタン系素材は、この加水分解を起こしやすく、見た目はそれほど傷んでいなくても、突然ボロボロと崩れてしまうことが少なくありません。

M様の576も、まさにその状態でした。ヒール部分を軽く触っただけで、表面が粉を吹くように崩れ、歩行時には安定感が失われてしまう危険な状態です。このまま履き続けるのは難しく、修理が必須でした。

今回の修理方針として私たちが選んだのは、「EVAスポンジを使用したウェッジヒール部分のみの交換」です。アウトソール全体を交換する方法もありますが、M様はオリジナルの雰囲気や履き心地をとても大切にされていました。そのため、必要な部分だけを的確に直し、元のスタイルをできる限りキープすることを重視しました。

まずは、劣化したウェッジヒール部分を丁寧に取り除きます。加水分解した素材は非常にもろく、無理に剥がすと周囲の健全な部分まで傷めてしまう恐れがあります。状態を見極めながら、少しずつ、慎重に分解していきました。その後、新たにEVAスポンジを成形し、元の高さや角度、シルエットを忠実に再現します。EVAスポンジは軽量でクッション性が高く、加水分解にも強い素材のため、今後も安心して履いていただける仕様です。

接着後は、見た目の違和感が出ないよう、細部まで調整を行います。横から見たときのライン、地面との接地感、左右のバランス。どれか一つでもズレてしまうと、履き心地に大きな影響が出るため、ここは職人として最も神経を使う工程です。仕上がったウェッジヒールは、オリジナルと見比べても遜色ない自然な仕上がりとなりました。

さらに今回、もう一つ重要な修理ポイントがありました。それが「ヒールカップ」です。ニューバランス576のヒールカップは樹脂製ですが、こちらも経年劣化により硬化が進み、ひび割れの兆候が見られました。純正の樹脂製パーツは、すでに入手が非常に困難な状況です。そこで私たちは、丈夫な本革を使用し、代用品となるヒールカップを一から製作することにしました。

本革は、適切に加工・縫製することで高い耐久性を発揮します。まずは型取りを行い、足をしっかりとホールドできる形状を設計。その後、革を成形し、靴本体に丁寧に縫い付けていきます。ミシンの入れ方や糸のテンション一つで、仕上がりの強度が大きく変わるため、ここでも細心の注意を払いました。

完成した本革ヒールカップは、見た目にも自然で、むしろオリジナル以上に高級感のある印象です。何より、かかとをしっかりと支えてくれる安心感があり、長時間の歩行でも疲れにくい仕様となっています。

すべての工程を終え、最終チェックを行った576は、再び日常で活躍できる一足へと生まれ変わりました。加水分解によって「もう履けないかもしれない」と思われがちなスニーカーでも、適切な修理を行えば、まだまだ現役で使い続けることができます。

M様からは、「また安心して履けるようになって本当に嬉しいです」とのお言葉をいただき、私たちも大きなやりがいを感じました。お気に入りの靴には、その人の思い出や生活の歴史が詰まっています。それを次の時間へとつなぐお手伝いができることこそ、靴修理の醍醐味だと改めて感じさせていただいた事例でした。

加水分解してしまったウェッジヒール、割れてしまったヒールカップ、他店では断られてしまった修理内容でも、まずは一度ご相談ください。素材や構造を見極め、お客様にとって最善の方法をご提案いたします。

お気に入りの一足を、これからも長く、快適に。私たちは、そんな想いを込めて、今日も一足一足と向き合っています。

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