オフィシャルブログ

日別アーカイブ: 2026年2月19日

大阪府 I様 Santoni スニーカー 加水分解でソール割れのため オールソール交換修理 Vibram063にて

本日も、大切な一足の再生をご依頼いただきました。大阪府のI様よりお預かりしたのは、上質な作りと洗練されたデザインで知られる Santoni のスニーカーです。見た目にはまだ十分に履けそうに見える状態でしたが、実際には靴底内部の劣化が進行しており、歩行時の違和感や不安定さが顕著に現れていました。

今回の修理の原因となっていたのは、塩ビ系素材のソールに見られる経年劣化です。長年の使用や保管環境の影響により、素材内部の可塑剤が抜け、硬化とともにひび割れが発生していました。特に屈曲の多い前足部から亀裂が広がり、ヒール部分にかけて破断寸前の状態となっていたため、このままの使用は危険と判断し、オールソール交換という最適な方法で再生を行うことになりました。

まずは、既存ソールの分解作業からスタートします。塩ビ系ソールは劣化すると接着層が不均一になり、部分的に強く固着していることがあります。無理に剥がすとアッパーを傷めてしまうため、温度管理を行いながら慎重に分離しました。分解の過程で確認できたのは、ヒール部に他店で取り付けられたトップパーツの存在です。構造的には問題ないものの、全体のバランスやデザインとの一体感に欠けており、今回の再構築にあたっては取り外すことにしました。

ソールをすべて取り外した後は、中底の状態確認です。靴の寿命を左右するこの部分に大きな損傷はなく、しっかりとした剛性が保たれていました。そのため、クリーニングと補強処理を施したうえで再利用することに。構造を活かすことで、履き慣れたフィット感を維持できる点は、オールソール修理の大きなメリットの一つです。

次に取り掛かったのは、新しいソール構成の設計です。I様からは「より重厚感があり、しっかりとした履き心地にしたい」というご要望をいただいていました。そこで、アウトソールには耐久性と安定感に優れた Vibram の063を採用。ヒール一体型の設計により、クラシカルで存在感のあるシルエットを実現できるのが特徴です。

ミッドソール部分は、衝撃吸収性と安定性のバランスを考慮しながら厚みを設計しました。単に厚くするのではなく、前後の高低差や屈曲位置を調整することで、歩行時の体重移動が自然になるよう仕上げています。こうした細かな設計は、長時間履いたときの疲労感を大きく左右する重要なポイントです。

ソールの接着に入る前には、接着面の下処理を徹底します。旧接着剤の除去、表面の荒らし加工、脱脂といった工程を丁寧に行うことで、接着強度を最大限に高めます。その後、専用のプレス機で圧着し、ソールとアッパーを一体化させました。圧着後は十分な養生時間を確保し、接着の安定を待ちます。この工程を省略すると、後の剥がれの原因になるため非常に重要です。

圧着が完了した後は、仕上げの削りとバランス調整に入ります。ソール周囲を丁寧に整形し、接地面の水平を確認。左右差や歩行時の接地感をチェックしながら微調整を行いました。この作業は見た目以上に繊細で、数ミリの差が履き心地に大きく影響します。最終的には、重厚感のある見た目とスムーズな歩行性を両立した仕上がりとなりました。

今回の修理で印象的だったのは、ソール交換によって靴全体の印象が大きく変わった点です。元の軽快な雰囲気から、より落ち着いた存在感のあるスタイルへと変化し、コーディネートの幅も広がる一足に生まれ変わりました。これは、単なる修理にとどまらず「再設計」と言えるプロセスです。

仕上げの段階では、アッパーのクリーニングと保湿ケアも実施しました。ソールが新しくなると、アッパーのコンディションも目立つため、革の潤いを補い全体の統一感を整えます。こうした細部のケアによって、完成度の高い仕上がりとなります。

最終チェックでは屈曲テストと歩行シミュレーションを行い、接着状態・安定性・クッション性を確認。ヒール一体型ソールの効果により、着地時のブレが少なく、しっかりとした踏み心地が感じられる状態に仕上がりました。I様のご要望であった「安心感のある履き心地」を実現できたと感じています。

靴は日常の中で最も酷使される道具の一つですが、適切な修理を行うことで寿命を大きく延ばすことができます。特に今回のようなソールの加水分解は避けられない経年変化ですが、構造を理解したうえで再構築すれば、再び長く履き続けることが可能です。

私たちの仕事は、壊れた部分を直すだけではありません。お客様のご要望やライフスタイルを伺い、その靴にとって最適な形を提案することも大切な役割です。一足一足に合わせたカスタマイズこそが、既製品にはない価値を生み出します。

今回のように、ヒール形状やソールの種類を変更することで、履き心地だけでなくデザインの印象も大きく変わります。「もう履けない」と思っていた靴でも、修理によって新たな魅力を引き出すことができるのです。

I様の大切なスニーカーが、これからも日々の歩みを支える存在であり続けることを願いながら、心を込めて仕上げさせていただきました。履くたびに感じる安定感と安心感を、ぜひこれからもお楽しみいただければと思います。

