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日別アーカイブ: 2025年10月18日

静岡県 K様 Reebok インスタポンプフューリー ソール剥がれ修理

― オパンケ縫いで蘇る、名作スニーカーのグリップと安定感 ―

今回ご紹介するのは、静岡県のK様より修理のご依頼をいただいた Reebok(リーボック) インスタポンプフューリー のソール剥がれ修理です。

1990年代のスニーカーブームを象徴するモデルとして、今もなお熱狂的なファンの多いインスタポンプフューリー。Reebokの象徴ともいえるポンプシステムを搭載した独特のフォルムと履き心地は、スニーカー史に残る名作といえるでしょう。
ただし、このモデルには“ある共通の弱点”があります。それが今回のような ソール剥がれ のトラブルです。


■ 修理前の状態

お預かりしたインスタポンプフューリーは、ソールが大きく剥がれ、つま先から側面にかけてパカッと口を開いたような状態でした。
見た目こそ派手な損傷ではないように見えても、実際に足を入れて曲げると、接着面全体が浮いていることが分かります。

この症状の原因は、加水分解やボンドの劣化です。
リーボックの多くのモデルは、軽量化のためにEVAやウレタン系のミッドソールを採用しています。これらの素材は空気中の水分と反応して時間の経過とともに分解が進み、接着力が弱くなります。
K様のお話によると、このスニーカーは購入からかなり年数が経っているとのこと。見た目はまだ綺麗でも、内部の接着剤が寿命を迎えていたようです。


■ 修理方針の検討

今回のようなソール剥がれ修理の場合、「ただボンドで再接着するだけ」では、再び剥がれてしまうことが多いです。
特にインスタポンプフューリーはソール構造が複雑で、柔らかい部分と硬い樹脂パーツが混在しているため、接着剤の食いつきが均一になりにくいという特徴があります。

そこで今回は、接着に加えてオパンケ縫いによる縫い付け補強を行うことにしました。
オパンケ縫いとは、靴のソールを側面から縫い付ける伝統的な縫製方法。
ヨーロッパのハンドメイドシューズや登山靴などにも見られる構造で、機械的に強い力で固定するため、接着剤が劣化しても靴底が剥がれにくくなるという大きなメリットがあります。


■ 分解と下処理

まずは剥がれたソールを一度すべて分解します。
表面的にボンドを塗り直すだけでは十分な強度が得られません。古い接着剤をしっかり除去し、下地を整えることが重要です。

ソール側とアッパー側の接着面を確認すると、古いボンドが黄変して粉のように崩れていました。これは完全に加水分解が進行している状態です。
ヘラとサンドペーパーで丁寧に除去し、表面を荒らして新しい接着剤がしっかりと食いつくようにします。


■ ボンド接着

下地を整えたら、専用の靴用ウレタン系ボンドを使用して再接着します。
このボンドは熱活性型で、乾燥後に熱を加えることで分子が再結合し、強固な接着力を発揮します。
一度目の塗布では下地がボンドを吸ってしまうため、下塗り・本塗りの二段階で施工します。

全体がしっかりと密着したら、圧着機で均一に圧力をかけて固定します。ここまでで基本的な接着工程は完了です。
ただし、これだけではまだ「剥がれにくくなった」程度。ここからが今回の修理の本番です。


■ オパンケ縫いによる補強

接着後、ソールとアッパーを一体化させるために、オパンケ縫いミシンを使用して周囲をぐるりと縫い付けます。
オパンケ縫いは、靴の側面から針を斜めに通し、ソールの縁をすくい上げながら縫っていく独特の構造です。
通常の平ミシンでは到底縫えない立体的な縫製で、専用の「オパンケミシン(サイドステッチミシン)」が必要となります。

縫い始めはつま先の内側から。
ソールが柔らかい部分はスムーズに進みますが、途中で現れる樹脂パーツの部分は非常に硬く、針が通りません。
この樹脂部分はポンプシステムの一部を構成しているため、無理に貫通させると空気チューブを損傷する恐れがあります。そこはあえて縫わず、隣接部分でしっかりと縫い代を確保し、構造全体のバランスで強度を確保しました。

一針一針、手でアッパーのラインを確認しながら慎重に縫い進め、最終的にはつま先からかかとまでぐるりと一周。
ステッチラインが美しく均一に入ったことで、見た目にも引き締まり、カスタムモデルのような存在感を放つ仕上がりになりました。


