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日別アーカイブ: 2025年7月16日

神奈川県 H様ご依頼 JOYA(ジョーヤ)ウォーキングシューズ 加水分解 EVAスポンジ マッケイ縫い TOPY クロコ柄ソール

加水分解したソールのオールソール交換修理

このたび神奈川県在住のH様よりご依頼いただいたのは、スイス発のコンフォートブランド「JOYA(ジョーヤ)」のウォーキングシューズの修理です。ジョーヤは、その柔らかさとクッション性の高さから、中高年層を中心に絶大な支持を得ているブランドです。

特に膝や腰への衝撃を軽減してくれるという設計思想から、日常のウォーキングや長時間の立ち仕事に最適な一足。しかし、その一方で柔らかいソール材質は経年劣化しやすく、「加水分解」によるダメージが生じることが少なくありません。

今回は、まさにその典型的な症例である「ソールの加水分解による破損」への対応として、EVAスポンジを使用したオールソール交換修理を実施いたしました。以下、工程を詳しくご紹介いたします。


■ ご依頼の経緯と状態の確認

H様は長年こちらのジョーヤシューズをご愛用で、ウォーキングや日常のお出かけなど、週に数回ペースでご使用されていたとのこと。しかしある日、靴底に違和感を感じて確認したところ、ソールの一部が割れて剥がれ始めていたとのことでした。

ご自身で調べられた結果、「加水分解による劣化ではないか」と推測され、当店にご相談くださいました。

実際にお預かりした靴を確認すると、アウトソールおよびミッドソールに使用されているウレタン素材が部分的にひび割れ、崩壊を起こしている状態でした。特にヒール部分の損傷が大きく、元のソール形状も不明瞭なほどでした。


■ 加水分解とは?

加水分解(hydrolysis)とは、ウレタンなどの合成樹脂素材が、空気中の水分と化学反応を起こすことで分解・劣化していく現象のことです。湿気や温度の変化、保管環境によって進行速度が異なりますが、特に数年放置されたシューズや長期間履かずに保管されていた靴によく見られます。

加水分解が進むと、靴底が柔らかく崩れたり、表面にひび割れが生じたりし、最終的にはソールが剥がれたり割れたりして使用不能になります。


■ 修理方針の決定

この状態に対して、単純な部分修理では再発のリスクが高く、見た目の仕上がりにもムラが出てしまうことが想定されたため、今回は「オールソール交換」による全面的なリフレッシュを選択しました。

今回の修理でのポイントは以下の3点です:

  1. 元のソールに近い柔らかさと厚みを再現する

  2. 歩行時のローリング感(前後の反り)を損なわない曲線設計

  3. ジョーヤらしい「美観」と「高級感」を両立させる素材選定


■ 修理工程の詳細

① ソールの完全除去

まずは加水分解した元のソール全体を取り除く作業から始めます。
ジョーヤのソールは複数の層で構成されており、特にミッドソールとアウトソールの接着が強力なため、専用の剥離工具を用いて慎重に分離していきます。

加水分解が進んでいるとはいえ、部分的には固着している箇所もあり、アッパー(靴本体)を傷つけないよう慎重を期します。すべての旧素材を剥がし終えたあと、底面を平滑に整え、新たなミッドソールの取り付け準備に入ります。


② EVAスポンジのミッドソールをマッケイ縫いで接合

次に、EVAスポンジ素材のミッドソールを新たに取り付けます。
EVAは軽量かつ弾力性に優れており、ジョーヤの柔らかい履き心地を再現するのに最適な素材です。

今回のモデルは、ウレタンソールを接着してあるモデルでしたが、新たなミッドソールはマッケイ縫いを施しました。マッケイ縫いとは、アッパー・インソール・ミッドソールを一度に貫通するように縫い上げる手法で、しなやかな履き心地と一体感をもたらします。


③ EVAスポンジの積層と削り出しによる厚底再現

ミッドソールの取り付けが完了したら、さらにEVAスポンジを積み重ねて厚みを確保し、元のジョーヤのソールに近い「ラウンド形状(曲面)」を作り出します。

この作業は一足ごとに異なる感覚が求められる繊細な工程です。特にジョーヤのシューズは、前足部と踵部の高低差が絶妙に設計されており、それを忠実に再現するには熟練した削り出し技術が不可欠です。

ベルトサンダーを使い、数ミリ単位で削り込むことで、自然なローリング歩行ができる形状を形成していきます。


④ アウトソールにTOPY社製クロコ柄ソールを装着

ソール形状が整ったら、仕上げとしてフランスのTOPY(トピー)社製のクロコ柄ラバーソールを装着します。

TOPY社は世界的に評価されているソールメーカーで、耐摩耗性・防滑性・デザイン性のバランスが非常に優れています。特にこのクロコ柄は、シックで大人っぽい印象を与えるため、コンフォートシューズのような実用靴にも「上品な雰囲気」を与えてくれます。

今回のモデルでは、ソールの張り出しが少ないため、側面の巻き込み処理は不要でした。仕上がりは非常にスマートで、まるで元々このソールがついていたかのような自然な完成度となりました。


■ 修理後の状態とお客様の声

修理後、H様にお届けしたところ、

「新品のように蘇っていてびっくりしました」
「履き心地も以前の柔らかさそのままで、安心しました」
「クロコ柄がとても気に入りました」

との嬉しいお声をいただきました。

実用性を追求するだけでなく、「履いていて気分が上がる」というのも靴にとって大切な要素です。そうした面でも、ご満足いただける仕上がりとなったことを私たちも嬉しく思っております。


■ まとめ:高機能靴にも対応する熟練の技術で「再生」を

今回のように、JOYAやMBTなど「特殊構造の機能系シューズ」は、修理対応が難しいとされるケースも少なくありません。しかし、当店では構造や製法をしっかりと理解し、マッケイ縫い・積層成形・意匠素材選定など、多角的な技術で一足一足に対応しております。

他店で断られてしまった靴も、ぜひ一度ご相談ください。ソールの再生から履き心地の調整まで、お客様の「もう一度履きたい」を叶えます。


■ 店舗情報

  • いずみ靴店

  • 岡山県倉敷市玉島

  • 全国からの配送修理受付中

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