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日別アーカイブ: 2025年10月10日

倉敷市 O様 BUTTERO 婦人ブーツ ハーフソールラバーとかかとゴム交換修理

倉敷市 O様 BUTTERO 婦人ブーツ ハーフソールラバーとかかとゴム交換修理

今回ご紹介するのは、倉敷市にお住まいのO様からお預かりした「BUTTERO(ブッテロ)」の婦人ブーツです。
一見するとぺったんこ靴のような印象を受けるシルエットですが、実際にはしっかりとヒールが備えられたハイヒールタイプ。
しかもそのヒールが靴本体の革で美しく包まれており、全体が一体化したようなデザインになっています。
ブッテロらしい、無骨さとエレガンスが共存した非常に粋な一足です。

■ブランド「BUTTERO(ブッテロ)」について

まず簡単にブランドの背景を触れておきましょう。
BUTTEROは1974年にイタリア・トスカーナ地方で創業されたシューズブランドで、その名はイタリア語で「カウボーイ」を意味します。
創業当初は乗馬ブーツの製造からスタートし、現在ではレザースニーカーやブーツなど、クラシックな雰囲気の中に洗練された都会的デザインを融合させた靴作りで知られています。

同ブランドの靴は、素材選定から縫製に至るまで非常に丁寧で、トスカーナ産のベジタブルタンニンレザーを使用することでも有名です。
一方で、構造的にはかなり複雑で、特にソール部分には見た目以上に繊細なバランスが求められます。
今回の婦人ブーツもまさにその典型。見た目はフラットな印象ですが、内部にはヒールの高さを確保するための独自の設計が施されていました。

■修理前の状態

O様からのご相談は「靴底が少しひび割れてきたような気がする」とのことでした。
お持ちいただいた靴を確認すると、ハーフソールラバー(前底部分のゴム)が経年劣化を起こし、表面に亀裂が入り始めていました。
見た目こそそれほど損傷していませんが、指で押すとパリッと割れるような硬化状態。

この素材は塩化ビニル系、いわゆる塩ビ素材であることが多く、特にイタリア製の一部モデルでは滑りにくく軽量な反面、経年で加水分解を起こしやすい特徴があります。
靴底の柔軟性が失われると、歩行中のグリップ性能が低下し、ヒール部分にかかる負担が増大するため、早めの交換が望ましい状態でした。

ヒール側も確認すると、トップリフト(かかとゴム)がかなり摩耗しており、特に外側が斜めに削れています。
ヒールの芯材はしっかりしており交換不要でしたが、滑り止めとしての役割を担うゴムが限界に達していました。

■修理方針と素材選定

今回の修理では次の2点を中心に行いました。

  1. ハーフソールラバーの交換(前底部)

  2. ヒールゴム(トップリフト)の交換

まずハーフソールラバーですが、純正品は塩ビ系素材で同じものはすでに廃盤。
代替として当店では耐摩耗性と柔軟性に優れた合成ゴム製ラバーを選定しました。
合成ゴムは加水分解の心配がなく、長期間にわたり安定したグリップ性能を発揮します。

また、厚み・硬度ともにオリジナルと近いバランスに調整し、装着後の違和感が出ないように仕上げました。
色味もブッテロ特有の革の深いブラウンに馴染むよう、マットな質感のダークブラウンラバーを採用。
靴の印象を壊さず、むしろ落ち着いた高級感を引き立てる仕上がりになります。

次にヒールゴム。
ブッテロのヒールは非常に特徴的で、革巻きヒールの上に専用設計の小ぶりなゴムが取り付けられています。
しかもそのゴムには独特のトレッドパターン(滑り止め模様)が刻まれており、市販のヒールゴムではまず見つかりません。

このため、今回はフランスのTOPY社製「クロコソールシート」を加工して使用しました。
TOPY社は世界的に評価の高いゴムソールメーカーで、特に滑り止め性能と耐久性に優れています。
クロコソールはその名の通り、表面に細かなクロコ調のパターンが施されており、エレガントさと機能性を両立した素材です。

既製サイズをそのまま貼るのではなく、オリジナルの形状に合わせてひとつひとつ手作業でカット。
厚みの微調整を行い、ヒールのカーブにぴったりと沿うように成形しました。
こうした手作業の精度が見た目の自然さと歩行時の安定感を左右します。

■修理工程の詳細

  1. 旧ソールの除去


  2.  ハーフソールラバーを熱で柔らかくして丁寧に剥がします。
     古い塩ビ素材は硬化しているため、無理に剥がすと本体レザーを傷つけかねません。
     この工程では温度管理が非常に重要です。

  3. 下地処理


  4.  接着面に残った古いボンドを完全に除去し、サンドペーパーで均一に整えます。
     表面が滑らかすぎるとボンドが密着しないため、あえて細かな凹凸を残しておくのがポイント。

  5. 新ハーフソールの貼り込み


  6.  専用接着剤を両面に塗布し、適切な乾燥時間を取った後に圧着。
     プレス機で均等に圧をかけ、気泡が入らないようにします。
     その後、エッジ部分を削り出して、靴本体との境目を自然にぼかします。

  7. ヒールゴムの交換


  8.  古いトップリフトを除去し、ヒール面を水平に整えます。
     カット済みのTOPYクロコソールを貼り付け、エッジを丸く整形。
     最後にヒール全体を軽く磨いて艶を出します。

  9. 最終仕上げ
     靴全体をブラッシングし、革表面に保湿クリームを塗布。
     仕上げに防水スプレーを施し、秋冬の街歩きにも安心して履ける状態に。

■修理後の仕上がり

修理後のブーツは、見た目こそほとんど変わらないものの、触れた瞬間に足元の安定感がまるで違います。
加水分解していた塩ビ素材特有の「硬さ」や「滑り」は一切なく、しなやかな弾力とグリップ力が戻りました。

ヒール部分のTOPYクロコソールも自然に溶け込み、オリジナルよりもむしろ上品に見えるほど。
滑り止め効果が高いため、冬場の石畳やタイル床でも安心です。

O様にもお渡しの際に「まるで新品みたい」「履き心地がしっとりしてる」と喜んでいただけました。

■職人としての考察

ブッテロのような革巻きヒールデザインは、外観を損なわずに修理する難易度が高い部類に入ります。
特に婦人靴の場合、ヒールの厚みや角度が微妙に変わるだけで歩行感が大きく変化するため、ミリ単位の調整が求められます。

また、イタリア靴の多くに使われる塩ビ素材は、軽量でコスト面に優れるものの、湿度の高い日本ではどうしても劣化が早くなりがちです。
そのため、今回のように合成ゴム素材へ交換することで、寿命を大幅に延ばすことができます。

靴修理というと「壊れたものを直す」という印象が強いですが、実際は「より快適に、より長く履けるように改善する」という要素が大きいのです。
今回の修理も、まさにその代表例と言えるでしょう。

■最後に

お気に入りの靴は、見た目のデザインだけでなく、その靴を履いたときの“気分”までも思い出と共に残ります。
BUTTEROのブーツは長く履くほどに革が馴染み、色艶が深まり、唯一無二の表情を見せてくれます。

その靴をこれからも長く楽しんでいただけるよう、いずみ靴店では素材の特性を踏まえた修理提案を心がけています。
今回の修理で、O様にもこの冬、安心しておしゃれを楽しんでいただけるはずです。


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