■ オパンケ縫いのメリット

今回のような修理では、単に接着力を補うだけでなく、構造的な強度を上げることが目的です。
オパンケ縫いによる補強には、以下のようなメリットがあります。

  1. 再剥離しにくい構造的補強
    接着剤が経年劣化しても、縫製によって物理的に固定されているため剥がれが再発しにくい。

  2. つま先・側面の強度アップ
    スニーカーは歩行時に最も力がかかるのがつま先と外側面。そこをしっかり縫うことで、屈曲時のねじれにも耐える構造になります。

  3. デザイン的アクセント
    ステッチラインが外観のアクセントにもなり、まるで限定仕様のような印象に。修理でありながら、むしろ“アップグレード”と感じていただける仕上がりです。


■ 修理完了後の状態

修理後のインスタポンプフューリーは、見事に元のフォルムを取り戻しました。
側面の縫製が加わったことで全体の一体感が増し、手で曲げてもソールがしっかりと追従します。

実際に履いてみると、かかとが浮かず、接地感が安定しています。
K様からも「まるで新品のようなホールド感になった」と喜びのお言葉をいただきました。
また、「これでまたガシガシ履けますね」との一言も。まさに職人冥利に尽きる瞬間です。


■ 今後の注意点とメンテナンス

スニーカーのソール剥がれは、使用頻度よりも保管環境に大きく左右されます。
特にEVAやウレタン素材のミッドソールは湿気に弱く、暗所や押し入れの奥などで長期間保管すると加水分解が進行します。
使用後は風通しの良い場所で乾燥させ、時々日陰干しをして空気を入れ替えることをおすすめします。

また、今回縫い付けたステッチ部分は非常に強固ですが、砂や汚れが溜まると糸が摩耗しやすくなります。
ブラシでこまめに掃除をしていただくと、より長く良い状態を保てます。


■ 修理概要

  • ブランド:Reebok(リーボック)

  • モデル:インスタポンプフューリー

  • 修理内容:ソール剥がれ修理

  • 施工方法:ボンド再接着+オパンケ縫い補強

  • 縫製範囲:つま先〜側面〜かかと一周

  • 使用機材:オパンケ縫いミシン


■ 職人の一言

インスタポンプフューリーは構造的に特殊で、修理においても注意が必要なモデルです。
加圧空気を利用するポンプチャンバーが内蔵されているため、ソールを外すときや縫うときにどこを触って良いか、職人の経験が問われます。
いずみ靴店では、これまで多くのポンプフューリーの修理を手掛けてきましたので、構造を理解したうえで最適な施工を行っています。

「ボンドで直してもまた剥がれる」とあきらめていた方も、ぜひ一度ご相談ください。
見た目だけでなく、履き心地・耐久性ともに蘇らせることが可能です。


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千葉県 A様 BHMスニーカー かかと滑り部分破れ修理

〜ヒールカウンター交換と内張り補修で快適な履き心地を再生〜

今回ご紹介するのは、千葉県にお住まいのA様よりご依頼いただいた「BHM(ビーエイチエム)」のスニーカー修理です。


スニーカーブランドとしてはまだ比較的新しい印象のBHMですが、シルエットや素材使いにこだわった上質なラインも多く、履き心地を重視される方に人気のあるブランドです。
A様も大変気に入って日常的に履かれていたとのことで、長く愛用される中で、かかと内側の滑り部分が擦り切れて破れ、内部のヒールカウンターも変形してしまった状態でした。


■ 修理前の状態

お預かりしたスニーカーを拝見すると、かかと内側のライニング(滑り革部分)が大きく破れていました。
スニーカーの内側、特にかかとの部分は足の出し入れ時に最も負荷がかかる場所です。履くたびにアキレス腱のあたりが擦れ、少しずつ表面の人工皮革や布地が摩耗していきます。

このスニーカーの場合、素材が比較的柔らかく、通気性の良い合成皮革が使われていたため、破れが広がりやすかったようです。破れた部分から中のスポンジ素材が露出し、そのスポンジもつぶれてしまっており、形が崩れていました。

さらに内部を指で押してみると、かかと芯(ヒールカウンター)が曲がっているのが分かりました。通常、カウンターはかかと形状を保つための重要なパーツで、硬質の樹脂や繊維素材が使われています。これが変形してしまうと、靴全体のフィット感が悪くなり、履いた際に「片側だけ足がずれる」「かかとが浮く」といった不快感につながります。

A様も「履くたびにかかとが痛くて、靴下が破れてしまう」とお困りのご様子でした。


■ 修理方針のご提案

このようなケースでは、単に内張りを新しい革で貼り替えるだけでは根本的な改善になりません。
内部のカウンターが変形していると、いくら表面をきれいにしても履き心地は戻らないため、ヒールカウンターの交換修理を行う必要があります。

