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新潟県 I様 ブランドストーン 加水分解したソールをオールソール交換修理 Vibram528Kにて

新潟県のI様よりお預かりした、ブランドストーンのサイドゴアブーツ


オーストラリア発祥のこのブーツは、シンプルで無駄のないデザインと高い実用性から、天候を問わず日常使いできる定番モデルとして、多くのファンに支持されています。I様も長年愛用されてきた一足とのことで、今回の修理には「また安心して履き続けたい」という強い想いが込められていました。

しかし、お預かりした時点でのブーツの状態は決して良好とは言えませんでした。
最大の問題はソールの加水分解です。ブランドストーンに多く採用されているポリウレタン系のミッドソールは、クッション性に優れる反面、長期間の使用や保管環境によって水分と反応し、内部から劣化が進行します。見た目にはまだ履けそうに見えても、実際にはソールが脆くなり、歩行中に突然崩れてしまうリスクを抱えている状態でした。

I様のブーツも例外ではなく、アウトソールの縁から劣化が進み、ソール全体が浮いたような感触になっていました。このまま接着のみで補修を行っても、根本的な解決にはなりません。そこで今回は、オールソール交換修理をご提案し、ブーツを土台から作り直す形で再生を図ることにしました。

まず行うのは、既存ソールの完全分解作業です。
加水分解したポリウレタンは粉状になって崩れやすく、靴本体側に残りやすいため、ここをいかに丁寧に除去できるかが仕上がりを大きく左右します。中途半端に残してしまうと、新しいミッドソールの接着や縫い付けに悪影響を及ぼすため、時間をかけて慎重に清掃と下地処理を行いました。

靴本体が本来持っている形状を崩さないよう、左右のバランスを確認しながら作業を進め、次の工程へと移ります。

今回、新たに採用したミッドソール素材はEVAスポンジです。
EVAは軽量でありながら適度な反発力を持ち、歩行時の衝撃をしっかり吸収してくれる素材です。また、ポリウレタンと比べて加水分解のリスクが低く、日常使いのブーツには非常に相性が良いのも特徴です。

このEVAスポンジを、靴の底面形状に合わせて成形し、マッケイ縫いによって靴本体へしっかりと縫い付けていきます。接着だけに頼らず、縫製を併用することで、耐久性と安定感が大幅に向上します。サイドゴアブーツは脱ぎ履きの際に負荷がかかりやすいため、この「縫い」の工程は非常に重要です。

ミッドソールが安定したところで、次に取り付けるのがアウトソールです。
今回I様にお選びいただいたのは、Vibram528K。Vibramソールの中でも、日常使いに優れたバランス型のモデルで、耐摩耗性とグリップ力の高さが特徴です。路面状況を選ばず、雨の日でも安心して履けるため、ブランドストーンのブーツとの相性は抜群と言えるでしょう。

Vibram528Kは、適度な厚みと柔軟性を兼ね備えており、歩行時の安定感を高めつつ、ゴツすぎないシルエットを保てる点も魅力です。ブーツ全体の雰囲気を損なわず、オリジナルのイメージを尊重した仕上がりを目指しました。

アウトソールの貼り付け後は、圧着・乾燥工程を経て、最終的な仕上げ作業に入ります。
コバ周りのラインを整え、余分な接着剤を除去し、全体のバランスを再確認。さらに、アッパー部分にはクリーニングと保湿を施し、革本来の艶を引き出すための磨きを行いました。

長年履き込まれたブーツだからこそ、革には独特の表情があります。その風合いを消してしまわないよう、過度な磨きは避けつつ、自然な光沢を与えることを意識しています。

こうして完成したブランドストーンのサイドゴアブーツは、見た目にも機能面にも、新たな命が吹き込まれました。
加水分解による不安は解消され、EVAミッドソールとVibram528Kの組み合わせによって、これからの日常をしっかり支えてくれる一足へと生まれ変わっています。

靴修理は、単に壊れた部分を直す作業ではありません。
お客様がその靴とともに歩んできた時間や思い出を受け取り、これから先の時間へとつなげていく仕事です。新品を買えば簡単かもしれませんが、履き慣れた靴、足に馴染んだ靴には代えがたい価値があります。

「まだ履けるだろうか」「修理して意味があるだろうか」
そんな迷いがある靴こそ、一度ご相談ください。状態を見極め、その靴にとって最適な修理方法をご提案いたします。

今回のI様のブランドストーンのように、適切な修理を施すことで、靴は再び日常の相棒として活躍してくれます。
足元から始まる毎日を、これからも安心して楽しんでいただければ幸いです。

大切な靴を、もう一度輝かせたい方。
私たちは、心を込めてそのお手伝いをいたします。

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