靴に関するお悩みやカスタマイズのご相談は、どんな小さなことでも歓迎しております。素材や構造に合わせた最適な修理方法をご提案し、大切な一足を長くご愛用いただけるよう全力でサポートいたします。

これからも、一足一足に真摯に向き合い、履く人の毎日を支える仕事を続けてまいります。皆様のご相談・ご依頼を心よりお待ちしております。

岡山市 Y様 NewBalance 1300 加水分解による オールソール交換修理しました

岡山県岡山市のY様より、大切に履き続けてこられた New Balance の名作モデル「1300」のオールソール交換修理をご依頼いただきました。

長年にわたり足元を支えてきた一足には、履き込まれた証である風合いとともに、ミッドソールの加水分解という避けられない経年変化が見られました。特にウェッジヒール部分はスポンジが崩れ、歩行時の安定性やクッション性が大きく損なわれている状態でした。

今回の修理の目的は、単に靴底を新しくするだけではありません。オリジナルの履き心地やフォルムを尊重しながら、今後も安心して履き続けられる耐久性を持たせること。そして、Y様が再びこの靴で歩く楽しさを感じられるようにすることです。そのため、分解から再構築まで一つひとつの工程を丁寧に進めていきました。

まず最初の工程は、劣化したソールの取り外しです。加水分解したポリウレタンは粉状になっている部分もあり、無理に剥がすとアッパーを傷めてしまう恐れがあります。そのため、熱と専用工具を使いながら、接着層の状態を見極めつつ慎重に分解を行いました。分解後に現れる中底の状態は、靴の寿命を左右する重要なポイントです。今回は大きな損傷がなく、構造的に再利用可能と判断できたため、クリーニングと補強処理を施しました。

次に取り掛かったのは、新しいミッドソールの設計です。オリジナルのシルエットを保つため、残っていたソールの厚みやカーブを細かく採寸し、EVAスポンジを積層してウェッジ形状を再現しました。EVAは軽量でクッション性に優れ、加水分解しにくい素材のため、長期的な耐久性の面でも非常に有効です。単に貼り合わせるのではなく、削り出しによって曲線を整え、歩行時の体重移動が自然に行えるようバランスを調整しています。

ウェッジの形成が終わると、いよいよアウトソールの装着です。今回は耐摩耗性とグリップ力のバランスに優れた Vibram の298Cを採用しました。このソールは、都市部の舗装路から日常使いまで幅広いシーンで安定した性能を発揮するため、1300のキャラクターにもよく合います。接着面の下処理を丁寧に行い、専用プレス機で圧着することで、剥がれにくく一体感のある仕上がりを実現しました。

また、今回の修理で重要だったのが、靴全体のバランス調整です。ソールを新しくすると、わずかな厚みの違いでも履き心地に影響が出ます。そこで、左右差の確認や接地面の微調整を繰り返し、歩行時に違和感が出ないよう細部まで仕上げました。この工程は見た目には分かりにくい部分ですが、実際の履き心地を大きく左右する職人の腕の見せどころです。

ヒールカップについては、今回の点検時点で割れや変形は見られず、しっかりとしたホールド感を維持していました。そのため大掛かりな補修は行わず、クリーニングと保湿ケアのみ実施しています。構造が健全な部分は無理に手を加えないことも、靴を長持ちさせるための大切な判断です。

すべての工程を終えた後、最終チェックとして実際に屈曲テストと歩行シミュレーションを行いました。新しいウェッジソールは適度な反発力を持ち、踏み出しの際のスムーズさがしっかり感じられます。アウトソールのグリップも良好で、日常の使用において安心して履いていただける状態に仕上がりました。

こうして生まれ変わった1300は、見た目の美しさだけでなく、機能面でも新たな命を吹き込まれています。履き慣れた靴には、新品にはないフィット感や思い出が宿っています。修理とは単なるメンテナンスではなく、その価値を未来へつなぐ作業だと私たちは考えています。

今回のように、ミッドソールの加水分解はスニーカーにとって避けて通れない問題ですが、適切な方法で再構築すれば、再び長く活躍できる状態に戻すことが可能です。お気に入りだからこそ手放せない一足、もう履けないと諦めていた靴でも、修理という選択肢で新たな可能性が生まれます。

Y様の大切な一足が、これからも日々の暮らしの中で活躍し続けることを願いながら、心を込めて仕上げさせていただきました。歩くたびに感じるクッション性と安定感、そして履き慣れた安心感を、ぜひこれからもお楽しみいただければと思います。

私たちは、靴を単なる消耗品ではなく「長く付き合う道具」として考えています。修理によって寿命を延ばすことは、履き心地の向上だけでなく、愛着やストーリーを守ることにもつながります。どんな小さな違和感でも、早めにメンテナンスを行うことで靴は驚くほど長持ちします。

もし、ソールの劣化や履き心地の変化を感じた際は、ぜひお気軽にご相談ください。素材や構造を見極め、それぞれの靴に最適な方法で修理をご提案いたします。大切な一足をこれからも快適に履き続けていただけるよう、確かな技術と経験でサポートいたします。

これからも一足一足に真摯に向き合い、履く人の毎日を支える仕事を続けてまいります。皆様のご来店・ご相談を心よりお待ちしております。

Translate »