今回は以下の工程で修理を行う方針としました。

  1. かかと部分の分解

  2. 変形したヒールカウンターの取り外し

  3. 新しいカウンター芯の作成・交換

  4. アキレス腱周りのスポンジ補充

  5. 新しい内張り革の成形・縫製

  6. 八方ミシンによる縫い付け補強

この一連の工程により、見た目の修復だけでなく、履き心地・安定感の両方を再生します。


■ 分解作業

まずはかかと周りの内張りを丁寧に剥がしていきます。
破れたライニングは接着剤で強く固定されているため、焦って剥がすと外側のアッパーまで傷つけてしまう危険があります。温風をあてて接着剤をやわらかくし、ゆっくりと剥がしていくのがポイントです。

内部から取り出したカウンター芯は、やはり大きく歪んでいました。素材は薄手の樹脂系で、熱や圧力に弱いタイプ。長年の使用で形が崩れてしまったようです。


■ 新しいヒールカウンターの製作

新しいカウンターは、靴の形状に合わせて一つずつ手作業で作ります。
BHMのスニーカーは比較的スリムなラスト(木型)を採用しており、標準的なカウンターではフィットしません。そのため、既存の靴型に合わせて新しい芯を温成形し、カーブと高さを細かく調整しました。

素材には、耐久性と弾力性を兼ね備えた特殊セルロース素材を採用。樹脂ほど硬くなく、革のようにしなやかに形状を保持するため、足当たりが優しくなります。


■ アキレス腱部のスポンジ補充

カウンターを取り付けた後、アキレス腱が当たる上部のスポンジを新しく補充します。
スポンジが潰れてしまうと履き口のクッション性が失われ、靴擦れの原因になります。そこで、厚みや密度を調整しながら、新しいスポンジを貼り込みました。

A様のスニーカーは履き口が低く、アキレス腱が直接当たりやすいデザインでしたので、少しふっくらとさせてクッション性を高めることで、より優しい履き心地になるよう仕上げています。


■ 内張り革の製作と縫製

次に、破れていた内張り部分を新しく作り直します。
純正では布生地でしたのでスニーカーライニングという裏にスポンジの貼ってる布を用います。
八方ミシンで縫製を行いました。
八方ミシンとは、特殊な構造の工業用ミシンで、靴のように立体的な形状のものでも、どの方向からでも縫えるのが特徴です。
特に今回のようなかかと内部の補修では、通常の平ミシンでは針が届かない箇所も多く、八方ミシンを使うことで美しく確実な縫製が可能になります。

縫い目は強度を保ちながらも目立たないよう、オリジナルラインに沿って自然に仕上げました。


■ 修理完了後

仕上がったスニーカーは、かかとのシルエットがしっかりと立ち上がり、元のフォルムを取り戻しました。
触ってみると内側のふっくら感が戻り、履き口のクッションも柔らかく復活しています。見た目にも美しく、内部構造の安定感も回復しました。

A様にも「新品のときより足がしっかりホールドされる」と大変喜んでいただけました。
スニーカーは見た目がカジュアルでも、内部構造は意外と繊細です。特にBHMのようなデザインスニーカーでは、見た目のバランスを崩さず補修するために、高度な加工技術が求められます。


■ 今後のメンテナンスについて

今回のように、かかと内側が破れるのは履き方や脱ぎ履きのクセも関係しています。
靴ベラを使わずに足を押し込むと、ヒールカウンターに過度な負担がかかり、芯が曲がったり潰れたりします。
修理後は、ぜひ靴ベラの使用をおすすめします。

また、内張りに本革を使用していますので、湿気がこもったときは風通しの良い場所でしっかりと乾かすと長持ちします。定期的に防臭スプレーなどでケアしていただくと、衛生的にも安心です。


■ 修理概要まとめ

  • ブランド:BHM

  • 修理内容:かかと内側滑り部分破れ修理

  • 施工内容:ヒールカウンター交換、アキレス腱部スポンジ補充、内張り革貼替(本革)、八方ミシン縫製

  • 仕上げ:マット仕上げ、左右バランス調整


今回のような「かかと滑り部分の破れ修理」は、見た目以上に構造的な修理が必要なことが多いです。
いずみ靴店では、靴の中の状態をしっかりと確認し、原因を突き止めた上で最適な方法をご提案しています。
「まだ履けるけれど、かかとが痛い」「内側が破れて見た目が悪い」などの症状がありましたら、ぜひ一度ご相談ください。


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